場面32:公園(回想、その2)(音楽劇「君の名は希望」37)
最初から読む
前の記事
二人、あずまやに入り、斜向かいに座る
二人があずまやに入るとすぐに、雨音が強まる
成瀬「外で練習してるとこれが心配でね」
先生、中田に向かって笑顔を見せる
成瀬「それで思い出したんだけど」
中田「え、何?」
成瀬「最近刑務所にいる人に本を送るボランティアをしている人がいるって聞いたの。半グレから暴力団に入って10年以上服役していた人で」
中田「へぇ、そんな人いるんだ」
成瀬「その人は支援者の人たちと手紙をやりとりして、それで犯罪をやめるって決意出来たんだって。そして刑務所では本をたくさん読んでね」
中田「うーん」
中田、初めて聞く話だが悪い話ではない、いやもっと聞きたい、と思う
成瀬「その人が言ってた。孤立したままだと社会の一員だと思えない。孤立が犯罪へと向かわせるって」
中田、心からうなずける言葉だと思う。否定の余地はない。だが自分がどうか、と言われたら苦しい
中田、ふさぎ込みながら訴える
中田「でもさ、俺はもう無理なんだよ。親から必要ないって捨てられてさ」
先生、もがき苦しむ姿を見せる中田を慈しみを込めた目で見る
先生、中田を直視して
成瀬「親とは違う人がいっぱいいたらどうなのかな?」
中田、返す言葉がない
成瀬「そんな仲間を見つけてみなよ。一緒に街に出て、お茶して話して、それでいいんだよ」
中田、そんな仲間が出来るとは思えない。だがそれでいいのなら、とも思う
中田「そうか」
先生、ここで何かを思い付いたように
成瀬「そう言えばクラリネットの先生が言ってた。辛い時は手を左の胸に当ててみなさいって」
先生、そう言って右手の手のひらを左の胸に当てる
中田「ふーん」
中田、同じく右手を左の胸に当てる
成瀬「体の中で刻んでいるリズムがある。それをいつも感じなさいって」
成瀬、言い終えてからあずまやの外の空を見上げる
成瀬「あれ、雨が止んで来たね」
厚い雲のすき間から光が射す。少しするとそのすき間から青空が覗いている
中田「さっきまでずっと曇りだったのにな」
二人揃ってあずまやを出て、舞台前方に
成瀬「私ね、青空を見るといつも思うんだ。これって今まで見てきた中で何度目の青空なんだろうって。つらい時も苦しい時も私たちの上には青空が広がっていて」
中田「でもそれに気付くかは自分なんだな」
成瀬「これからの中田君の進む先には青空が広がっている。そう信じてる」
中田、先生の言葉をすべて受け入れようと思う
中田「ああ、分かったよ」
成瀬「ならこの次の青空はきっと分かるよ。だから今この空を見上げてみて」
成瀬、前を向く。それにつられて中田も
歌が終わり、先生と中田舞台袖に引き、暗転
(前半終了)
最後までお読み頂き、ありがとうございました。また、貴重なお時間を頂き、ありがとうございます。
今後もがんばっていきますのでスキ・コメント・フォローなど頂けますと嬉しいです。※フォローは100%返します。
今後とも有益で楽しく読める記事をどんどん更新します。応援よろしくお願いします
続きを読む
これまでの記事を読む
よろしければサポートお願いします!いただいたサポートは次回作の取材など新たな創作のために使わせていただきます!