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誰が為にネクライトーキーは鳴る~12.08「ゴーゴートーキーズ! 2020 師走」福岡DRUM LOGOS

ネクライトーキー、久々のワンマンツアー。会場は福岡ではキャリア最大キャパとなる福岡DRUM LOGOS。椅子がずらりと並べられているのを初めて見る。定刻になって賑やかなSEが流れるとだんだん立っていく観客たち。この様子見感もお馴染みになりつつある。メンバーが揃い、朝日廉(Vo/Gt)がギターをひと鳴らしして始まる「めっちゃかわいいうた」。去年4回観たネクライトーキーもコロナ禍もあって今年最初で最後、1年3ヶ月ぶり。定番曲にこそ万感の思いが募る。怨念と諦念渦巻くギターロック「きらいな人」が鳴り、鬱憤がどんどん爆音に洗い出されていくよう。

今年頭のアルバム『ZOO!!』のツアーが途中で中止になったこともあり、個人的にはそのツアー分取り返したい気持ちもあった今回。「夢みるドブネズミ」からは『ZOO!!』からの披露。メジャーデビューイヤーをごっそりコロナに持っていかれた彼ら、ずっと逆境を歌ってきたバンドだろうがこれほどのクライシスはなかろう。そんな呪詛と怒りをとびきりなポップソングで跳ね返そうとする姿にグッとくる。イントロを長く取り始まった「北上のススメ」の痛快さ、どんな時も変わらぬ苛立ちを噴出させる「放課後の記憶」、前ツアーで新曲として披露され新たな起爆剤となりつつある「ぽんぽこ節」は戦うバンドの生き様のよう。

「こんがらがった!」でひと盛り上がりした後、換気を兼ねたMCタイム。相変わらず、噛み合ってるのか何なのか分からない独自の時間。喋りを切り上げて始まったのは、朝日がボカロPとして作った「壊れぬハートが欲しいのだ」!もっさ(Vo/Gt)と藤田(Ba)のツインボーカルで仕上がったリメイク版、中村郁香(Key)の軽快なピアノが彩る突き抜けた1曲となっていた。こうやって密かに新たな楽しみを仕込んでくれるあたり、とても信頼できるバンドだ。クラップが弾ける「夏の暮れに」の後、「だけじゃないBABY」には思わず目頭が熱くなる。やりきれなさとギリギリのナニクソ、綯交ぜな感情は今とてもリアル。

ミステリアスでドープなダンスミュージックからノイジー&ラウドな奇曲へと変貌する「渋谷ハチ公口前もふもふ動物大行進」は良い起伏を生んでいた。『ZOO!!』の投入によって、ライブに幸福なうねりが生まれているのは間違いない。朝日が弾くギターの音量つまみを回しながら徐々に始まる「許せ!服部」は音源以上のテンポチェンジを生む。また間奏では観客のカウントに合わせてメンバー全員でキメを打つのが定番だが、今回はもっさがライブとCDverの演奏を操る仕様に。また、各メンバーのソロパート(むーさんはショルキー!)も交え、この状況下ならではの演出だった。

2度目の換気タイムを挟み、じっくりとイントロを奏で始まった「がっかりされたくないな」。もっさが最後サビの前のパートをすっ飛ばすミスをしていたけど、その後全く違和感なく続けたところにバンドシップを感じ、頼もしかった。更に「深夜とコンビニ」でしんみりとした時間を重ねる。MCで「我々もかなり大変だった、、」と苦笑混じりに話していており、想像以上の辛さが彼らにはあったはず。曲の内容も相まって、胸が掻き毟られるような切なさを残した。彼らの歌ってきた言葉はどんな過酷な状況においても、冷徹なほど日常的な痛みがある。それは実は少し救いでもあるような気がしてならなかった。

朝日が新しく買ったジャズマスターで作ったという新曲はより大きなスケールを感じさせるロックンナンバーで、まだまだ高みを目指すことを示しているかのよう。カウントダウン→ファイヤー!で始まる代表曲「オシャレ大作戦」も、この日はどうしたってギンギンな闘志が漲って聴こえる。<25を過ぎても生きていたい/やるしかない、ここまできた さぁ!>で雪崩れ込む最高にポップなあのサビすら、僕にはレベルミュージックに聴こえて仕方がない。この時代、この社会に対する反抗/抵抗。今ここにある気高い自分を守るための叫びだ。昂り踊ることで示す現在地がある。

最新曲「誰が為にCHAKAPOCOは鳴る」は明らかに観客との掛け合いありきの曲ゆえ、そのトンチキさとは裏腹に切なさを感じてしまう。その悔しさをひっくり返すようなラスト「遠吠えのサンセット」のガムシャラなエナジーは爽快だった。アンコールでは、夏の配信ライブで聴いたミドルテンポの新曲と、「明日にだって」。<かきむしって 熱を上げて これだけは譲れないと守ってきた>という言葉がどうしたって胸を打つ。世界にこてんぱんにされたとて、常にそのボコられた側の憤怒を歌ってきた彼らは、過去の曲たちを武器としてシーンのみならず社会全体に対峙し始めた。僕らのために、そしてネクライトーキー自身のためにネクライトーキーは鳴り続けるのだ。

<setlist>
1.めっちゃかわいいうた
2.きらいな人
3.夢みるドブネズミ
4.北上のススメ
5.放課後の記憶
6.ぽんぽこ節
7.こんがらがった!
8.壊れぬハートが欲しいのだ
9.夏の暮れに
10.だけじゃないBABY
11.渋谷ハチ公口前もふもふ動物大行進
12.許せ!服部
13.がっかりされたくないな
14.深夜とコンビニ
15.(野音ジャズマス新曲)
16.オシャレ大作戦
17.誰が為にCHAKAPOCOは鳴る
18.遠吠えのサンセット
-setlist-
19.(ビリビリピコピコ新曲)
20.明日にだって

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