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東京大学建築情報学シンポジウムのただのノート

はじめに

昨日、東大建築学科のほとんどの講師陣が「建築情報学」をテーマに各自の分野の垣根を越えて議論するというアツいイベントが開催され、私は現地聴講しました。内容が面白かったのと、10年ぐらいぶりの「大学の講義」が新鮮だったのとで、興味を持ったところを中心にノートを取りました。せっかくなので、そのノートを公開してみます。

※時間の都合上、わかりやすい編集などはせず、基本そのままです。いろんな方のツイートのような深い示唆はないかもですがあしからず…

講義の記録

開催概要

  • 2022年10月1日(土)、22日(土)の2回に分けて、オンラインとリアル会場のハイブリッドで開催 参加無料

  • リアル会場 東京大学本郷キャンパス 工学部11号館 Haseko-Kuma Hall(130席 申し込み者多数の場合抽選)

  • オンライン中継(Zoomウェビナー+youtube stream)

私の講義ノート

※小見出し以外の太字は私見です

  1. 13:00  開催趣旨説明と各セッションの紹介

    1. 池田靖史先生 建築情報学概論 慶応SFCから着任 今回のシンポジウムを企画

  2. 13:10-14:40 session 1「デジタル・マテリアリティ」

    1. 野口先生 建築材料

      1. マテリアル=材料/重要課題

    2. 佐久間先生 音響材料

      1. ポーラス

      2. なんちゃって吸音材/トラバーチン

    3. 三谷先生 ランドスケープ/庭園

      1. 点群データをスライス(断面図化)して圧縮 →奥行き感を可視化

      2. 西洋と違い、日本庭園は図像化が従来難しく、発展しにくかった

    4. 腰原先生/木質構造学 木/自然材料

      1. 森林資源の有効活用

      2. 自然材料 制御?/遺伝子操作

      3. 材料にあった構造

    5. 川口先生 建築構造

      1. 形態解析

    6. ディスカッション

      1. なんちゃって吸音材

  3. 14:50-16:20 session 2「デジタル・クリエイティビティ」

    1. イントロ 平野先生 建築意匠

      1. 建築における人間の創造性。それをデジタルとかけ合わせることによりどういうことができるか

    2. 岡部先生 まちづくり

      1. 都市のクリエイティビティ

      2. スラムマッピング

        1. スラムに住んで建築実践

        2. 途上国都市人口の3割がスラム居住(国連)

        3. 衛星画像を使うことで世界中どこでもスラムと推察されるエリアを同定する試み 4色でマッピング =スラムの可視化

        4. 分布に着目 →経年変化を追う

        5. 思ってもいないことが影響を与えている e.g. 政治

        6. 粘菌 イグノーベル賞 司令塔なしで複雑なものを作り上げている

      3. Digital化時代の都市のCreativityとは?

        1. 人工的環境を構築するにあたり

        2. アルゴリズムで自動生成された情報から

        3. 新たな学びや着想を得ることで

        4. 今までになかったCreativityが可能になる? →同意

          1. 都市は偶発的で予知不可能

    3. 舘先生 計算折紙

      1. Computational Origami

      2. 製作技術の進歩 温めるだけで10時間の折作業が省略できるようになった スケール/普遍性

      3. 設計ツールを作成/公開した

      4. 近日展示あり

    4. 丸山先生 建築材料

      1. マテリアルズインフォマティクス

        1. 社会的・産業的に要求される機能を実現する新物質・材料の発見の促進、設計指針の構築

        2. 大規模・複雑データから構造・物性相関や物理法則を帰納的に解明する手法の開発とそれを用いた新材料の探索・設計 →データサイエンスとの接点。製薬研究などと似ている

      2. デジタル化

        1. 構造→材料 構造のための材料を開発

        2. 施工→材料 3Dプリンティングで起きていること

        3. まだ理論ではない できたものに理論をつけている状況

    5. 小崎先生 光環境

      1. 光環境設計 建築設計+照明設計 シミュレーションツールの発展

    6. 谷口先生 環境エンジニアリング/シミュレーション

      1. 可能性を拡張させるもの

      2. 遺伝的アルゴリズムを用いた多目的最適化

        1. ファサードデザイン

        2. トレードオフ関係となる指標を選定

          1. ルーバー本数

          2. SDA 50%以上300lxとなる面積の割合

          3. Solar Radiation

      3. 建築進化サイクル

        1. 佐藤ジュン寄附講座 駒場博物館

        2. 評価指標の「抽出」、進化サイクルにによる「初動」感性による「切断」

        3. 一つの答えでなく、パレート解を出すことのエンジニアリング上の価値

      4. 設計時の「予測」と運用時の「実態」→興味ある

        1. 方法論

          1. Robust Optimization

          2. 不確実なものを不確実なままシミュレーション(モデル化:不確実な物をある幅を持って想定し、最適化を行う) →「人」より変動の幅が大きい「モノ(機械)」の振る舞いを相手にする「工場」や「物流施設」において、現状の予測の不確実性の壁を乗り越えるために役立ちそうなアプローチ。興味ある

