人生に絶望したあたしがヨガでテレビに出て炎上するまでの300日
パソコンの起動が遅い。そんな会社は確実にブラック企業だ。でも、入社前にパソコンのスイッチを押すことはできない。人生って思ったよりもイジワルだ。
思えば学生時代からそうだったかもしれない――。
入った学校が半分は親が金持ちの”レール乗ってる系”息子や娘ばっかりで、一般人のアタシは浮いていたし、大学のボランティアサークルは飲みサーで逮捕者も出た。初めての彼氏には何度も突き飛ばされて網戸が破けた。敷金礼金戻ってこなかっただから!
好きでもない同僚に誘われてヨガ教室に通うことになった。
「痩せるよ。それに生理痛とかもよくなる」
アタシの抱える悩みの何を知ってるの、と思いながら、断るのも癪だし、無駄に溜まっていく貯金が虚しくなってきていた30歳の夏。
ヨガに通うことにした。
家の1階を改装した、頬のこけたおばさん、もといお姉さん、もとい川村さんがやっている。しゃべり方や妙にポジティブでLINEニュースぐらい薄い話は嫌いだけど、汗をかき始めたらそんなことどうでもよくなる。
そう、ヨガって意外と無心になれるし、高みを目指せる。
で、なんで男もいるの。男っぽい容姿なのに笑い方が独特でしなやかな体使いが頭から離れない。吉上さん、吉上秀三郎さん。三男坊?
このハーレムをどう思っているのか分からないが、アタシたちに、少なくともアタシに興味はなさそうだ。
そんなある日の帰り道。アタシが置いてきたタオルを「忘れ物です」と追ってきた。吉上さんの私服をまじまじと見た。惚れていた。