【巨人の肩の上から #4】 -花は盛りに?
春が来て、外を歩けば咲き誇る桜の花が否が応でも目に入ってしまう、そんな時期が訪れた。この時期に毎年、決まって思い出すのが伊勢物語の82段、「渚の院」での和歌のやりとりである。
渚の院という場所で鷹狩りとは名ばかりの花見会をわいわいと開いていたとき、惟喬の親王の付き添いであった馬頭(有名な歌の名人、在原業平のことだと言われている)が桜の花を見てこんな歌を詠む。
「もしこの世の中に桜の花なんてものがなかったのならば、春の人々の心はおだやかだっただろうに」
満開の桜の花を見ると