見出し画像

ビードロ玉に仕舞うもの

「私はね、リョク、その昔世界中を旅して回って見つけてきた綺麗なものだけを、これらビードロ玉に隠したのさ」
そう言って叔父は庭にある貯水池へビードロ玉を投げ入れた.
手から放られたビードロ玉はその瞬間、陽の光を反射してプリズムの四阿を一瞬の内に建てたけれど、諸共池の底へ沈んでいった.
夏日になると池は確かに、昼の刻を以って最高度の輝きを放っていたし、彩豊かな水面はまるで金平糖を満たした硝子の小皿のようだった.
幼心に私は聞いた.
「叔父さんは怪盗なの?」
すると叔父さんは逆光の中でも眩い白い歯を見せながら大胆に笑った.
「そうだね、似たようなものさ.すると、リョクが僕を捕まえる探偵になるのかな?」
私は答えられなかった.叔父さんの手下になるなんて答えたら、両親に怒鳴られてしまう悪いことに思えたから.
夏の日の思い出.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?