社員と会社のVisionの重なりを言語化・共有する―SHEのカルチャーを生み出すコミュニケーション「Visionプレゼン」とは
SHEは「一人一人が自分にしかない価値を発揮し、熱狂して生きる世の中を創る」というVisionを掲げています。ともに働く社員に対し「Visionの担い手として、一人一人がVision体現できる存在であってほしい」と考えており、この想いの浸透がSHEのカルチャーを築いてきました。
社員にとって“Vision体現”を考える大事な機会になっているのが、一年に一度全社で取り組むイベント「Visionプレゼン」です。
今回は「Visionプレゼン」の企画や進行などを全体を取りまとめる「全体統括」の経験者である、豊原由奈(とよはら ゆうな)さん、吉田藍里(よしだ あいり)さんに、実施に向けての想いや実施後に得たこと、どのようにSHEのカルチャーになっているのかなど話を聞きました。
自分のVisionを言語化し、会社のVisionとの重なりを考える
―Visionプレゼンとは何ですか?
豊原(敬称略):
Visionプレゼンとは、SHEの組織施策のひとつです。社員全員が「自身のVision」、そして自身のVisionと「SHEのVision」がどう重なるかを考え、意味付けし、プレゼンテーションする機会です。
SHEでは、心理的柔軟性(*1)・最高価値(*2)・呪い(*3)というカルチャーをベースとした様々な施策を実行しながら、Vision(*4)実現を目指しています。SHE受講生のシーメイトさんやSHEと関わるスタッフ、そして社会全体に届けたい変革を、まずは社員から体現していくことで、SHEの価値を提供したいと思っているからです。
Visionを体現していくための機会の一つに、Visionプレゼンを設定しています。Visionプレゼンでは、まずはユニット内(部署単位ごと)で予選を行い、ユニットの代表者を選出。その後、代表者が全社員の前でプレゼンを行う本選を開催します。
―1回目と2回目の違いはありましたか?
吉田(敬称略):
大きな違いは、プレゼンの対象者です。1回目は役員以外全員が対象でしたが、2回目の今回は1回目開催時に入社していなかったメンバーが対象でした。
前回から約1年経って、社員が2倍に増えたんです。だから全員がプレゼンをするのはむずかしく、対象者を絞りました。ただプレゼンをしないメンバーも、自分のVisionをアップデートする機会を設けたり、準備や当日運営に関わってもらったりと、社内全体を巻き込みながら実施しました。
Vision実現へ向かうため、全社員を巻き込んで士気を上げる
―Visionプレゼンを始めたきっかけを教えてください。
豊原:
「SHEのVisionの実現に向けて、もう一歩踏み込んでメンバーの士気を上げたい」という役員チームの想いから始まりました。
SHEでは人事施策として様々なワークショップを行いながら、一人一人が自分自身にしかない価値を捉えたり、阻害する固定概念を理解するための機会をつくっています。ただ、もう一段階ギアを上げるためには、自らのVisionを言語化するとともに、それをSHEのVisionと紐付けることで、社内全体のVision実現へ向かう士気を上げていこうと考えたんです。
結果的に「Visionプレゼン」という方法でさらにもう一歩、Vision体現に近づく組織へ踏み出すことを決めました。
―由奈さんは全体統括を担当すると決まったとき、どのような気持ちでしたか?
豊原:
もう……、不安しかなかったですよね。新しいチャレンジだからこそ不安が大きかった。正直、本選を終えるまで不安は消えませんでした。
でも「自分のVisionと会社のVisionを本当に紐付けている人って、SHEに限らずこの社会でどのくらいいるんだろう」と考えたとき、実現できたらすごく大きなインパクトが生まれると思いました。不安がほとんどを占めていたけど、わずかな希望に向かって進もうと腹を括りましたね。
―本選開催まで様々な準備をされたと思います。特に印象に残っていることは何ですか?
