チームに"Value(バリュー)"があるからフルスイングできる!の話
おはようございます。せんとです。
“Value(バリュー)”というキーワードを個人的によく耳にするようになりました。直訳すると「価値、値段」などを表す英語ですが、会社経営では、違った意味合いで使われるキーワードです。
現在、私はロンドンにあるスタートアップで働いているます。今日は弊社が毎週行っている "1on1(ワンオンワン)" や "バリューフィードバック" というミーティングを例に出しながら、今日は"Value"について自分なりに整理したいと思います。
Value(バリュー)とは?
辞書的な意味は、Google!*1していただければ沢山出てきます。自分もいくつか日英の説明サイトを見ましたが、しっくりきたのはCrewという社内コミュニケーションに関してのアプリをデザインしている会社のものでした。
Company values are the fundamental belief upon which your business and its behavior are based. They are the guiding principles that your business uses to manage its internal affairs as well as its relationship with customers.
コーポレート「バリュー」とは、ビジネスや日々の振る舞いに直結している(根底にある)信念/信条のこと。社内の業務や社外の顧客との関係性を作る上で、ガイドラインとなるような信念のこと。(意訳)
不安が残る英訳ですが、Valueは信念(=気持ち/マインドセット)であり、「自分が意思決定や行動をする際に価値を置く軸(価値観)」です。VisionやMissionが会社の方向性や目的地を示すものであれば、Valueはメンバーの言動の基準を示すものとして僕は理解しています。
弊社のValueは?
僕はロンドンにあるUnderTheDoormatという民泊スタートアップで働いています。Airbnb(エアビー)のような会社だといえば、イメージがつきやすいでしょうか。ロンドンの不動産会社や投資家などとパートナーシップを組み「誰かのお家に泊まれる少しリッチなサービス」を提供しています。
"Be Open"
"Inspire Trust"
"Share Experience"
"Stay Authentic"
弊社のホワイトボードには、この4つのValueがいつも書かれています。正直、特段、個人的に思い入れがある言葉ではないです。が、入社の際に人事部のHannahがから、この4つのValueがどういう経緯でできたのかの歴史を聞き、それぞれのValueが「どんな具体的な振る舞いやアクションに繋がるのか」を濃い目にディスカッションしました。
バリューウォールのイメージ:アマゾン本社より
(社内の写真は僕の判断で非公開)
トレーニングを担当してくれたHannahに強調されたのは「Valueはマインドセット(Mindset)であると同時に、アクションが伴ってこそ意味があるものだよ」という上の太線で強調したものでした。Valueは目には見えないマインドだからこそ、Valueに紐づいた行動が評価されるということです。
Valueの定着:“1on1”と"Value Feedback"という週2回のミーティング
Valueを軸にしたフィードバックを1on1とValuationでは相互にする
(イメージ:Team up magazine)
4つValueのある弊社ですが、それに加えて週2回のValueに関して考える機会があります。1つ目は、自分の上司との1on1、もう一つは、Value Feedback(Valuation)と呼ばれるミーティングです。
“1on1"という仕組みは、日本でもYahoo!が導入して有名になりました。仕事の話題に限らず様々な話題を、上司や同僚とディスカッションする時間のことです。僕のマネージャーのKateは1on1のときに以下のようなValueに紐づいたフィードバックをくれます。
Yutaは、AAAの打ち合わせの時に、XXXという発言をしていて
あれば、"Be Open"(Value)とアラインしていてよかったよ!
Yutaのクライアント先でのAAAの行動は、すごく良いなと思ったんだけれど
今までにはない"Share Expeirence"の形だと気が付いたよ!
上記のように、Valueに沿っている良い行動を再度指摘してくれたり、もしくは、今までになり言動で効果があったもので、自分のValueについて変化した経験などをシェアしてくれます。(1on1での気持ちのシェア自体もShare ExperienceというValueに当てはまるな、と書いていて思いました)。
"Value Feedback"は、もう少し”Value”にフォーカスした時間で、Weeklyミーティングが終わった後に10分程度、Valueに沿った具体的な誰かの行動をお互いにシェアしあうというものです。一緒に働く同僚で、その人の行動や言動が会社のValueに沿っていた、ValueをEmbody(体現していた)というものを、具体的なシチュエーションとともにシェアします。
「You embodied our value!!」と評価してもらった!
