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"全部がクソに思える"の傍らにて~8.1 ネクライトーキー「FREAK」リリースツアー「ゴーゴートーキーズ!2021」@福岡DRUM Be-1

5月リリースの3rdアルバム『FREAK』のレコ発が猛暑のみならず目下あらゆる苛立ちが山積みになっている2021年夏を駆け抜けていく。去年の師走にワンマンに行った時はさすがに次の夏には、、、と思っていたけど、どデカいスポーツ大会がノリノリで開催され続けタイムラインを始めとする世間が賑わう中で、諸問題も変わらず横たわりそれに対しての不満も噴出し続けているという謎の状況。世界全体が混沌とした精神状態に陥っているかのよう。ことネクライトーキーを観るという点においてはうってつけである。彼らの音楽はクソな日常を巻き返すための怒りをエネルギーに溢れているので。

発散する準備は万端。前から2番目という絶好の位置で開演を待った。5人がSEに合わせて登場し、1曲目はアルバム通り「気になっていく」で軽やかに始まるが、歌っている内容は<最近なんか眠るのが不安なんだ/ワケがあるでもなく最低だ>であったり、<まともに歩けてない日々が気になっていく>など"底”な気分を明け透けにする。『FREAK』はもろにコロナ禍の感情を刻み付けたアルバムゆえ、その闇を振り切るようなガムシャラな曲が多い。続く「北上のススメ」もストレンジなアレンジで、繰り返し新天地へと向かうことを切に歌い続ける。彼らの曲は今、思いのほかシリアスに響いてしまう。

そんな切実さとともに、『FREAK』は今までになく荒々しく豪快な音像のアルバムでもある。その最たるもの、2コードで爆音を掻き鳴らす「はよファズ踏めや」が3曲目に置かれ、一気に昂っていく。無茶苦茶になって叫びたいタイプの曲ではあるが、自分のスペースの中で自由に動くのも実に楽しい。ネクライトーキーはそういう、1人で暴れられる音楽なのだ。ライブチューン「ジャックポットなら踊らにゃソンソン」では何事もなかった頃のライブハウスやフェスが恋しくなったりもするが今はここにある自由を楽しむほかない。それを体現するようにステージ上でメンバーもいつも以上の運動量だ。

ゆるゆるのMCでは脱力させつつも、「踊る子供、走るパトカー」では"言葉の暴力"に対する皮肉をタイトな演奏に乗せ、間髪入れずに「カニノダンス」で低空飛行な日々を憂う。ダンスナンバーな2曲はどうしようもなさを踊り狂って振り払わせてくれるのだ。一方、しっかりと丁寧に声をかけてくれる「涙を拭いて」がセトリ入りしていたのも印象的だった。どれだけ力んで怒っていても、不意に訪れる虚しさがある。そんなひと時の凪の間に、背中を押してくれる言葉。最後はクラップまじりで、メンバーが皆で声を合わせてサビが歌う大好きなブロックがある。すっかり勇気づけられてしまった。

「八番街ピコピコ通り」と「俺にとっちゃあ全部がクソに思えるよ」が並ぶ中盤はハイライトだった。可愛いスキャットとオルタナなリフが絡む「八番街~」は、油断してるとサビ終わりで<大人になってしまうのかな>とぼそり呟かられるので、自分の現在地なんかを見つめて無駄な不安を募らせてしまう。そんな思いも混ぜ込んで全てかっ飛ばすような「俺にとっちゃあ~」はどうしたって燃え上がってしまう。ガムシャラな<大丈夫>と最後の朝日廉(Gt)が感情のままに暴れる様に胸が震えた。全てがクソに思える世界の傍ら、いかに信じれるものを持てるか、その覚悟を問われている気がした。

