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高崎前橋友好条約は両毛線のホームで

ねぇさつき。
予備校で見つけた恋は絶対報われないよ、と一つの上のバレー部の先輩に言われた。
そもそも勉強するところじゃんと、大人びた韓流メイクが似合う大学生に急変身した先輩の言うことは、少し信憑性がある。

でも。
そんなことはたぶん別れたときにしか実感しないんだろうと思う。

だってだって。
私は今、ラブラブだから――。

高崎にある予備校で彼氏とは出会った。

当初は、本命だったお茶の水女子大学に落ちて、他の私立も全敗で、この世の終わりみたいな気持ちでむっちゃやけ食いして、3キロ太った。
でも、すぐに気持ちを切り替えて、ママに勧められた高崎駅近くの予備校に通うことになった。
そしたらストレスで2キロやせた。日本史、しんどすぎ。文系なのかな、私って。
でもまだ結果プラス1キロ。ほぼ元通りだ。

私が住む前橋から高崎まで、自転車ではちょっと遠い。でも両毛線で向かうにはちょっとめんどくさいし、恥ずかしい。

それは県民の共通認識のはずだけど、彼氏と出会ってから生活は一変した。

朝は、両毛線で高崎駅の出口で待ち合わせ。
コーヒーショップでちょっと勉強をして、1コマ目の授業を受ける。
その朝の時間がとてつもなく好きだったから、両毛線での通学も苦じゃなかった。

ちなみに、彼氏は高崎の進学校出身で、前橋にはほとんど行ったことがなく、私は私で前橋の女子校出身で高崎駅周辺に行くよりは「けやきウォーク前橋」に行くタイプだった。

そんなこともあって、二人が田舎の駅でいちゃついていても身内バレする心配がなかったのだ。ガッハハ。

いや――。
途中からは、女子校時代の友達で同じ浪人生の子たちに気づかれてガン見されたり、インスタでチクチク言われたりもしたけれど「知らね」「愛が勝つし」と思って、やり過ごしていた。

それはそれは。
二人で見る大仏はロマンチックだった。二人で浴びるからっ風は心地よかった。
今までそんなこと感じたこともないのに。

でも、パパに怒られた――。

意味不明!
「高崎の彼氏がいるって聞いたけど、お前進学大丈夫か」
もっと意味不明!!

簡単に説明すると、前橋育ちのパパは、高崎の進学校出身の彼氏が気に食わないらしい。

私はよく知らなかったけれど、高崎と前橋って仲が悪いらしい。

でも、それと私と彼氏のことは関係ないし、成績が下がっているのも私の努力不足だし、正直彼氏が群馬大学の医学部目指しているから、東京行く意味あんのかなぁとも思っている。
頑張ったら遊びに行けるし。

つまり、いろいろとこんがらがって、まとわりついて、私の人生はピンチにあるのだ。


ピンチのときほど人は燃えるというが、それはホント。
両毛線のプラットフォームでキスしちゃった。
生まれて初めてのキス。
と彼氏に言っているけど、嘘。

きっと私は志望校に合格しないだろうとは思う。

でも、少しでいいから高崎と前橋が仲良くなってくれたら、それでいい。



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