実は、僕は今週のValueミーティングで同僚からメンションしてもらうことがありました。ここでは、それをシェアしたいと思います。
金曜日の夕方、僕の働いているオフィスに大きめの包を持った宅配のお兄さんがやってきました。珍しく大きめの宅配物だったので「お、誰だそんな大きいの頼んだの?」と思って僕は見ていました。しかし、その先には、鍵がないと開けられないドアが...
ちょっとお兄さんが大変そうになることが予想できたので、パッと席を立ち上がり、彼が鍵を取り出す時間だけ包みを抱えてあげました。(以下、宅=宅配のお兄さん)
僕:Hi, May I help you to hold your box?
宅:Lovely, yes please. Thank you.
僕:No pro.
【扉の鍵を開ける:2~3秒】
宅:Thank you so much! Wow that is really helpful!
僕:You are welcome have a nice weekend.(笑顔)
同僚の一人からこの時のアクションが"Inspire Trust"と"Be Open"のValueが体現されていたとして、メンションしてもらいました。Be Openだった理由は、初見の宅配のお兄さんへの優しくさ、Inspire Trustは、そのアクションが他のステイクホルダーとの信頼関係醸造にも繋がるアナロジーという理由でした。些細なことですが、そういうところを丁寧にValueと紡いでいく作業のような気がします。
良いバリューは社内の「共通言語」になる
社内でのミーティングに出ていて気がついたことがあります。それは、チームメンバー同士が「共通言語」としてValueを使っていることです。Valueが、日々の仕事に紐づくものであるので、日常会話で使われることは、当たり前といえば当たり前なのです。が、社訓や社是のようなものはどうしても壁にかかった飾られた崇高なものになりがちです。
しかしながら、Valueはカジュアルに遊び心を持って会話の中で使われるぐらいが良いと思います。例えば、週末に気になっている女の子とデートをしたのよ!という同僚がいるときは、みんながこぞって "Tell us more! Be open!! "と言って、茶化しながらノロケ話を聞いたりします。Valueで言葉遊び始めるとそれの定着がみられているとも解釈できます。
もちろん、全ての行動がValueに囚われる必要はありませんが、大切な決断や行動をする際には、それが無意識に染み付いているような状態があることが理想だと思います。
Valueは意思決定をサポートする
Valueが存在していた方がいいと思う理由は、一人ひとりのメンバーが意思決定をしやすくなるからです。僕が上で挙げた「宅配のおにいさん」の例もそうですが、Valueというのはその組織における「価値基準」の役割も果たします。Inspire TrustというValueがあるからこそ、目の前のお兄さんを手伝うというアクションが生まれた(もしくは、生まれやすくなった)のかもしれないなと思います。Valueという「価値基準」に照らし合わせたときに、自分はどう行動するべきなのかという指標を与えてくれる。それがValueの役割だと思います。
Valueがあるとないかで「結果の捉え方」が大きく変わる
Valueが有ると無いかでの大きな違いは、そのチームや組織が「結果」というものをどう捉えるのか、というところに現れると思います。
上の表は、僕なりにValueがある組織とそうでない組織の「結果の捉え方」を比べてみたものです。いい結果にせよ、悪い結果にせよ、一貫した価値基準(Value)がある組織では、そのValueに照らし合わせ、次のアクションを考えることができます。また、同じ基準を共有する仲間同士のフィードバックが可能です。
しかし、Valueがない組織では、メンバー同士の間に共通する価値基準や評価基準は公式には存在していません。それは、結果は個人の能力や努力に大きく委ねられることになります。もちろん、Valueがなくてもフィードバックなどはできます。しかし「どういう考えや思想、価値基準があってそういうアクションを取ったのか」ということを都度都度、深掘りする必要があり、フィードバックに対しての時間的コストが増加します。
「結果」を振り返る上で、共通の価値基準があることはとても大切であり、具体的なネクストステップの策定につながります。「もっとこのValueを意識して行動してみよう」「その行動はValueと沿っていないから、今後はこうしてみよう」などValueに基づいたフィードバックをもらうことができます。
「関係の質」を上げる上でもValueの存在は偉大?