力強い2曲を経て「許せ!服部」ではバンドとしての楽しみをたっぷりとプレゼン。間奏でもっさ(Vo/Gt)がバンドの演奏を「CD ver.」「ライブVer.」と書いたフリップを上げ下げしてコントロールするのは昨年と同様だが、その2パターンに加え、カウントによるキメと最高潮の盛り上がりという2つを加えた4パターン。メンバー全員のソロパートも更に豪奢になっており、声を出せない状況だからこその見せ方もどんどん進化している。昨年のツアーでも披露されたグランジ「豪徳寺ラプソディ」はデカい会場が想起できるし、ライブハウスのサイズ感では収まらないバンド像を今だからこそ提示していた。

未遂に終わった昨年の『ZOO!!』のツアーから「朝焼けの中で」が優しく鳴り響いた後、小曲「思い出すこと」を挟んでライブアレンジで「大事なことは大事にできたら」が披露される。アルバムでは曲順が離れているが同じメロディを持つ2曲、フィードバックノイズの洪水で圧倒した後の静寂がこの曲の侘しさを引き立てていく。「才能も持たないかえるくんは未だに死なずに冒険をしている」という与太話を挟んで贈られる「続・かえるくんの冒険」は朝日の別バンド・コンテンポラリーな生活の楽曲の続編。その勇ましく雄大なサウンドが彼らの続く冒険を示しているようで、目頭が熱くなった。

朝日の咆哮とともに最終ブロックへと突入。初期曲「めっちゃかわいいうた」と、『FREAK』からの「誰が為にCHAKAPOCOは鳴る」でトリッキーかつマニックなテンションをもたらした後、軽快な4つ打ちから繋げるのは9月リリース予定の1stシングル「ふざけてないぜ」。フェスでドカンといくタイプのダンスロックではなく、ざらついたギターサウンドとループするフレーズがどんどん広がっていくような新たなカードという印象。パワーポップ的なサビのドラミングも開放的で歌詞は節々に"分かろうとする"言葉が多い。彼らは今、彼らなりに大人であることを受け入れつつあるのかもしれない。

そして「オシャレ大作戦」が来る。この曲の、どん底から見上げる空の感じというか、なけなしの希望で暖を取る感じっていうのは、大人になるにつれ、そして時代が混迷を極めるにつれて切実に響いてくる。この日もまた、しっかりと泣きそうになってしまった。ラストは、アルバムでも屈指のポジティブなエネルギーを放つ「Mr.エレキギターマン」が晴れやかに鳴る。<苦手や嫌いなら変わらず後ろからついてくるんだ>と「オシャレ大作戦」にも通ずるフレーズをまじえつつも、今このステージに立つバンドマンとしての誇らしさを歌っていく。結成から4年、やるしかない、ここまできたのだ。

アンコールでは1stアルバム『ONE』から原点たる「こんがらがった!」と「遠吠えのサンセット」を披露。もう何も持っていなかったリリース当時とは違うけれど、結局はやっぱり何もかもこんがらがったままだし、同窓会も避けていたいメンタルではある。人はそんなに変われないけど、それでもしゃんとしなきゃいけないことも多いし、毒づいて心を守りながら、ちょっと順応しようとすることは悪いことじゃないんじゃないかな、なんてことをグルグルグルグル考えてた。そんなことライブ中に考えるもんじゃないかもしれないけど、ネクライトーキーのライブは自分の日々を直面化させ、その上で暴れて、スッキリして帰るものなのだと思う。そう思わせて欲しいのだ。

<setlist>
1.気になっていく
2.北上のススメ
3.はよファズ踏めや
4.ジャックポットなら踊らにゃソンソン
5.踊る子供、走るパトカー
6.カニノダンス
7.涙を拭いて
8.八番街ピコピコ通り
9.俺にとっちゃあ全部がクソに思えるよ
10.許せ!服部
11.豪徳寺ラプソディ
12.朝焼けの中で
13.思い出すこと
14.大事なことは大事にできたら
15.続・かえるくんの冒険
16.めっちゃかわいいうた
17.誰が為にCHAKAPOCOは鳴る
18.ふざけてないぜ
19.オシャレ大作戦
20.Mr.エレキギターマン
-encore-
21.こんがらがった!
22.遠吠えのサンセット



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