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[詩]悲しみの在り処 愛の在り処

大切な人を亡くした

友よりも恋人よりも父よりも母よりも大切な人だった

死をもって、その人の生命まで途絶えるものではないと思ってはいるが、
その人の声も考えも生きているうちは知覚することができないのだと思うと
深い喪失感に暮れた

おもしろいものに笑っているとき、
 でもその人はこの世にいないのだと思う
おいしいものを食べているとき、
 でもその人はこの喜びを感じることができないのだと思う

本質的には、死に対していつまでも固執すべきではない
私は私の人生を生きているからだ


私はその人を愛していた。(と、思っていた。)

いついかなるときもその人のことを想っていたし、
その人のために私は生きていると思って過ごしてきた。

心から。真心から。

しかし、その人の死を知ってから、その人を愛していた気持ちは、
 色褪せ、花のように萎れていった。

代わりに私の心を巣食ったのは、雲が集まるようなどンよりとした思いというよりも、むしろ晴れやかな気持ちだった。
清々するような、解放されたような。

私は、その人を愛していたのだろうか?

心からその人を思慕していたその気持ちは、
私が「これが愛だ」と思っていた感情は、
 本当は何だったのだろうか?

私の、その人への愛は、その人のための愛なのではなく、
私を愛するための愛だったのだろうか?
わからない。

ただ、私は、その人の思いを真(しん)に受け止めきれていなかったことだけはわかる。

わかっているつもりで、本当はわかっていなかったのかもしれない
愛しているつもりで、本当は愛していなかったのかもしれない

私は、私にも知りえなかったこの本心を恥じている

許されたくとも、許されきれないと思う
心から謝りたくとも、謝りきれないと思う
償いたくとも、償いきれないと思う

その人は、私にとっての全てだったのだ。
その人への想いは、誰にもあてがうことができない、私なりの愛だったので。

2023.04.01

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