これはMITのダニエル・キムが提唱した「成功の循環モデル」でも指摘されていますが、良い結果を出すためには、メンバー同士がお互いにフィードバックし会える環境やその基準を設定することがとても大切です。
関係性の質の向上が、最終的な結果の質を上げる
(イメージ:IT エグゼクティブ メディア)
Valueの設定により明確な価値基準ができた組織では「関係の質」が向上しそれに伴い「思考の質」にポジティブな影響を及ぼします。そして、勇気を持った自発的な行動(行動の質)につながり、結果的に「結果の質」を向上させることにつながります。
関係性の質は突き詰めるところ、コミュニケーションです。統一された価値基準(Value)はコミュニケーションの質を上げるために効果的な手段だと思います。
Valueという縛り/制約?があることで創造的になる
「そんな決まりがあると、行動しにくくなるのでは?」「会社が全て決めていては、創造的に活動できないのでは?」という感情もでてきそうです。僕も当初はそういう気持ちもありました。しかし、体験していると、実はそういう生きづらさ、みたいなものを感じることはありません。
むしろ、そういう「骨組み/制約」があるからこそ、新しいものや、創造的な提案ができるのではないのかと思います。例えば、ツイッターであれば140文字以内でしか書けない、スナップチャットであれば6秒間しか表示されない、というのも、行動を制約する仕掛けであると同時に、それにより様々な工夫を促進する役割も果たしていたります。
実はこれは、アムステルダム大学のジェニナ・マルグクらによる研究でも、
「障害物や制約などがあることによって、人の精神的な視界が広がる」
ということが指摘されていたます。少し解釈を広げればValueは自分が創造的に活動するための土壌となり、自分をサポートしてくれるものだとも言えます。大事なことは、Valueを「この通りに行動しないといけない運転のマニュアル」として捉えるのではなく「自分なりの創意工夫と解釈が可能な加速装置のようなもの」と考えることなのかなと思います。
Valueを浸透させるために大切なこと:「しつこさ」
社訓のようなものは、どれだけ現場が創っても、CEOやリーダーシップが使わなければ、どんどん廃れていくものだと思います。その証拠に、僕自身も東北でボランティアをしていたときに、行動指針のようなものがありましたが、リーダー(僕)がそれを意識しなくなった瞬間に、そのバリューは風化していきました。
バリューを浸透させる上で、リーダーが重ねて使用し続けることが、とても大事です。ジャイアンツの坂本選手がヤクルトスワローズの宮本選手との守備力強化のための合同自主トレをしていたときのインタビューで
意識しているうちは、身に付いていない
無意識で使えるレベルになって初めて試合で使えるんです
とコメントしていました。野球選手にとっての守備の技術は、会社におけるValueと同じような位置付けです。守備技術同様、Valueは良いパフォーマンスをするために必要な「スキル」です。
会社を野球チームに置き換えてみれば"Value"は"チーム内での決め事"のようなものだと思います。「うちはこういうチームで、こういうプレーを評価するよ!」と監督が明確にしているチームほど結束力が強いはずです。
2ストライクまでは、フルスイングしよう!
でも、追い込まれたら3−2のフルカウントまで投手に球数を投げさせよう!
野球でも、こういう「決まりごと」があるからこそ、それまでのプロセスで自分なりにどう個性を発揮しようか、と考えることができます。また、失敗を恐れずにフルスイングをすることができます。
全員がどういうプレーがチームの勝利に必要なのかを理解していれば、自然と練習の中からもそれを意識したレベルアップが図られるようになります。
会社におけるValueも同じ存在で、社員全員が意識することで、それに向けてフルスイングすることができるものだと思います。そして、定着するまでは、繰り返し、言い聞かし、体現し続け、それを評価し続けるべきだと思います。
…
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以上、今日はValueについて、自分が今勤めている会社の例を出しながら整理してみました。手探りなところが多く、Valueとはどういうものなのか掴みきれていないのが正直なところです。
書きながら思ったことはValueは多くのメンバーに関わるものであるからこそ、Valueを考えるプロセスにはメンバーの意思が反映されていた方が良いのだろうと思いました。
また、Feedbackやダイアログのような対話の仕組みがあってこそワークするフレームワークなのかなと思います。
加えて、永続的なValueは存在していなく、定期的にUpdateしていくような場を作ることが、どんな組織には大切なのだと思います。
個人にも自分の立ち位置を振り返るチェックインが必要なように、組織にとっては、Valueについて考える時間が、そのような意味があるのではないのかな、と思いました。
結局、あとは、しつこくやることですね。笑
しつこさ、しつこさ。
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*1. Yahoo!みたいに書いてみました。