【私見】日本の留学生はどうやったら増えるのか、調べてみた。
9月入学の議論について、9月入学にすれば国際化が進み留学生数が増えるという主張があります。それについて、過去の留学生数や日本人が留学しない理由を調べてみました。
NAFSA(https://www.nafsa.org/policy-and-advocacy/policy-resources/trends-us-study-abroad)
上によれば、アメリカの外国人留学生の数は2017-2018年時点で約34万人。
ホスト国別に見ると、ヨーロッパを留学先とする人が多く、各国の地域の割合をまとめると、
・ヨーロッパ54%台
・アジア11%台
・ラテンアメリカ14%台
上位3地域はこうなっています。ラテンアメリカはメキシコから南アメリカまでの地域なのですが、意外とアジアに留学する人は少ないようです。
この(https://www-overseas-news.jsps.go.jp/wp/wp-content/uploads/2016/03/2015kenshu_01was_fukui.pdf)調査によれば、
アメリカ人の留学先は、日本は調査国中最下位で2000年から2013年にかけて5000人台のまま推移している。
イギリス・9月
イタリア・9月
スペイン・9月
フランス・9月
中国・9月
ドイツ・9月
アイルランド・9月
コスタリカ・1月?8月?
オーストラリア・2月
留学生数の順位ですが、米国の学生の留学先は同じように9月入学の学校が多いことが分かります。ただ、2000年時点で、中国・ドイツ・アイルランド・コスタリカ・日本はほぼ同じ留学生数であったにも関わらず、10年をかけて日本のみがあまり数が伸びていません。異なる学期のせいなのか、国の魅力のせいなのか、一体どちらなのでしょうか。私は後者であるような気がします。
留学しない理由について、「なぜ海外留学離れは起こっているのか」などを参考にまとめると、
・就職活動の早期化、長期化
・学生の海外留学を評価しない雇用者
・単位互換制度の未整備
・大学での国際教育交流プログラム開発の遅れ
・新TOEFLの導入
・学費高騰
・日本の大学院での博士授与の増加
・学士より高い学位(特に文系)を取得してもメリットの少ない雇用習慣と給与体系
・少ない海外留学のための奨学金
・短期的かつ目先の思考
・学事暦の違い—4期のクオーター制にすれば問題ないとの議論もある
海外留学しない理由としては、日本の雇用や教育、経済的問題が挙げられています。
では次に関西大学の調査を見てみると、留学しない理由として、
・留学資金がない
・就職活動に不利になると思う
・語学力に不安がある
・興味がない
・外国生活に不安がある
・保護者の理解が得られない
・四年間で卒業できるか不安
やはり留学資金の不安が大きいことが分かっており、次に語学力に不安があったりそもそも留学に興味がないことを理由として挙げています。
項目に「学事暦の違い」がないので、それを理由として留学に躊躇する人がいるかは分かりません。しかし、少なくとも今から5年以内の調査であり、グローバル化も進んでいたことを考えると、学事暦はあまり気にされていないのではないかと思います。
平成26年の文部科学省発行の「若者海外留学を取り巻く現状について」によれば、日本人の海外留学の減少と阻害要因等は、
・帰国後、留年する可能性が大きい
・経済的問題で断念する場合が多い
・帰国後の単位認定が困難
・助言教職員の不足
・大学全体としてのバックアップ体制が不備
・先方の受け入れ大学の情報が少ない
・両親、家族の理解が得られない
・指導教員の理解が得られない
などになっており、留年の可能性が大きいことが学事暦の違いと関係しているかもしれませんが、明確に「学事暦の違い」には触れられていません。
経済的問題の項目が留学しない理由として挙げられることが多かったので、各国の留学にかかる平均費用、補助制度、家計の収入などを調べてみました。
まず学費について、
・留学くらべーるによれば、大学の1年間の費用は、100~400万円
・留学コンシェルジュbeoによれば、300~450万円
・栄陽子留学研究所によれば、200万~530万円