        2. 事例:住宅

          1. 居住者の行動(環境調整行動)

          2. シミュレーションの段階での正確な予測が難しい

          3. 住まい手の行動による影響を可視化

          4. 上方修正しながらコントロールする。シミュレーションによりそのための情報提供をする。→ばらつきをコントロールするための情報共有

          5. どう情報を見捨てずに向き合っていくか

    7. ディスカッション

      1. デジタル・クリエイティビティ

        1. 設計プロセスにおける自由度の拡大

        2. メカニズムに反映されない

        3. 他の領域の知見を参照しながら新しいブレイクスルーを試みる

        4. 集合知 クリエイティビティを発生させる主体が複数

      2. 視点

        1. 微視的 鉱物

        2. 巨視的 スラム/衛星

      3. ①人が好きな人/②物が好きな人

        1. ①手法?

        2. ②できたもの

      4. デジタル化すると共有(他の人にもノウハウを共有できる)

      5. どう解釈するか/どう見せるか が今後重要になる視点 e.g. 多目的最適化

      6. 自己組織化 都市が生まれる

      7. 物が好き⇄主語は人?

      8. ロバスト・オプティマイゼーション

        1. 技術系は突発的なものを扱えなかった

        2. おおらかなシミュレーション もう一度技術を開発している人と諦めずに付き合ってみようと思った

      9. デジタルが入ってきた

        1. プロセスをアーカイブできる

        2. 人、人が関わったプロセスに焦点が当たっていくのでは

        3. シミュレーションにどう人が介在するかに興味があるし、追求していきたい

        4. デジタルで解明しきれないところに、次の可能性がありそう e.g. 点群データで

      10. デジタルにより、設計者中心だった主体が広がってきた

  4. 16:30-18:00 session 3「デジタル・インタラクティビティ」

    1. 赤司先生 エネルギーシステム

      1. サービス・アプリケーション・データ

        1. 通常測らないきめ細やかなデータが必要になってくる

      2. データ駆動による価値向上

    2. 楠先生 耐震工学

      1. ビッグデータをそのまま渡してもダメで、意思決定の最適化に使えるようにする必要がある

      2. デジタルツイン Plateau 内閣府?国交省?

        1. 災害情報のデジタル化

        2. 線状降水帯、地震被害、避難指示

    3. 横山先生 環境行動心理

      1. VRの実験

        1. 皮膚電位水準SCL 人の整理状態(覚醒)を計測

        2. 再認課題(記憶テスト)正答率 e.g. 108枚の写真

      2. サイバー空間の知覚?

    4. 今井先生 空間システム工学

      1. 3Dプリンタを使ったプロジェクト PENTA

    5. 本間先生 数理最適化モデリング

      1. 建築・交通・都市×数理最適化モデリング

      2. オペレーションズリサーチ(数理最適化)×社会システム

      3. 道の駅の配置の最適化 通常は自治体 今回国交省プロジェクトで全体最適化を検討 →スマートシティ分野にとても役立ちそうだし、すでにその分野で実践しておられることが興味深い。今後ディスカッションしてみたい

        1. 交通・都市・建築

        2. データ

          1. 5満点以上の位置データ?

          2. 交通データ カーナビ2点間データ

        3. 最適配置の天文学的可能性

        4. 指標需要シナリオ

        5. 地元住民+ツーリスト 最適配置の理想系

      4. 建築計画への最適配置

        1. 美術館における鑑賞行動の位置

        2. 視線の変化を予測

        3. 建築空間人

        4. 数理最適化問題

        5. 価値観を感じ取る重要性

      5. インタラクティビティ×数学

        1. 凸空間列挙によるインタラクティビティの可視化

          1. パブリックとプライベートのグラデーション

        2. House O 藤本宗介

          1. 23万通りの凸空間が列挙

        3. Convex Space Visualizer

          1. 公共のデザインの時にユーザー・デザイナー間の合意形成に寄与

    6. ディスカッション 糸井先生 地震工学

      1. デジタル・インタラクティビティ

      2. 数理モデル

        1. 人間を主体としたたくさんの蓄積がある

        2. 赤司先生のポイントは、人間を主体とした場合はどう分布しているかわからないことが課題。測りつつ考えるというリアルタイム性。人がそう分布していることがわかることが重要。

        3. 数理モデルを使った予測をどうフィードバックするのか(道の駅の完成後の使われ方をフィードバック)

          1. 明らかな空白地帯がわかる 政策評価に使える

          2. 理想と現状の悪い状態が明確になる

          3. 建築空間の家具の配置の移動の反映が難しいので今後の課題

  5. 18:00-18:20 第1部まとめのディスカッション 池田靖史、加藤耕一、平野利樹、糸井達哉

    1. スキュモーフィズム 知覚の変化 新しいマテリアリティ iPhoneのアイコン

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講義スライド・写真

終わりに

こんな感じでした。私は大満足。これで建築情報学の発展に少しでも貢献することができれば何よりです。以上!

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