マガジンのカバー画像

珈琲の大霊師

284
シャベルの1次創作、珈琲の大霊師のまとめマガジン。 なろうにも投稿してますが、こちらでもまとめています。
運営しているクリエイター

2018年11月の記事一覧

珈琲の大霊師028

「リフレール、俺はかなりやばい状態かもしれねえ。文字まで、一部だけ霞んで見えやがる」

「・・・・・・なるほど、どうやら×××っていうのはそういう存在って事ですか」

 リフレールが一人で納得している。

 リフレールが納得できるって事は、ここまでの会話で十分な推測ができる内容だって事だな。

 さっきから消えてる言葉は一部。消えるのは、どうも「何かのせいらしい」。リフレールが「そういう存在」だっ

もっとみる

珈琲の大霊師027

 目を覚ました時、俺の目の前には俺の足の上に上半身をうつ伏せにして寝るモカナと、うつらうつらしているリフレールの姿だった。

「・・・・・・見えるようになったな」

 ホッと胸を撫で下ろす。さすがに、ずっとリルケしか見えないとか冗談じゃない。

 俺の声に反応してリフレールががばっと顔を上げた。目の下がくまになってる。酷い顔だ。

「よう、やっと見えるし聞こえるようになったぜ」

「・・・・・・心

もっとみる

珈琲の大霊師026

 状況を整理しよう。
 
 俺は、リルケという女将の行方不明になって現在は花の精と自称する少女と謎の空間で話しているが、それは相手のせいじゃなくて俺自身のせいだったらしい。

 でも、俺は無自覚。これ、詰んでないか?待て、前回は何で戻れたんだっけか?
 
「ちょっと待ってくれ。昨日話した時は、なんで途中で話せなくなった?」

「え?・・・・・・えっと、確かな事は分からないんですけど、多分、月が隠れ

もっとみる

珈琲の大霊師025

 朝食は、リルケが作ったという小さいけれど賑やかな庭に面した屋根の下、木製のテーブルに絹のテーブルクロス、間伐材とツタを丁寧に組んで作られたイスという味のある森林家具に囲まれてのものとなった。

「シルバーアップルのアップルパイに、シェルフの花弁を練りこんだパン。こっちは山の幸のスープ。100種類の花の蜜を集めたフラワーシロップも自由に使っておくれ」

 しとしとと降る雨の下、思った以上のボリュー

もっとみる

珈琲の大霊師024

 久し振りに風呂に入ってきたんだが、リフレールとモカナの姿が無い。そのかわりに、部屋には見知らぬ少女がベッドの上に座っている。窓から入る月明かりに照らされた横顔は、どこか寂しげに見える。ってえのは、一体どういう展開だ?

 えーと、さっきモカナがのぼせて風呂から出てきて、入れ替わりで俺が風呂に入った。リフレールはモカナの面倒を見てるはずだし、モカナはベッドに寝てるはずだ。

 それに、この娘は誰だ

もっとみる

珈琲の大霊師023

―――――――――――――――――
【第8章】花の村に怪奇の影

誰か気づいて下さい

―――――――――――――――――

 モカナという少女は、見ていて飽きない。と、私リフレールは思う。
 
 いつも楽しそうにしている。子供は基本的に何にでも興味を持つものだが、モカナの場合はそれが非常に広い範囲になっていると言える。
 
 今も、道端に咲いている花を見つけてはジョージを呼んではしゃいでいる。対

もっとみる

珈琲の大霊師022

 その夜、モカナは中庭にいた。リフレールに呼び出されたのだ。
 
 深夜の薄暗い中庭でキョロキョロと辺りを伺っていると、リフレールの金髪が闇にしゃらしゃらと柔らかな光を放っているのを見つけた。

「リフレールさん、どうかしたんですか?」

 モカナの肩には、眠そうにこっくりこっくりと頭を揺らしているドロシーが寝転んでいた。そのドロシーを起こさないように、リフレールはモカナを手招きすると、静かに座る

もっとみる

珈琲の大霊師021

「おや、珍しい組み合わせだな。私も加わっていいか?」

 中庭でリフレールとルナが向かい合わせに座っているのを見つけたユルは、ただならぬ雰囲気を感じ取って近づいた。

 なんとなく、その二人に色んなバルコニーから視線が集まっているような気がして辺りを見回すと、どのバルコニーからもそそくさと巫女達が去っていく。密談には向かない場所だ。

