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尼僧の懺悔

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女は灰になっても女。 女であることは業なのか。 これは堕落なのか自我を取り戻す旅なのか。
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#尼さん

尼僧の懺悔0

私は今から10年ほど前、尼僧を辞めた。 直接の原因は適応障害になって、心身共にその生活を維…

尼僧の懺悔1

その頃の毎日は、将来の夢や理想などはなく、ただひたすらに今があるだけだった。 出家から5…

尼僧の懺悔2

道場修業時代は、僧侶としての基礎を教育されるとともに、僧侶の裏の慣習にも親しむことになる…

尼僧の懺悔4

男と寝て、罪悪感はなかったのかと言われれば、それは確かにあった。 どう方便を回しても、破…

尼僧の懺悔5

出家同士の恋は先がない。 どこぞの子弟である彼も、師匠の鶴の一声でどこかの寺へ婿養子に入…

尼僧の懺悔6

どんなものでも、終わりが来る。 それがこの世の理である。 私の表側の毎日は、少しずつ荒ん…

尼僧の懺悔7

転落のスタートは体が壊れはじめたことだった。 長引く咳と胃の不調で内科を受診したところ、胃カメラをすすめられて、食道がヘルニアを起こしていると言われた。 逆流性食道炎と診断されて、服薬と食事制限が始まった。 もうなおらない病だと医者に宣言され、その事実を受けとめきれないまま、体重は半年で10キロ落ちた。 体力が落ちると些末な病にかかりやすくなる。 アレルギーやら膀胱炎、膵炎と病院通いが日課になり、寺に帰っても寝ていることが増えた。 寝ていても病は一向に治らない。 そう簡

尼僧の懺悔8

いつからだろうか、寺の太い梁を見ると首を吊りたくなった。 逆流症食道炎になって以降、瑣末…

尼僧の懺悔9

終わりの日は突然にやってくる。 それは実に些細なことが始まりだけれど、ずっと抱えていた小…

尼僧の懺悔10

実家に戻った私は、とにかく眠った。 この先どうなるのか、という不安が時々心を掠めるのだが…

尼僧の懺悔11

久々に自坊に戻っても、私はあいかわらず病人のままであった。 セクハラ加害者である兄弟子も…

尼僧の懺悔12

師匠と数回の話し合いを経て、一か月ほど後に私は再び実家へと返されることになった。 尼僧を…

尼僧の懺悔13

実家に再び戻った私は、絶望感とともに同じような生活を送っていた。 仕事もなく、社会の歯車…

尼僧の懺悔14

彼との別れも唐突だった。 遠距離の彼からある日電話が来て、見合いの話が来たから別れてくれと告げられた。 突然のことで涙は出たが、最初から終わりがあるとわかっていたので、未練はなかった。 わかりきってはいたのだが、私が彼の伴侶として選ばれることはない。 それならばなおさら、都合良く二股をされてたまるか、という気持ちだった。 もうその電話で最後にしようと思ったが、辛い時代を支えた彼への感謝の気持ちもあって、最後に一度だけ会うことを約束して別れることにした。 感傷的な気持ちで最