商店街
徒路を裏む雲烟の軋み
褪色した窳から
思郷が迸る
流浪する箏は
寂れに咀嚼され
莨の鬱屈は
漆喰の剥離に居座っている
長途を渉った華たちは
芳馨の破片を置き忘れた
残滓の聲
超克を叶えた葛が
彩りを取り戻す
少し寂れた大きな商店街を歩く。スピーカーからは落ち着いた音楽が流れ続けている。セールの本たちを店外で売り出している古書店。700円の日替わり定食を立て掛け看板に大きな字で書いている中華屋。パチンコ屋の前の階段でタバコを吸うおじいさん。独特の空気は、私が見ることのできなかった時代たちを教えてくれる。不思議と郷愁が湧き上がる。車の通らない大きな長い道。歩を進めるたびに通り過ぎた時代が呼び止める。店の間の小さな道には、錆びた屑籠が転がっていた。
※
・徒路 - かちじ
・裏む - つつむ
・雲烟 - うんえん
・窳 - いしま
・迸る - ほとばしる
・箏 - こと
・莨 - たばこ
・芳馨 - ほうけい
・聲 - こえ
・葛 - かずら
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