「あ、ユル様。え、えっと……」

 ルナは、ちらちらとリフレー

もっとみる

珈琲の大霊師020

―――――――――――――――――――――

【第七章 旅立ち】
面白い方に行きてえ

―――――――――――――――――――――

「俺、衛兵やめるかもしれねえ」

 ジョージは、台所で上機嫌に腕を振るうルナにそう言った。休日で暇だからと、ルナがジョージを自宅に呼んだのだ。
 
 ルナは、びっくりしてフライパンを取り落としそうになった。ルナの水精霊が、慌ててそれを支える。

「な、なんだい急に!

もっとみる
珈琲の大霊師019

珈琲の大霊師019

 モカナは、一人壁に耳を当て、水の音を聞いていた。
 
 脳裏に浮かぶのは故郷の景色。緑の山、白の山に囲まれた小さな集落。モカナの家は、村の外れの川辺にあった。モカナにとって、水のせせらぎは、子守唄のようなものだったのだ。

 裏の林には動物が沢山住んでいて、皆モカナと仲良しだった。
 
 モカナの家は、コーヒーの木を栽培する一家だった。モカナも、生まれた時からコーヒーの焙煎の香りに包まれて生きて

もっとみる
珈琲の大霊師018

珈琲の大霊師018

 次の日、3人は水宮の広い中庭にいた。水宮の中心に位置していて、正方形に上から切り抜かれたような形をしているこの中庭は、全37階建ての水宮のどの階からもバルコニーが突き出ていて、通りかかる巫女達の癒しの場となっていた。

 3人の前には、赤く煌くコーヒーの実がどっさりと山を作っている。興味本位で、バルコニーには数え切れたい程の巫女達が現物に来ていた。

「へえ、結構甘いんだねぇ。この実。これがあの

もっとみる
珈琲の大霊師017

珈琲の大霊師017

「とまあ、そんな所だ。母さんは、今でも元気にガキの面倒見てるぜ。その後は、なんかヤンチャすんのもつまらなくなってよ。母さん安心させる為にも、医師会の連中がバカやらない為にも、つまんねえ衛兵の仕事に就いたってわけだ。ここにいりゃ、中の情報も、外の情報も入ってくるしな。ま、今はその頃の仲間とも必要以外は殆ど連絡も取らねえし。あいつらは、俺無しでもやってけるようになったし。今は、しがない衛兵ってことだ」

もっとみる
珈琲の大霊師016

珈琲の大霊師016

 王族に純粋な好意で近づく物は少ない。

 誰もが、自らの利益の為に近づいてくる。王族は賢くなければならない。それは国を運営する為ではなく、まず自らを守る為に。

 仲の良かった幼馴染は異性の貴族に騙され、財産を奪われて家を追われた。その貴族に相応の罰を与える為、リフレールは知恵を磨いた。その貴族は、1年後に失脚し、領地を追われた。

 その頃から、世の中がよく見えるようになった。人を上手くうごか

もっとみる
珈琲の大霊師015

珈琲の大霊師015

 モカナは途方に暮れていた。土地勘のあるジョージはさっさと探しに行ってしまったし、頼りになるリフレームも触発されて行ってしまった。モカナは、この街に来て始めて独りぼっちになっていた。

 途端に心細くなった。が、ここでまごまごしてもいられない。ジョージもリフレームも、モカナが聞き込みをすると信じているのだから。

 モカナは、意を決して立ち上がり、周囲を見渡した。

 近くにある店舗は、右手側に精

もっとみる