豊原:
そもそもみんなに「プレゼンをしてください」と伝えることが、ハードル高かったです。プレゼンって、あまりやりたくないじゃないですか(笑)
吉田:
たしかに、参加者側として初めてVisionプレゼンの説明を聞いたときは、「プレゼンかぁ。できるかなぁ」とネガティブな印象だったかも(笑)
豊原:
そうだよね。通常業務で忙しいなか、大変なお願いをしているなという自覚はありました。
吉田:
プレゼンへの不安は大きかったけど、由奈ちゃんからの丁寧な説明を受けて「自分のVisionを言語化して、SHEのVisionとの重なりを自覚できたら、すごく意義があるな」と思えたんです。
私はSHEのVisionに共感して入社していましたが、「SHEのVisionをどう実現していくか」の具体的なイメージまではできていなくて。Visionプレゼンをきっかけに、SHEのVisionをより自分事として捉えられそうだなと思いました。
重視したのは、Visionを紐付けるプロセス
―ゼロから新たな場を作ることは、かなり手探りだったと思います。そのようななかで生まれた、Visionプレゼンのこだわりを教えてください。
豊原:
ひとつは「ナナメンター」ですね。一人でVisionプレゼンを完成し切るのではなく、客観的な視点でFBをもらったり、相談できるように壁打ちする機会を作ったのですが、直属の上司ではなく違うユニットのマネージャーやメンバーとのペアにしました。いわゆる「上下」の関係ではないため、「ななめ」の関係の「メンター」で「ナナメンター」という言葉が生まれました。
直属の上司だと、普段自分を評価する人だから、格好つけちゃうとか、期待に応えようとしちゃうかもしれないじゃないですか。自分をさらけ出したくても、ブレーキがかかるかもしれない。「まっさらな気持ちで自分やメンターとぶつかってきて!」という思いで、ナナメンターを実施しています。
私自身もメンターになったり、自由に相談OKな時間を設けたりするなかで、各メンバーの今まで知らなかった個性が見えてきたのは楽しかったです。プレゼンを作るまでのプロセスこそ、Visionプレゼンの醍醐味だなと感じました。
吉田:
参加者側としては、メンターとなってくれたマネージャーが本気で伴走してくれることが分かって、気合が入りました。限られた時間をいかに濃くするか、考えるようになったんです。
私の場合は、ナナメンターと話していて、過去の経験をプラスに捉えすぎている部分があるなと気が付きました。正直、出会いたくなかった嫌な自分と出会ってつらかったときも……。だけど、自分と本気で向き合うほど見えてくるものがあり、一人では辿り着けなかった自分の想いに気が付くことができました。
豊原:
きれいなプレゼンを作ってほしいわけではなくて。Visionプレゼンの機会を「自分のVisionとSHEのVisionの紐付けを考える」きっかけにしてほしい。「なんで自分は、数ある企業の中で、敢えてSHEで働いているんだっけ?」を考えてみる、そのプロセスを大事にしてほしい。それをひたすら伝え続けていました。
なので、プレゼン当日までに完全に紐付いていなくてもいいんです。「ここまでしか考えられませんでした」というプレゼンでも、Visionプレゼンでは全く問題ありません。むしろ自分や人に嘘をついていない時点で、大正解だと思っています。
吉田:
私は最終的に、「ひとりひとりが”ありのまま”の自分に出会って 自分にとって心地良いライトを浴びて それぞれの人生というステージで 可能性が花開く姿を見ていたい」という自分のVisionを言語化できました。SHEのVisionとの重なりを自覚する機会にもなり、すごく腹落ちしたのを覚えています。
―Visionプレゼン最終日となる「本選」は、たくさんの想いが詰まっていたのではないでしょうか。
豊原:
涙を流しながら、プレゼンを聞いてくれるメンバーがいました。必死に向き合った自分の本音を伝えて、一緒に働く仲間の心を動かす。部下のプレゼンを聞いて、上司が涙する。そうやってナナメに、相互に影響を受け合えるSHEの環境って心からすごいなと思いました。
あとは「プレゼン」としてアウトプットするからこそ、思考が深くなることに気が付きました。プレゼンって、どのように話すか一言一句悩むじゃないですか。「何でこれを大事にしているんだっけ」と何度も自分に立ち返りながら、一言一言にこだわっていく。そのプロセスがあるからこそ、見える個性があると思ったんです。
資料ひとつとっても、SHEのトンマナで作るメンバーがいればオリジナルで作るメンバーもいて個性が光っていました。
―Visionプレゼンを経て、得たことを教えてください。
豊原:
SHE全体としては、一人一人が会社のVisionへの解像度を上げられたのではと思います。その姿を見て、役員の気持ちが上がっていたのも嬉しかったです。「もっと自分たちもがんばろう」「SHEはまだまだいけるな」などの言葉が出ているのを聞いて、「よっしゃ!」と思いました(笑)。「役員の心を動かす」のが、私の裏テーマだったので。
社員数が2倍になっても「全員参加」
―2023年のVisionプレゼンではよっしーさんが全体統括をされたと聞きました。
吉田:
大きなプレッシャーでした(笑)。でも前年のVisionプレゼン後、私自身一つ一つの仕事の捉え方が変わった実感があったんです。プレゼン経験者だからこそ伝えられることがあると思い、挑戦しようと思いました。よくよく考えたら、「これは昨年のVisionプレゼンで話した自分のVisionを実現する機会だ!」と気づいたのも大きかったですね。
―2023年のVisionプレゼンでは、どのようなことが印象に残っていますか?
