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補聴器のフィッターが日々、思っていること。


突然ですが、聴力が低下すると聞き間違えやすいといわれる言葉があります。


例えば……

 

加藤さん?あの人、廊下に誰もいないと思ったらムーンウォークで歩いてるんだよ。好き」
と同僚の特技を発表したが、周囲は佐藤さんの話をしていたらしい・・・
加藤さん、ごめん。

1時に駅に行ったら、誰もいなくて、ベンチで一人で待っていたが
朝の7時集合だったらしい。
もうBBQ終わってた。

筋トレにはが必須!と聞いたので
真面目に、畳の上でスクワットしていたが
必要なのはササミだった。

こんな聞き間違えも、補聴器を着ければ減る!

と思われるかもしれませんが、すべての人がそうとは限りません。



今回この記事でお伝えしたいことは
「補聴器のキモはフィッティングにある!」ということです。




こんにちは。
補聴器を調整するシャープのフィッターです。

今日は、フィッターが日々なにを思っているのか、専門家である私なら耳が聞こえにくくなったらどうするか、などセキララな裏話を現場からお届けします!


聞こえても、聞き取れないことがある


言葉が「聞こえる」ことと、

言葉や会話の意味を理解して「聞き取れる」ことは全くの別物だから、です。

 

ご自分がどれくらい聞こえているか・聞き取れているか調べたことはありますか?

 

1つ目の「聞こえる」力を調べる聴力検査は、健康診断で受けたことがある人も多いはず。
ヘッドホンを着けてさまざまな周波数や強さの音を聞く検査です。
シャープの補聴器も最初にスマホのアプリで同じような聴力チェックを行います。

2つ目の「聞き取れる」力がどの程度あるかを調べるには、「語音弁別(ごおんべんべつ)測定」という主にお医者さんがやるような検査が必要になります。

 

「語音」は言葉の音、「弁別」は区別することで、検査では「ア」「イ」「ウ」など言葉の音を1文字ずつ聞いて、正しく認識できているかを調べます。
「サ」が「タ」に聞こえる人にとっては、「ササミ」も「畳」になるかもしれません。

 

このように言葉を聞き取る力が衰えると、音は聞こえても内容が理解できなくなり、日本語を聞いてもまるで外国語を聞いてるような気分になります。

 

さらに語音弁別測定の結果が著しく悪くなると、補聴器を着けても、それが1つ50万円もする高級品であっても、改善はあまり期待できません。

 

ということは!

 

難聴を長期間放置しちゃダメ

 

耳は、五感の入り口です。

「聞く」ための入り口である耳や聴神経がうまく機能しなくなると、音の情報が脳に行かなくなります。
使われなくなった脳は活動が鈍り、音の記憶も薄れてしまいます。

何もせずに放置していると、音を認識する脳の力まで衰えてくるから厄介なんです。


そうですね、骨折治療のギプスを着けると、ずっと動かさずに安静にしているせいで筋力が低下していくようなものだと思ってください。

 

私はよく、初めて補聴器を使うお客様に

「聞こえにくいと感じたのは何年ぐらい前ですか?」

とお聞きしますが、大部分の方は

「5年ぐらい前かなぁ」

と答えられます。

 

……残念ながら、とても遅い。

 

では、私ならどうするか。

 

お医者さんに手術や薬の選択肢を示されて迷ったとき、一つの目安になる質問があります。

「先生が患者なら、どうしますか?」

「先生のご家族が患者なら、どうしますか?」

 

では、補聴器の専門家である私ならどうするか?

 

私なら一刻も早く補聴器を使います

 

聞こえにくくなったら、すぐ耳鼻咽喉科に行きます。

お医者さんに「聴力が落ちてるね」と言われたら、すぐ補聴器を着けます。

放っておくと加齢に伴って聴力は落ちる一方なので、言われた段階からすぐ補聴器を着けないとダメなんです。

 

もし私が聞こえにくくなってから5年たっていたら?

過去には戻れませんが、「もう無理かな」とはあきらめません!

「聞き取る」語音弁別はさておき、「聞こえる」力を少しでも改善しようと努力するでしょう。

 

補聴器を使い始めると、「着けるとうるさい、不快だ」とおっしゃる方も多いんですが、無論そうでしょう、そうでしょうと思います。

 

その方が5年前から聞こえにくくなってきたのであれば、5年間、音の刺激が少ない環境で生活していたことになり、耳も脳もその状態に慣れています。

 

そこへ突然たくさんの音が入ってくると、

 

脳が驚く!