・COLLEGE TUITION COMPARE-アメリカの大学情報—2020年度のジョージワシントン大学の授業料と手数料を合わせた合計は、$56,935(日本円で609,2045円・1ドル107円で計算)となっています。高い。
州立大学、私立大学によって学費に開きがありますが、500万円台のところがあるようです。日本の大学が4年で400万円くらいなので、そんなに大きく変わるわけではないでしょうか。
留学の阻害要因として経済的要因が大きいことが分かっているので、次に支援制度を見ていきます。独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)の奨学金をまとめます。
・海外留学支援制度(協定派遣)—月額6~10万円
・海外留学支援制度(学部学位取得型)—5万9千円から11万8千円
・トビタテ留学japan-10万円台から90万円台まで
他にも、JASSO貸与型の奨学金もあり、これは第一種奨学金や第二奨学金の額と同じようです。貸与型だと、月額2万円から12万円くらいになります。
1年間の学費が100万円を超えるのが普通であるなかで、月額数万円から数十万円の奨学金は物足りないように感じます。全国大学生活協同組合連合会が2019年に行った調査によれば、学生が月に貯金する額はおよそ1万5千から8千円くらいで、あまり貯金できていない実態が分かっています。学費を賄えるほどではないことは確かです。
次に、日本の家庭の状況を見てみます。参考にするのは、厚生労働省の「平成30年 国民生活基礎調査(平成28年)の結果から グラフで見る世帯の状況」です。
・平成27年の1世帯当たり平均所得金額は、545万8千円
・児童のいる世帯の平均所得金額は、707万8千円
このうち、貯蓄の額について見てみると、児童のいる世帯の貯蓄は(500万~1000万円帯)、500~1000万円・1000万円以上の合計が48%台となっています。子どもの教育費用が1000万円くらいが相場のようで、幼稚園から大学まですべて私立だと2000万円くらいかかると言われています。貯金の額はちょうど教育費用に充てられるといった感じでしょうか。
ここでもう一度、各国に留学したときの1年間の費用をみますが、留学ジャーナルの48週間のデータを参考にすると、
・アメリカー340~450万円
・オーストラリアー250~325万円
・カナダー200~335万円
・イギリス—205~385万円
・ニュージーランド—215~300万円
となっています。日本の学生の1年間の支出を調べると、平成28年度学生生活調査結果(集計表)によれば、下宿・アパートの支出合計は、
・国立—1,743,500
・公立—1,674,600
・私立—2,492,500
で、外国と比べると平均は約220万円でそこまで高くはありません。ただ、1年間の学費は留学の方が高くつくと言えます。
次に、Benesse教育開発センターの「大学生の保護者に関する調査」によれば、回答年齢は45~49歳、50~54歳が合計で75%となっているので、この年代の貯金額を調べました。
「家計の金融行動に関する世論調査」(2019年)によれば、40代の平均貯蓄額は694万円となっています。ただ、中央値が365万円で、真ん中の額は平均より300万円ほど少ないです。300万円だと、私立大学に下宿・アパートから通う場合は1年で貯金の多くがなくなってしまいます。
下宿・アパートではなく、自宅から通った場合は1年あたり70万円ほど安くなりますが、それでも国立大学の場合は3年分の学費しか、中央値の貯金額では賄えません。
ちなみに、50代の平均貯蓄額は1194万円、中央値は600万円で、40代と比べると貯蓄額が大幅に増えています。子どもが社会に出る年齢でもあるので、増加していることは納得できます。
ここまでの結論で導き出せるのは、
・留学しない理由では経済的理由が大きい
・大学生の子どもを持つであろう40代の貯蓄額は、中央値でみると学費の1年分から3年分
ということです。
9月入学に移行したとしても、大きな留学阻害要因である経済面の問題を解決しなければ留学生は増えない可能性が十分にあります。ぜひ、奨学金制度(給付型)を充実させてほしいものです。
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