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ロロ『BGM』とスカート × 街裏ぴんく『VALETUDO QUATRO』

ステージというのは、可能性が溢れ続ける空間だ。こんなことも見せれるのか、こんな宇宙も広げることができるのか、と思うことが多々ある。それを強く実感するような作品を2本、ここ最近続けて配信で観たので感想を。


まずはロロの『BGM』。三浦直之率いる人気劇団が2017年に発表した作品の再演である。この作品が描き出すのは時間の堆積層だ。東京から仙台までをドライブする2人の青年が、10年前と同じ道のりを辿りながら思い出話を展開していくのだが、舞台の上では暗転や派手な転換を用いずに過去と現在のシーンが次々とシームレスに紡がれていく。舞台ならではの見せ方だ。

登場人物が、親愛なる他者の残した痕跡や記憶、思い出の1つ1つをつぶさに愛おしく思いやる仕草は、通りすがりのラップ少年だろうと恐竜の化石だろうと何ら変わらない。ステージという全てが同居できてしまう空間だからこそ、今を生きる僕らとともに時間の堆積層から掘り起こされた"思い出"が可視化して輝く。過去の自分のその先に立つ、現在の自分を知る作品なのだ。



そしてもう1本はスカート×街裏ぴんくの『VALETUDO QUATRO』。お笑いフリークでもあるスカートの澤部渡と、嘘漫談で支持を集める街裏ぴんくの共演ライブで、舞台上で交互に漫談1本と弾き語り2曲が披露されるという構成。合間には、喫茶店のテーブルを模したセットで澤部と街裏が披露する漫談と楽曲についての話を事前打ち合わせをしている設定で繰り広げていく。

裏側を明かしながら、すぐにライブが展開していく様子もとても面白いが、だんだんと漫談と弾き語りが奇妙な絡み合いを見せ始め、夢中になって観てしまう。漫談の中で語られた楽曲や音がその場で実体化したり、楽曲を踏まえて漫談が語られたり、分離しきった面白さがあったはずのツーマンが次第に有機的に混ざり始めるという想像以上の宇宙が舞台上に広がっていた。



ロロの『BGM』も音楽が記憶を繋ぎ合わせ、物語を大きく駆動させていた。『VALETUDO QUATRO』もある種、音楽と物語が互いを爆発させ合いながら進むステージショーだった。過去と今が並走してしまうのも、嘘でしかない漫談が立体化してしまうのも、そこに伝えたい物語と音楽があるからなのだ。そうでなくては、由来も分からない"BBQ"や"午前2時"という名前が愛おしくなることもないし、「君がいるなら」がうま鬼と京子の曲に聴こえてしまうこともないだろう。小さくも大きくぶっ飛ばされる舞台という宇宙だ。





ロロ『BGM』配信:5/31まで

スカート×街裏ぴんくの『VALETUDO QUATRO』 配信:5/22

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