 

今まで静かな世界で過ごしていたのに、音が急に聞こえるようになれば、耳も驚くし、脳だって驚きます。

 

これが、補聴器を着けると「聞こえる」ようにはなるけれど、すぐに「聞き取れる」ようになるわけではない大まかなカラクリです。

 

そこで、「聞こえる」と「聞き取れる」を両立するために、私たちフィッターとお客様がタッグを組んで目指すゴールがあります。

 

入り口の「耳」を補聴器でサポートする

私たちフィッターが
お客様に合わせて補聴器を調整する

聞こえるを目指す!

 

受け口の「脳」を慣らすトレーニングをする

お客様がご自分で
聞こえのトレーニングを重ねる

聞き取れるを目指す!

 

おそらく大抵の方が、眼鏡をかけたらすぐ見えるように、補聴器を着けたらすぐ聞こえるようになると思われているかもしれません。
いえいえ、補聴器は購入してからの調整とトレーニングで育てていくカスタマイズ製品なのです。

 

 

では、私たちフィッターとお客様が、どんなステップを踏んで進んでいくのか見ていきましょう。

 

シャープの補聴器「メディカルリスニングプラグ」を購入すると、「COCORO LISTENING(ココロリスニング)サービス」というリモートフィットサービスを購入後90日間*無料でご利用いただます。

* 2022年7月28日以前に製品を購入された方は60日間となります。

 

サービスの内容を簡単に説明すると、

▼ パーソナライズ(聴力チェック)
▼ チューニングリクエスト
▼ ビデオカウンセリング
▼ シーン選択
▼ 聞こえのトレーニング

などがあります。

 

 

▼ パーソナライズ(聴力チェック)

 

メディカルリスニングプラグ」を購入したら、最初にスマホのアプリで聴力チェックをして結果を送っていただきます。

それに合わせて私たちフィッターが補聴器の設定データをつくり、スマホに送り返します。

スマホと補聴器を接続すると設定データを反映した「聞こえ」になる、という仕組みです。

聴力チェックがうまくできていらっしゃる方であれば調整は簡単です。

 

ただ、聴力チェックは、周りの環境や耳への着け方でデータが変わります。私たちはその場で見られませんので、きちんと計測できていない可能性もあります。

 

例えば聴力チェックの時、周囲の雑音が入ると聞こえ方の結果が悪くなってしまいます。
そのデータを見た私たちは「あぁ、聞こえにくいんだな」と判断し、音を増幅するように設定します。
その結果、うるさく感じやすくなってしまう、というわけです。

 

聴力チェックを2、3回やっていただいて結果が全部バラバラだったら、私たちは「お客さまがやり方を間違っているのかも?」と考えます。

1回目はものすごく聞こえの悪い結果が出たのに、2回目はものすごく聞こえが良い状態だった方もいらっしゃいます。

ある高さの周波数1つだけが飛び抜けてよく聞こえている方も、ちょっと怪しい。
「きちんとチェックできているのかな?」と心配します。

 

というのも、難聴になった人の聴力データは、基本的に11種類ぐらいのパターンに分かれていて、そのデータを見ればなぜ聞こえにくくなってしまったか、理由が大体わかるからです。

 

加齢で聞こえにくくなったのか、中耳炎の後遺症で聞こえにくくなったのか、音を拾って鼓膜に伝える外耳になにかしらの症状があるのか、音の高さや大きさを感じる内耳が原因なのか、などを聴力データのグラフと照らし合わせて見ることで大体の理由が推測できます。

 

お客様のデータのグラフが変な形になっていて、基本的なグラフのパターンに合っていなければ、聴力チェックのやり方が間違っている可能性が高いと私たちは考えます。

 

自分でやったけど不安……という方も、耳鼻咽喉科でもらえる直近の聴力検査表をご提示いただければ、検査表に基づいてデータを作成することもできますのでご安心ください。

 

 

▼ チューニングリクエスト

 

