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太宰治を読んでいます

今、太宰治にはまっている。

学生の頃は全く読まなかったのだ。

私は学生時代、恋愛で振られることなどはあっても、深く挫折するとか、絶望するとか自己嫌悪とかがない、それこそ恥ずかしい人間だったと50過ぎて思う。

その当時は、自己啓発本や成功者のノンフィクション、明るい話や小説や、読んでも三島由紀夫などの本であった。太宰治の本はいじいじとしていて、読んでいても自分の人生の進歩につながるような気がしなかったので手に取りたくなかった。

友人知人は大卒でたとえば30年以上同じ会社につとめてボーナスや年金にも困らないような生活を送っている人が多い。自分はといえば、極論すると、吉本興業にいるさゆりかつみのさゆりさんではないが、それまであったことのない世界の夫にひっかかり毎日おもしろいだけの何にも実にならない暮らしをしばらく送り、結婚生活が15年で破綻した。結婚する前も会社は2、3社かわっている。コミュニケーション能力が優れているのではと勘違いしていた。好感度は全くなかったのだ。ただ強引なだけであった。周りの同期との年収の差は開くばかりだ。6年前関東にかえってきてからも一回転職している。現在一番ランクの低い平社員であるが、この年なのにうまくいかないことがたくさんあって毎日泣いていたときもある。とにかく今日一日何とか終わって明日のことはもう考えないでおこうと思いながら寝た。麻薬患者じゃないが、今日は辞めたいと言い出せずに今日も一日定時をなんとかむかえたなあと思って床についていた時期もある。
最近、偶然NHKで小栗旬さんのプロフェッショナルを見た。鎌倉殿の13人の主役だ。輝かしい人生で、うらやましいと思われる役者さんなのではと思っていた。ロケ2年間張り付いていた方がいての完成したプロフェッショナルの画像。小栗旬さんでさえこんなにがんばったり悩んだりしてるんだなあとぼーっと見ていた。彼が人間失格に出演した映像が少しだけあった。ああ、そういえば興味があったのに観ていなかったなあ。と思ってnetflixでやっとみた。異常にひきつけられた。ああ。私も恥の多い人生を送ってきたのだ。やっと気づいたのだ。大泉洋さんが主演のグッドバイを見たり、もちろん小説も仕入れたり読んだりしている。太宰治はこんなに赤裸々に生活の糧とはいえ小説を書いて結果的には人間はたくさん悩みがつきないことだと教えてくれたのだ。身を削るように文章を書き、ノンフィクションに近い文学を与えてくれているが本人はとても生きにくかったに違いない。堕ちた人間や悩みの多い人間が太宰治の文学に出会うと、自分だけが怠け者であったり悩んでいたり嘘をついたりするものではなく、これも人間の一面なのだと突き付けられまた安心させられるのではないか。むろん現代では不倫や心中などはもうありえないし、当時もそれはそれはスキャンダラスだったとは思うし、家族は本当に大変だったろうと思う。しかし、私にとってはうつ病の薬やカウンセリングぐらいの威力がある。感謝しかない。もっとも太宰さんは感謝されるために書いたのではないが。しかしながら結果としてはこれだけ多くの人が太宰の作品にのめりこむ何かをもっている。これからしばらくは太宰治フェアが私の人生で繰り広げられると思う。

もしかするとお読みになった方に心配をさせてしまう記事になってしまったかもしれませんが、現在はわりと元気に過ごしているのでご安心を。でもフェアは絶賛開催中です。

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