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バウバウ大臣待望の新宮殿『ばらばら宮殿はつかれるなあ』/夢のマイホーム⑦

藤子F先生の代表作の一つに、「ウメ星デンカ」という作品がある。

ウメ星の王族であるデンカや王さまたちが、故郷のウメ星が爆発してしまったので、命からがら逃げだして地球の中村家の居候になる、というお話である。

国民も宇宙中に散り散りとなってしまったため、彼らはウメ星の再建を心から望んでいる。たった七坪の土地をベースに国家再興を願ったこともある。マイホームどころか、マイカントリーを夢見る人たちなのである。


そんな「ウメ星デンカ」と初期設定が似通った作品がある。こちらも同じく故郷のアマンガワ星が彗星と激突して消滅してしまったため、生き残りの人たちが国家を再興しようという物語である。タイトルは「バウバウ大臣」という。

本作のユニークな点は、アマンガワ星の住人たちは星の爆発を予期して、「生まれ変わり装置」を発明し、これによって人々はあらゆる星の生物に「転生」していたという設定である。

地球・日本に住む平凡な男の子星野大二は、アマンガワ星の王子の生まれ変わりらしく、同じく他の星で転生した大臣のバウバウ(姿は犬)と、女官のミウミウ(姿は猫)が突如目の前に現れて、王子としての自覚を取り戻させようと奮闘する。

バウバウ大臣たちの望みはアマンガワ国家の再建であり、まずは宮殿を再興したいと考えている。まるで「ウメ星デンカ」と同じなのである。

本稿では、そんな新宮殿(=夢のマイホーム)を巡るお話を紹介したいと思うが、その前に「バウバウ大臣」をご存じない方々がほとんどだと思うので、以下の紹介記事を先に読んでもらうと良いだろう。


さらにもう一本、実は昨年「バウバウ大臣」を記事にしており、ここでもざっくりとした設定の説明をしている。ただし、読み返してみたが、作品の紹介部分の文章が下手くそで意味が取りずらい印象を受けた。

機会があれば、加筆修正したいところである・・。


「バウバウ大臣」『ばらばら宮殿はつかれるなあ』
「小学三年生」1976年11月号

本作の主人公、アマンガワ星の王子の生まれ変わりとされている星野大二君が、自分のあずかり知らぬところで、パーティーを主催していることになっている。

新しい宮殿ができたので、記念パーティーを開いくという招待状が、自分の名前で友人たちに配られているのであった。文面には王宮大ホールで開催となっているが、まるで心当たりがなく、このデタラメの招待状はバウバウ大臣のしわざではないかと、大二は怒る。

バウバウとミウミウに事情を聞くと、仮の建物だが宮殿は出来たのだという。「敷地もないくせに」と突っ込むと、まとめて土地を買うのは大変なので、あちこち空いている所を借りたのだという。

説明を聞いてもさっぱり意味不明な大二だが、実際にバウバウたちが宮殿を案内してくれることになる。


向かった先は雑居ビルと家の間の狭くて汚い路地。ここにインスタントカーペットを敷いて、儀式場とするらしい。カーペットは必要ない時は仕舞っておけるので、必要に場合に準備する仕組みのようだ。

さらに、どこかの家のガレージをサロンにして、ここでくつろぎとおしゃべりをする部屋にする。さらに王子の部屋(まるでセット)は公園に作ってあり、同じく王さまやお妃の部屋もあちこちの芝生に建ててあるという。

そして本日のパーティー会場となる「王宮大ホール」は、皆が遊ぶ空き地を借りる。大ホールのカーペットを敷くと、屋根は無くとも立派なパーティー会場の見栄えとなるのであった。


案内状で招待された友人たちが集まってくる。バウバウ大臣の式次第によると、パーティーの前にまずは開会式を執り行うという。そこで、空き地からみんなで走って狭い路地(儀式場)へと向かい、新宮殿完成を祝して万歳三唱が行われる。

そして再び走って、空き地(大ホール)へと逆戻り。ようやくパーティーが始まるかと思いきや、バウバウたちは招待状を出したのにまだ来ていないゲストがいるということで、時間繋ぎに、大二や友人たちにスピーチをしろと無茶ぶりをする。

バウバウはちっとも来賓が来ないということで電話を掛けに行くが、電話口にさえ出てこないと怒っている。誰を待っているのか聞くと、総理大臣と東京都知事だという。アマンガワ国の王宮完成パーティーに呼ぶのは無理があるような・・・。


なかなかパーティーが始まらないので、友人たちは腹減ったと騒ぎ出す。そこで、来賓は諦めてパーティを開始。ただしお料理は台所に用意してあり、空き地から星野家へと走って取りに行かなくてはならない。

バイキング形式ということで、星野家の台所で飲み物と食べ物を取って、再びホールへと戻る。料理が無くなるたびに家と空き地を往復する作業が発生するが、最初から王宮(空き地)にケータリングを用意すればそれで事足りたような気がする。

さらには王宮のトイレが学校の裏に用意されており、出席者はたとえ自宅が近くとも、そこを利用しなくてはならない。何かと町中を走り回ることになる大変面倒なバラバラ王宮システムとなっており、これには皆大いに不満を募らせていく。


やがて雨が降り出してしまい、屋根のない王宮セットなので、ここで強制的にパーティーは解散。パーティー会場もカーペットを片付けてすぐに撤収となるのであった。

バラバラ宮殿は、パーティー参加者には不評を買っていたが、見方を変えて、王国ごっこをしたと考えれば楽しいシステムである。もっとも、カーペットを敷けばすぐに王宮の一部が完成するので、同じ空き地一カ所を使って、次々にカーペットを代えれば良かったのではないかとは思う。


さて、7本の記事を書いた「夢のマイホーム」シリーズはひとまずここで終了。まだ他にも「家」をテーマとした作品はたくさん残されているので、機会があれば紹介したい。(例えば「Uボー」の『めいろつくり機』など)

これまでのシリーズ記事のリンクを張っておくので、気になるものがあれば飛んでみてください。



全体の目次はこちら。


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