初回フィッティングが済んだ後も、チューニングリクエストをいただければ、設定データをきめ細かく微調整いたします。

チューニングリクエストは多くのご購入者に人気のサービスです。

あるお客様からは、サーバールームに入るとワーンと動作音がうるさいので調整したい、とご依頼をいただきました。

 

あるお客様からは、会議室のエアコンから出るサーッという音が気になるのでなんとかしてほしい、とリクエストをいただきました。

 

あるお客様は何回もリクエストを出されるので心配してお聞きしたら、「簡単に丁寧にフィッティングしてくれるので満足しています」と調整の過程を楽しんでくださっていました。

 

最高で100回を超えるリクエストをくださった方も、2時間おきに送ってこられた方もいらっしゃいます。

 

フィッティングにご満足いただけていないのかなと私たちも不甲斐なく思いますが、できればある程度の期間を空けて試していただけるようオススメします。

 

それは……調整データを耳と脳に慣らす期間が必要だからです。

 

最低でも調整したら5日ぐらい、補聴器を着けていろんな行動を試しながら聞こえ方を確かめて、またチューニングリクエストを申し込んでいただく。
そのように5日ほどかけて試していただくと、すごく安定した調整ができます。

 

それでも合わないときには、聴力チェックのデータが間違っている可能性をつぶすために再度、聴力チェックをお願いすることもあります。

 

それでも難しいときには、改めて耳鼻咽喉科で聴力検査や語音弁別測定を受けて正確なデータをもらっていただけるようお願いしています。

 

さらに他にも良い方法が!

 

ここまで紹介したやりとりはチャット、つまり文字で行っていますが、さらなる意思疎通を図るために、ぜひビデオカウンセリングを利用していただければと思います。

 

 

▼ ビデオカウンセリング

 

これは、お客様とフィッターがアプリ上の画面でお互いの顔を見ながら、ご要望や気になることをお話しして改善策を探るサービスです。

 

予約制でたっぷり1時間

 

相対して話せる「ビデオの方がいい」と、チューニングリクエストなしでビデオカウンセリングのみのお客様もいらっしゃいます。


フィッターの能力を実感してもらうには、このビデオカウンセリングが最もわかりやすいのですが、その話はまた後ほど。

 


▼ シーン選択

 

使用環境に合わせて選べるシーンの設定データも、私たちが作成します。10シーン設定できて、補聴器本体には4つまで登録できます。

 

ビジネスシーン
●標準
●オンライン会議
●デスクワーク
●打合せ(少人数)
●会議(大人数)
●騒がしいところ

騒がしい屋外の現場)騒音に紛れて聞き取りづらい話し声をキャッチ

プライベートシーン
●バス・電車
●リビング
●レストラン
●屋外スポーツ
●コンサート

運転中の車内)聞き取りづらい後部座席からの話し声をキャッチ

この中でフィッティングが一番難しいのは「騒がしいところ」です。
音がたくさん入ってくるので、フィッター側の「調整」とお客様側の「慣れ」の両方で対処する必要があるからです。

「バス・電車」など一定の音がずっと流れているシーンの調整も難しいですね。
もちろん私たちも最善は尽くします!

 

 

そして最後にもう一つ。

「聞こえ」を良くするために欠かせないことがあります。

 

▼ 聞こえのトレーニング

 

「脳」を慣らすトレーニングです。

 

世の中には「補聴器を着けてもあまり変わらなかった」と使わなくなる人も多くいらっしゃいますが、それはまだ脳が慣れていなかっただけかもしれません。

 

アプリにある「聞こえのトレーニング」には、さまざまな状況で補聴器を使う練習メニューをご用意しています。

 

──家の中での練習──

購入後すぐ
●自分の声を聴いてみましょう
●1対1の会話をしましょう

静かな場所で
●テレビの音を聴いてみましょう
●家の中で生活音を聴いてみましょう

少し賑やかな場所で
●複数人で会話をしましょう

長時間の装用
●家の中で長い時間利用してみましょう

 

──慣れてきてからの練習──

 

家の外で初めての装用
●近所や公園などの屋外に行ってみましょう

活動範囲を広げる
●お買い物・ショッピングをしてみましょう
●職場のミーティングに参加してみましょう
●取引先とのミーティングに参加してみましょう
●車や電車に乗ってみましょう
●講演や映画鑑賞で利用してみましょう



一つ一つクリアしていくうちに、脳が徐々に音のある世界に慣れていきます。
トレーニングで気になったこともフィッティングの役に立つので、些細なことでもフィッターに伝えていただけたらと思います。

 

こうして私たちフィッターは、なんとか少しずつでもご満足いただける状態に近づこうと、さまざまな方法でお客様とやりとりをして、何度も、何度でもフィッティングを行います。

 

そして、ここで高らかに宣言します。

 

補聴器のキモはフィッティングにある!

