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Shi.Chi.
2022年6月26日 20:54
ただそこに咲いていた地の月 真暗闇の丘の上地の底に 夜の帷は追いやられ夜空のありようを 知らずに眠る忌の彼女は 思いを馳せて歌うはアリア 丘に咲く月この空に 浮かぶ月なく芳醇で彼女の涙の 落つるを感じた夜光は そこに 静かに眠る
2021年1月23日 21:47
最果てなど ないみなが言った 世界は丸くどこまでもが続いていると不安を覚える 永遠の世界逃げ場のない閉塞感に 目を瞑る荒野の先に 火を覗く 深い暗さをもつ夜だ地平の茫漠さの中にあり さながらおかしいことに 希望の灯りとなる側に眠るは 黒衣の聖女がひとり 規則的な寝息が 夜空に浮かぶ 星の光と呼応した星はつぶやく ここが果てだと見える繋がりは 思い次第だと女を 起こしてはならな
2020年12月18日 22:27
『ある夜のできごと』「夜のはじまり」夏の夜に、それは美しい川が夜空を流れることをみなさんはご存知でしょうか。煌めく光の粒子が曲がりくねり、時には急流となって闇の中を上流から下流へ流れるあの川が、空を流れることがあるのです。天の川、と人は呼びます。ご存知ですね。それでは、夏だけに見ることができるのかといえば、みなさんのほとんどがそうだと答えるかもしれません。ですが、冬の夜空に煌々と流れる
2020年9月19日 23:38
彩に溢れた花咲き誇る丘の先色づく風に 香りが運ばれ漂います風駆ける道 色彩と香りに誘われ丘を越えれば 一陣渦巻く 瑠璃色の風そよと微かに揺らぐ瑠璃色は淡い輪郭が踊るよう香りに抱かれ 香りを抱き鉱石の面にあるような 澄んだ瞳が私を覗く黒曜石の輝きを 美しい髪を風になびかせば色彩の靄髪を梳く指の隙間を流れ去り芳香は空色鉱石の彼方へと消えていく #詩
2020年6月15日 23:20
すりガラス 差し込む光は 灰色に窓枠に置かれた ティーセット淀んだ街に 少女の視線が泳ぐとき期待の薄れたまなじりに 一筋の影窓を伝うは通り雨 少女の秘めた悲しみに今日もまた 音沙汰のない街あまりに茫漠とした 檻のように閉ざされた街
2020年6月14日 21:04
開け放たれた アイボリーの窓向こうから庭の花々の香り 一陣にそよと吹いてきたやがてパステルグリーンの曲線となりダイニングテーブルの向かい側少女の髪房を 微かに揺らす燦々とした日の光 光に埋まる少女の顔淡くかき消え そよ風とともに巡る室内へ 優しく微笑む全てを受け入れ 歪むことのない凛と美しい 表情であったはずなのに記憶の水底は 淀みに深くもはやその欠片もなく初夏の頃
2020年6月14日 00:18
山より高く天に向かって聳え立つイオニア式のエンタシスぐるりを囲むは 象牙の回廊螺旋の階段はしかしどこまで続くかかの女は ひたすらに無数の段を踏み締める円環状の螺旋回廊は その実インフィニティ螺旋の交点で出会うは 誰であったか深みの紅を 足跡に宿し黒髪と白髪の女は 同じ階層で2度の逢瀬互いにもはや表情はなく互いにもはや目的はなく互いに互いを わたし と認め天の使いよ
2019年7月19日 23:20
分光板で剥離した 夜汽車の終着駅 その一稜少年たちの虚ろな瞳 像を結ばず硝子に刻まれ霞む輪郭に似た 叶わない再開の約束彼らの瞳を透過した 分光はもはや交わらず数路に分かつそのレール 散乱し夜空に伸びる硝子に閉じ込めた少年の永遠彼の顔が 此岸を向く動くことのない 悟りの表情彼らだけが 知っていた永久に訪れない 永遠の序章である #詩 #作品 #文学
2019年7月16日 00:07
青味の銀の湖で 城は深きに沈む黒炎の靄が霞む 湖水のあたり音もなく ただ漣が立つばかり城の欄干を 白衣の公女がつと跳んだ落下の遅きこと 夜半の月が公転のよう水面に映える その華奢な背に光の反射が翼を落とす公女の眼は 星々を取り込み暗い夜空に白い娘は溶け込んだウンディーネの母が 抱擁し娘は水面に 身を横たえた暗い淵 水面を流れる夜空と湖底へ崩れる城の瓦礫水平に朝
2019年7月12日 22:15
雨水の溜まり場に映る彼岸の街水煙に 煌々とぼんやり輝く街灯に白い淑女が踊る、廻る雨水の地を打つ調子に合わせて長い髪を 夜の緞帳の黒髪を振り乱しては 可憐に踊る頰を這う 一縷の水跡雨と知ってかただ辿れるは 悲しい残り香水面に映える 彼の街のこと誰も触れないひとりの街