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時代は新築からリフォームへ!『アスレチック・ハウス』&『ホームメイロ』他/夢のマイホーム③

一時期、住居のリフォーム番組が流行していた。一番有名なところでは、「なんということでしょう~」という決め言葉的なナレーションでお馴染みの「大改造!!劇的ビフォーアフター」だろう。

我が家では毎週録画して熱心に見ていた数少ない番組で、ラストで匠(設計士)の仕事に感動して泣きだす家族を見て、こっちももらい泣きしていたものである。

基本的に、何らかの問題を抱えた都会の狭小住宅を、匠のリフォームアイディアによって、住み心地の良い住居に変えてしまう、というのが番組の流れ。

新しい土地を求めて、新築を建てるという古来ゆかしき形に対して、既に存在する狭くて古くなった住居を、限りある資金の中でリフォームしていくという方法は、逆にロマンを感じさせるものであった。


ここまで、「夢のマイホーム」と題して、土地~新築物件の購入を目指す家族の話を二つ取り上げてきた。


本稿では「ドラえもん」の中から、新築ではなく、既存の家をリフォーム(改造?)してみようというエピソードをご紹介する。それも、一気に似たタイプの3作品を一挙並べて、未来のリフォーム三部作ということご紹介したい。


『アスレチック・ハウス』「小学三年生」1978年10月号/大全集9巻

RIZAP(ライザップ)などのスポーツクラブ全盛期の昨今。本当は庭の草むしりとかをやっておけばジムに行ったみたいに鍛えられると思うが、やはり張り合いというものがある。

できれば、科学的な最新の器具を使って、効率的に無駄なくシェイプアップしたいし、筋肉も作りたいものである。

ただし、ジムに通うには時間もいるし、お金もかかる。効率的な体作りも、ただでは無理なのだ。

そこでお金も時間もないが、楽しく運動したいという方にお勧めしたいのが、「アスレチック・ハウス」である。

日中から部屋でゴロゴロしているのび太に対して、無理やり運動させるべく、ドラえもんは「アスレチック・ハウス」を天井裏にセットする。これを仕掛けておくと、家の中がまるでアスレチック場へと変貌するのだ。

具体的には、廊下が歩く向きと逆方向に動き出す「ローカランナー」になったり、階段の一段が身長丈を超える高さになる。座布団はトランポリンとなり、障子は激重で、ちょっとやそっとでは動かない。

二階では、廊下に突然穴が開いて、そこを飛び越えなくてはならないし、落ちてしまうと鉄棒を使って登ることになる。

そんなライザップ会員垂涎の仕掛けとなっていたわけだが、肝心ののび太はドラえもんが「アスレチック・ハウス」を準備している間に、珍しく野球に出掛けてしまい、ドラえもんや、ママや、たまたま来ていたママの友人がその被害に遭ってしまうのであった。


『ホームメイロ』「小学五年生」1979年1月号/大全集7巻

続けてのリフォームは、家が迷路のように広かったら楽しいだろうな・・・という遊び心の詰まったもの。ところが、ドラえもんの道具特有の極端さが発揮され、遊びでは済まされなくなる。(下手すれば死ぬ、餓死とかで)

僕の田舎の実家では、3人くらいでかくれんぼをした場合に、本気で探さないとずっと見つからない可能性がある。それくらい、広くて複雑な構造となっている。

しかし都会ではそうはいかない。かくれんぼはおろか、僅かな時間で全員の生死がわかってしまうほどの密着度である。

そこで、部屋を広くするのではなく、部屋と廊下の組み合わせを変えて、レイアウトを複雑にすることができるのが「ホームメイロ」である。その形状は、福引で使うガラガラ抽選機に近い。

試しに一回だけホームメイロを回してみると、いつもは1階に降りる階段が3階に向かっている。そこを上っていくとなぜか1階に着くという、割と簡単な迷路である。

のび太はここで、もっと難しくしようと言い出し、何も考えずにブルーンと「ホームメイロ」をフル回転させてしまう。

ホームメイロは、少しだけ回しても十分な道具であったらしく、グルグルと回してしまうと、二度と抜け出せない大迷宮になってしまう。ちょっとした子供のいたずらで、人生が詰んでしまう恐ろしい道具なのである。

そして、ドラえもんの指摘通り、野比家は二度と同じ場所にも戻れないような大迷路に変貌を遂げる。散々家の中を迷った挙句、機械を逆回しすれば良いと言い出すが、時既に遅し。出発地点の部屋に戻れなくなって、見事永久に家に閉じ込められてしまうのび太たちであった。

ちなみに、ママも迷路の渦中に巻き込まれるが、「変ねえ、お台所へ行こうと思うのに、どうしても行けないわ」と、独特な軽さを発揮している。

オチは有名なので、ここでは割愛するが、意外と答えは最初の方にある、という感想が浮かんだ。


『四次元たてましブロック』
「小学三年生」1982年3月/大全集12巻

続けてのリフォーム道具は、お手軽に家が上方向へと建て増しできる便利なもの。二階建ての家が簡単に三階建て、四階建て、求めれば二十階建てにも増築できる。が、もちろんいいことだらけではないようで・・・。

リフォームの発端は、ドラえもんとのび太で、丸めた布団で戦うという子供ありがちな遊びを「マット・フェンシング」と題して始めたこと。戦いの性質上、ドタンバタンと騒々しくなる新スポーツだが、これを二階でやられてしまうと、一階のママとしては看過できない。

「二階で暴れちゃいけません」と叱られたことで、ドラえもんはだったら三階でやろうと言い出し、「四次元たてましブロック」という家の形をしたブロックをポケットから取り出す。

これが優れもののリフォーム道具で、一階と二階の間にブロックを挟めば、何階にも増やせるという仕掛け。三階で大暴れしても、一階のママとしては「どこか遠くの家で子供たちが騒いでいる」程度にしか感じられないのである。

ちなみに階が増えたとしても、外観はあくまで元のまま。理由は「四次元だから」という雑な説明だが、四次元という言葉には何となく納得してしまう力がある。

さて、その後しずちゃんを呼ぶまでは良かったのだが、ドラえもんが「勝手にいじるなよ、君がやるとろくなことにならないから」と言い残して出掛けたものだから、逆に火が点いたのび太は、いつものように行動をエスカレートさせる。

まず、部屋を増やしてマンションにしようと思いつき、家賃一ケ月100円という超破格の賃貸ビジネスを立ち上げる。スネ夫に貸し、ジャイアンに貸し、ジャイアンの歌声が酷いので、間に2階分挟み・・・とやっていると、たちまち九階建てに。

やがて部屋を勝手に貸していることがママにバレて追われたのび太は、「上へ逃げよう」と建て増しブロックを幾重にも積み重ねていく。その結果野比家はもの凄い超高層ビルとなるのだが、ここには致命的な落とし穴が存在していた。トイレが一階にしかなかったのである・・。

ちなみにこの回でものび太のママは、家の構造が大きく変わったのに、「変ねえ、登っても登っても、階段が続いている・・・」と、やはり感想が軽いのである。


さて、駆け足だったが、「ドラえもん」の三大リフォーム話をご紹介した。

一つは家をジムにする、もう一つは家を迷路に、もう一つは家を超高層マンションにする、そんな改築(リフォーム)であった。僕としては、一瞬で突破脱出不可能なダンジョンを作り出す「ホームメイロ」を一度でも試してみたいものである。



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