 

メディカルリスニングプラグ」を開発した人たちもスゴいんですが、なんといっても補聴器のキモはフィッティングです。

 

1つ50万円の補聴器を買ったとしても、フィッティングが悪ければ満足できませんし、満足できなければ次第に使わなくなる。
50万円をドブに捨てるようなものです。

 

つまり、フィッティングを制する者は補聴器を制する!

 

となると、フィッティングの質を左右するフィッターと、フィッターのプロ集団がいるCOCORO LISTENINGサービスセンターについてご紹介しなくては!

 

その前に、シャープのフィッター代表として私の自己紹介から。

COCORO LISTENINGサービスセンターに来る前の話をさせてください。

 

私が補聴器を扱う仕事に就いたのは20代の半ばでした。
父が会社を早期退職後、補聴器販売の仕事をしていたところに誘われて、父の背中を追うようにして私もこの世界に入りました。

 

その後、補聴器を出張販売する会社に転職。
お問い合わせをいただいたお客様のもとへお伺いして補聴器を販売・調整していました。

 

購入されたお客様が「会議の時に聞こえにくいから」とおっしゃるので、会社の社長室で調整したこともありました。

 

当時扱っていたのは1台で数十万円する補聴器で、それをベースに私はフィッティングの腕を磨いていました。

 

お客様の喜ぶ顔を見るのは好きでしたし、昔から頼られる性格のせいか、「気楽にいろいろ話しちゃうよ」とお客様にもかわいがられていましたので、仕事は楽しかったですし、満足していました。

 

しかし2020年になると

 

状況は一変。
お客様と直接お会いするのが難しくなり、「困っているから来てほしい」と頼まれるお客様以外は、電話で「補聴器の調子はどうですか?」とお聞きすることしかできませんでした。

 

その頃、シャープが補聴器を発売するのでフィッターを探しているらしいという話を耳にします。

 

しかも完全リモートフィッティングだと知り、そこまでリモートサービスが進歩したのかと仰天。
完全リモートならお客様とお会いできなくても、多くの方へ精度の高い「聞こえ」を届けられる!

 

画期的なサービスに共感した私は、シャープの補聴器事業に参加し、COCORO LISTENINGサービスセンターで働くようになりました。

 

 

センターにいる仲間のほとんどは、私と同じ「認定補聴器技能者」の資格を持っていて、「言語聴覚士」の国家資格を持っている人もいます。

 

認定補聴器技能者とは

 

補聴器の専門的な知識や技能がある、と公益財団法人に認定された資格をもつ専門職です。

 

取得までには4年かかります。

最初はeラーニングを30時間以上。
仕事が終わった後、疲れた体にムチを打って4カ月かけて履修しました。

1年目から4年目までは、数日間にわたる講習会を東京まで行って受講していました。
5日間泊まりがけで朝から晩まで缶詰になって講習を受けた時は、さすがにキツかった。

 

4年かけて学ぶのは、

聴覚生理、難聴病理、音声学、補聴器音響学、高齢者・難聴者の心理とリハビリテーション、耳型採取、医事法規、医療倫理、聴覚検査法、補聴効果の評価とカウンセリング、症例検討……

「こんなに大変なんです」とお伝えするためだけに長々と書いてみました。

 

そして4年目の最後。
試験を受けて、私は認定補聴器技能者になりました。

 

業界では、この資格を持っていると基準以上のスキルを持った人間だとみなされます。お医者さんからも信用される資格で、医学会では認定補聴器技能者がいる販売店を紹介することが望ましいと推奨されています。

 

言語聴覚士もいる

 

言語聴覚士は話す・聞く・飲み込むなどの訓練や指導を行う国家資格です。

 

COCORO LISTENINGサービスセンターでは、認定補聴器技能者と並んでフィッティングを行っています。
私も時々、語音弁別の状態に合わせて調整したデータを、言語聴覚士の同僚に見せて意見を聞いています。