吉田:
大変だったのは、プレゼンするメンバーの現在地がバラバラだったことです。前年のVisionプレゼン後に入社したメンバーが対象だったので、入社して1年くらい経つメンバーもいれば、1ヶ月くらいしか経っていないメンバーも。そのなかで、Visionプレゼンを開催する意義をどう伝えていこうか悩みました。
結局はメンバー自身がやる意義を感じることが大事だと思ったので、「なぜVisionプレゼンをやるのか」を丁寧に伝えようと意識しましたね。
あとは今年はプレゼン対象者でないメンバーがいたので、「傍観者にならないようにするにはどうすればいいのか」をかなり考えました。
豊原:
初回はゼロからイチを作るむずかしさがあったけど、2回目はメンバーを巻き込むむずかしさがあったよね。
吉田:
そうそう。でも、自分のVisionに気付き始めたメンバーの表情や行動に変化が現れてきたときは嬉しかったです。私が直接変化を感じるときもあったし、周りのメンバーから伝播して伝わるときもあった。それがやりがいでした。
また由奈ちゃんをはじめ、2023年は多くの人と一緒にVisionプレゼンを作れたと思っています。それが楽しかったですね。
例えば、私のように1回目にプレゼンターで参加したメンバーが率先して意見を出してくれたり、ナナメンターとして活躍してくれたりしました。当日の運営も、自分のVisionを書く用紙や発表者へのメッセージを書くカードを作成してもらったり、写真や動画を撮ってもらったりと、多くのメンバーを巻き込んで推進ができました。
大変なことは多かったけど、一人ではなかったから今年のVisionプレゼンを創り上げられたと思います。
―2ndステージ(代表者8名によるオフラインでのプレゼン)当日は、どのような気持ちでしたか?
吉田:
代表者8名のプレゼンを聞いていて、「SHEのVision体現=自分らしさに気づいて大事にすること」だと思い、原点に帰った気持ちでした。今のSHEはメンバーが増え続けている成長期だけど、大事にしたいことの本質は変わらないんだな、と。一人一人の個性が輝いていて、「これこそSHEらしさだ」と思いました。
会場では、自分のVision・最高価値・今後の目標を書くカードを用意して、全員に書いてもらいました。そのカードを持ちながら、全員分の写真と動画を撮ることで全員が参加できる「Visionプレゼン」になったと思います。
―今年のVisionプレゼンを経て、得たことを教えてください。
吉田:
SHE全体としては、Visionプレゼン後、ユニットの組織状態がよくなったり、相互理解が進んだりと、社内全体に好影響が出始めています。本音で真っ直ぐにプレゼンをし合ったあとだからか、「お互い何を考えているか分かる」「強みの再確認ができて仕事がしやすくなった」などの声を聞く機会が増えました。
また、こちらから必須としたわけではなかったのですが、結果的に今年は役員も全員実施したんですよね。メンバーからも「それぞれが戦略文脈ではない言葉で、”なぜいまSHEで働いているのか”を聞けたことが有意義だった」というフィードバックを多くもらいました。
Visionプレゼンを9月末に開催したため、10月から始まった2023年度下期への士気も高められて、社内に一体感が生まれているなとも感じています。
個人としては、Visionプレゼンをメインで担当させてもらったことで、前年語ったVisionがひとつ実現できたなと思いました。またVisionプレゼンを代表して伝える場面が多かったので、「私自身は本当に、自分のVisionの実現に向き合えているのだろうか、SHEのVisionとの重なりを意識できているだろうか」と何度も自分と向き合った期間でもありました。
みんなと同様、自分のVisionをアップデートでき、実は私が一番得るものが多かったように思います。
SHEのカルチャーとして育てていく
―今後のVisionプレゼンについて、想いを聞かせてください。
豊原:
Visionプレゼンは続けたいなと思っています。準備の工数は多くかかりますが、SHEのVisionを実現するためには必要なプロセスだと感じるので。
吉田:
先日役員と話していて、満場一致で「Visionプレゼンは続けよう!SHEの組織を創るうえで必要な場!」となりました。
とはいえ組織の人数が変わったり、フェーズが変わったりすると思うので、その年に合わせてやり方を柔軟に変えつつ、でも目的はブラさずにやっていきたい。Visionプレゼンを通して、一人一人のVisionとSHEのVisionとの重なりをアップデートする機会を作り続けていきたいと思います。
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