Shi.Chi.

主に詩作/孤独しかし誇り高くをテーマに

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  • 詩作品

    自分が綺麗だと思い幻想や夢想のままに綴るものたち.

最近の記事

夜光、そこにあれ

ただそこに咲いていた 地の月 真暗闇の丘の上 地の底に 夜の帷は追いやられ 夜空のありようを 知らずに眠る 忌の彼女は 思いを馳せて 歌うはアリア 丘に咲く月 この空に 浮かぶ月なく芳醇で 彼女の涙の 落つるを感じた 夜光は そこに 静かに眠る

    • 最果てで夢見を

      最果てなど ない みなが言った 世界は丸くどこまでもが続いていると 不安を覚える 永遠の世界 逃げ場のない閉塞感に 目を瞑る 荒野の先に 火を覗く 深い暗さをもつ夜だ 地平の茫漠さの中にあり さながらおかしいことに 希望の灯りとなる 側に眠るは 黒衣の聖女がひとり  規則的な寝息が 夜空に浮かぶ 星の光と呼応した 星はつぶやく ここが果てだと 見える繋がりは 思い次第だと 女を 起こしてはならない 果てある世界は 夢見た女の創るもの 目覚めた者には さかしまな 世界の守人が

      • ビードロ玉に仕舞うもの

        「私はね、リョク、その昔世界中を旅して回って見つけてきた綺麗なものだけを、これらビードロ玉に隠したのさ」 そう言って叔父は庭にある貯水池へビードロ玉を投げ入れた. 手から放られたビードロ玉はその瞬間、陽の光を反射してプリズムの四阿を一瞬の内に建てたけれど、諸共池の底へ沈んでいった. 夏日になると池は確かに、昼の刻を以って最高度の輝きを放っていたし、彩豊かな水面はまるで金平糖を満たした硝子の小皿のようだった. 幼心に私は聞いた. 「叔父さんは怪盗なの?」 すると叔父さんは逆光の

        • ある夜のできごと-夜のはじまり-

          『ある夜のできごと』 「夜のはじまり」 夏の夜に、それは美しい川が夜空を流れることをみなさんはご存知でしょうか。煌めく光の粒子が曲がりくねり、時には急流となって闇の中を上流から下流へ流れるあの川が、空を流れることがあるのです。 天の川、と人は呼びます。 ご存知ですね。それでは、夏だけに見ることができるのかといえば、みなさんのほとんどがそうだと答えるかもしれません。 ですが、冬の夜空に煌々と流れるそれも同じく、天の川であると、どれほどの方が知っておりますでしょう。冬の天の川は

        夜光、そこにあれ

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        • 詩作品
          10本

        記事

          香木

          彩に溢れた花咲き誇る丘の先 色づく風に 香りが運ばれ漂います 風駆ける道 色彩と香りに誘われ 丘を越えれば 一陣渦巻く 瑠璃色の風 そよと微かに揺らぐ瑠璃色は 淡い輪郭が踊るよう 香りに抱かれ 香りを抱き 鉱石の面にあるような 澄んだ瞳が私を覗く 黒曜石の輝きを 美しい髪を 風になびかせば色彩の靄 髪を梳く指の隙間を流れ去り 芳香は空色鉱石の彼方へと消えていく #詩

          音沙汰のない街

          すりガラス 差し込む光は 灰色に 窓枠に置かれた ティーセット 淀んだ街に 少女の視線が泳ぐとき 期待の薄れたまなじりに 一筋の影 窓を伝うは通り雨 少女の秘めた悲しみに 今日もまた 音沙汰のない街 あまりに茫漠とした 檻のように 閉ざされた街

          音沙汰のない街

          淡い顔の少女

          開け放たれた アイボリーの窓向こうから 庭の花々の香り 一陣にそよと吹いてきた やがてパステルグリーンの曲線となり ダイニングテーブルの向かい側 少女の髪房を 微かに揺らす 燦々とした日の光 光に埋まる少女の顔 淡くかき消え そよ風とともに 巡る室内へ 優しく微笑む 全てを受け入れ 歪むことのない 凛と美しい 表情であったはずなのに 記憶の水底は 淀みに深く もはやその欠片もなく 初夏の頃 一陣と吹いた 香りの中に 少女もまた 消えていく

          淡い顔の少女

          アノマリー

          山より高く天に向かって聳え立つ イオニア式のエンタシス ぐるりを囲むは 象牙の回廊 螺旋の階段はしかしどこまで続くか かの女は ひたすらに 無数の段を踏み締める 円環状の螺旋回廊は その実インフィニティ 螺旋の交点で出会うは 誰であったか 深みの紅を 足跡に宿し 黒髪と白髪の女は 同じ階層で2度の逢瀬 互いにもはや表情はなく 互いにもはや目的はなく 互いに互いを わたし と認め 天の使いよ 吹き鳴らせ 女らを救い導く 笛の音を エンタシスよ 耐えてくれるな 聞かせてく

          アノマリー

          静けさだけが持つ言葉➖ハマスホイとデンマーク絵画➖

          休日ということもあり人気の多い上野. 電車を降り、寒空の下上野公園を横切ると、あちらとこちらから賑わう声がしています.家族連れ、恋人、友達と.それでも冬の閑散とした空気の中だからか、どこか静かです.寒さに身を硬らせているせいかもしれません. 人混みが苦手な私は少し伏し目がちになり、足早に東京都美術館へと脇目も振らずに向かいます.はやる気持ちもありますが、必死に抑えます.これから拝見する絵画には焦りや高揚感は向きませんので. でも、結局のところは自然と湧き上がる興奮を鎮火する

          静けさだけが持つ言葉➖ハマスホイとデンマーク絵画➖

          スペクトラム

          分光板で剥離した 夜汽車の終着駅 その一稜 少年たちの虚ろな瞳 像を結ばず硝子に刻まれ 霞む輪郭に似た 叶わない再開の約束 彼らの瞳を透過した 分光はもはや交わらず 数路に分かつそのレール 散乱し夜空に伸びる 硝子に閉じ込めた少年の永遠 彼の顔が 此岸を向く 動くことのない 悟りの表情 彼らだけが 知っていた 永久に訪れない 永遠の序章である #詩 #作品 #文学

          スペクトラム

          夜城より落下

          青味の銀の湖で 城は深きに沈む 黒炎の靄が霞む 湖水のあたり 音もなく ただ漣が立つばかり 城の欄干を 白衣の公女がつと跳んだ 落下の遅きこと 夜半の月が公転のよう 水面に映える その華奢な背に 光の反射が翼を落とす 公女の眼は 星々を取り込み 暗い夜空に白い娘は溶け込んだ ウンディーネの母が 抱擁し 娘は水面に 身を横たえた 暗い淵 水面を流れる夜空と 湖底へ崩れる城の瓦礫 水平に朝焼けがさせば 水精の娘も 水底へ還る とある一夜の出来事と 人は言う #詩

          夜城より落下

          彼岸の街と白の淑女

          雨水の溜まり場に映る彼岸の街 水煙に 煌々とぼんやり輝く街灯に 白い淑女が踊る、廻る 雨水の地を打つ調子に合わせて 長い髪を 夜の緞帳の黒髪を 振り乱しては 可憐に踊る 頰を這う 一縷の水跡 雨と知ってか ただ辿れるは 悲しい残り香 水面に映える 彼の街のこと 誰も触れない ひとりの街

          彼岸の街と白の淑女