 

と、まるで隣に座っている同僚に「ねぇ、どう思います?」と話しかけている風に書きましたが、今、私がいるこの部屋には私しかいません。
仲間たちはみんなオンラインの向こう側です。

 

セントラルキッチン方式のプロ集団

 

COCORO LISTENINGサービスセンターはオンラインのセンターであり、お客様に対応するフィッターは、実は日本各地に点在しています。

 

フィッターのイメージ(※私ではありません)

全国展開する補聴器販売店はお店ごとにフィッティングの担当者を配置していますが、シャープはオンライン上の1カ所に優秀なプロのフィッターを集約。
そのセントラルキッチンから高品質で均質なサービスをより多くのお客様へ届ける方法を選んだのです。

 

要は外食チェーン方式のイイトコドリです。

 

ある餃子チェーン店はセントラルキッチンで製造した餃子を各店舗に配送し、店ごとの味のバラツキをなくしているそうです。

そうやっておいしさのレベルを上げた餃子を、それぞれのお店で

「よく焼き!」「両面焼き!」

と注文に応じて焼いてくれるところなんて、

「メディカルリスニングプラグ」をカスタマイズするのにそっくりです。

 

「流れ作業になるんじゃない?」と思われるかもしれませんが、全く違います。
聴力はお客様ごとに違いますし、リクエストの内容も違います。
お客様一人一人の「聞こえ」に集中して真剣に向かい合わないと調整はできません。

 

しかもシャープのフィッターは、餃子を焼く名人のように、フィッティングの経験豊富な人が多いんです。
会社が本気でクオリティーの高い人材を集めたんだなと思います。
私なんて、まだまだです。

 

名人といえば、「フィッターの能力を実感するにはビデオカウンセリングが最もわかりやすい」と書きましたが、それには理由があります。
フィッターには、

 

フィッティングがうまい人・下手な人

 

がいるからです。

 

ぶっちゃけると補聴器の調整技術は人によってピンキリです。
うまい人もいれば下手な人もいます。

 

その違いは、お客様がどう困っていらっしゃるか、「会話から引き出す力」があるか、ないかという点にあります。

 

フィッターはほとんどが健聴者です。
それでも難聴のお客様が何に困っているのか、何が聞きづらいのかを、難聴の人の気持ちになって引き出さなくてはいけません。

 

しかも「聞こえ」は目で見えるものではないので、「おなかがシクシク痛むんです」と同じように、擬音で説明されることが多いんです。

 

「キーキーする」「ガーガーする」「ピーピーする」「ワンワンする」

 

「キーキーする」と言われたら、フィッティングがうまい人は状況を詳しく聞き出して細かく調整します。
下手な人は「キーキーするなら音を下げればいいだろう」と安易な調整をしてしまいます。

 

では、私の接客事例で恐縮ですが、お客様のA様とビデオカウンセリングでどんな会話をしているか再現してみましょう。

 

:初めまして。
お困りごとをチャットの一言コメントで書いてくださいましたが、どんな風に困っているか詳しく聞かせていただけますか?
 
A様:えっとぉ、家でテレビを見ている時とかに、なんか補聴器がキーンってなるんです。
たまにワンワンするような気もします。
 
:キーンというのは、いつもでしょうか?
 
A様:うーん……。
 
:例えばご家族とお話しされている時とか、テレビを見ていらっしゃる時とか、トイレに行くなどお部屋を移動される時にキンキンすることはありますか?
 
A様:あ! 移動する時かも。
 
:ワンワンするのも同じような時ですか?
 
A様:たぶん!
 
:わかりました。
もしかしたら移動する時の振動で耳とイヤチップの間に隙間が空いて、ハウリングを起こしている可能性があります。
今、イヤチップはどのサイズを使っていらっしゃいますか?
 
A様:これです。
 
:じゃあ、ワンサイズ小さなものを着けてもらっていいですか? 着けたらカメラを耳元に持っていって耳を見せてください。
耳の形とイヤチップが合っているか見てみましょう。
 
A様:着けました。
どうですか?
 
:あぁ、このサイズが良さそうですね。
あと、キーンやワンワンするということですので、データを調整してお送りします。
それで一度確認していただけますか?

 

という具合に、お客様がおっしゃる擬音の背景を探り出して、お困りごとの原因をいくつも選択肢として持てる人、持てない人、で調整の方向に違いが出ます。
これは知識というよりも経験則によるものの方が大きいです。

 

お客様からは「お医者さんみたいだね」と言われることもあります。
もちろん医者ではありませんが、何に困っていらっしゃって、どこを調整すればお客様にとって良い状態になるのかを追求するためにも、できるだけ事細かくお尋ねします。

 

 

聞くところによると、一般的な補聴器販売のような「対面」ではない「リモート」フィッティングでは、お客様に寄り添えないんじゃないか、という意見もあったそうです。

 

そうでしょうか?

 

対面だけが寄り添う方法ではない

 

と私は知っています。

 

以前の会社ではお客様のところに訪問して対面でサービスを行っていましたが、こちらに転職する時、リモートサービスに対するネガティブなイメージは全くありませんでした。

 

対面が安心につながる部分もあるでしょうが、「支え」というのは目に見えるものだけではないと思っているからです。

 

ITが発展してきた中で、何かあった時にすぐ対処できるのはインターネットです。
訪問や来店よりも圧倒的に速い。
遠くに離れていてもつながることができるから、お客様サービスでチャットやSNSが多用されるようになってきたのではないでしょうか。

 

お客様からも「リモートだからお店に行く必要がなくていい」「気軽にフィッティングを申し込めるのが魅力的だ」と言われます。

 

お店に行かなくても、普段生活している環境でフィッティングできるので、ビデオカウンセリングで音が気になるモノや場所を画面越しに見せたり、ご家族が同席して横から補足したり、もできます。

 

また、私の過去の経験では、山の集落のようなところは、町へ降りればメガネ屋さんがあったとしても、補聴器屋さんへ行くには山を越えて1、2時間かかる場所もありました。

 

都会のように公共交通機関が発展していればいいんですが、バスが1時間に1本、1日に数本という地域もあります。特に今、高齢者の方は免許返納を勧められますから、車を持っていないとますます行動範囲が狭まってしまいます。

 

その点、「メディカルリスニングプラグ」は宅配便で配達してくれますし、おうちの電波環境が整っていたらリモートでフィッティングもできます。

 

時間効率もいい

 

お客様の中には、チューニングリクエストのお申し込みを22時とか夜中の0時に送ってくる方もいらっしゃいます。
仕事や家事が一段落して手が空いた時間なんでしょうね。

 

フィッターにも時間のメリットがあります。

 

以前の会社では、お客様のご自宅に行くにはどうしても車移動の時間がかかりました。
私は静岡に住んでいるので、県内の移動でも面積が広いせいでかなりの時間を要します。
お客様宅から次のお客様宅へ移動するのに1時間、2時間かかるのもザラでした。

 

ご自宅を訪問して補聴器を調整し、では失礼しますと会社に戻る途中、電話がかかってきて「ここが気になるんだけど、また来て調整してくれないか?」ということもたまにありました。

 

今は移動時間がなく、その分をお客様のために使えます。

 

静岡にいても、北海道のお客様とお話しすることもあれば、沖縄のお客様の調整をすることもあります。

 

日本各地に散らばっているフィッターも、みんな好きな場所を仕事場にして働いているので、

 

フィッターの働き方改革

 

にもつながっているのです。

 

子育てや介護など家庭の事情で、家で仕事がしたい人も、ここでなら続けられるでしょう。
私は……自由が好きなので、リモートは願ったり叶ったり。

 

会社によっては、せっかく定着しかけたテレワークをやめたり、家賃の安い地方から都心まで片道1、2時間もかけて満員電車で通勤したり、遠方への転勤で家族を地元に残して単身赴任にならざるを得なかったり、と大変です。

 

私はこんな時代だからこそ、リモートを上手に使うべきだと考えています。

 

補聴器業界に長くいる私だって、時代が変わって、仕事のやり方を大きく変えました。

 

昔買った補聴器に満足できなかった方も、もう一度、試してみませんか?

 

「聞こえ」を良くしたいと願うあなたの挑戦は未完成で止まっています。

 

どうぞ私たちリモートのフィッターも上手に使って「あなただけのメディカルリスニングプラグ」を完成させてください!

 



・メディカルリスニングプラグの製品ページはこちら


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