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私も思わず”言葉の国”に行ってみたくなったドラマ『舟を編む~私、辞書つくります~』第3話

ドラマ『舟を編む~私、辞書つくります~』が今最高に面白く、一週間がとにかく待ち遠しいです。”言葉”に対する登場人物たちの会話がどれもこれも軽妙で興味深く、心がザワザワします。

馬締の家に居候させてもらうことになったみどり。ソファーの置き場所を指示するみどりとのやり取り一つとっても、いちいち一つ一つの言葉に引っかかる馬締。

見かねた馬締の奥さん・香具矢に「段ボールをくくっておいて」と言われ、みどりに「めっちゃキレイにしばってくれてる」と言われ…。そこから「しばる」と「くくる」という言葉についてあれこれ悩み始める馬締。

そんな馬締を見て香具矢は「また”言葉の国”に行ってしまったのね」と。普段は二人でいてもあまり話したりしないけれど、馬締からアプローチされた時に便せん15枚にも渡るラブレターをもらったエピソードをみどりに話してくれました。その後の香具矢の言葉は、馬締夫婦の関係性を物語る実に素敵なものでした。

「この人なら、私も好きな時に”料理の国”に行って帰って来れるかもって。好き勝手にどこへでも行きたいけど、好き勝手に帰っても来たいんだよね。帰って来たら、そこには誰かいてほしい。わがままなの、私」

ドラマ『舟を編む~私、辞書つくります~』第3話より

思わずメモろうとするみどり。”恋愛の語釈”を「恋は自分で愛は相手」と考えてきたけれど「自分も相手も同時に…これは震える!」というみどり。そんなみどりに香具矢は「すごい!もうみっちゃんみたいになってる」と。みどりもすっかり”言葉の魔力”に取りつかれ始めたみたいですね。

編集会議で夏目漱石の「こころ」の話題になり。松本先生は、馬締に「三角関係のドロドロを体験しなさい」と言ったことがあるとか。すべては辞書作りのため。「実践⇔思考」の飽くなき繰り返しが必要で「自分のものになっていない言葉は正しく解釈できません」と(笑)。

みどりは「こころ」の感想を聞かれ「遺書長すぎて、怖って感じで」と。すると「遺書長すぎて、マジウケた」とみどりと同じように感想を言った編集部員が以前いたことが判明しました。その人は「今旅に出ています。彼は″西行″ですので」と馬締。この馬締が”西行”と呼ぶ人が今回大活躍することになるわけです。

辞書には″人名″も載せることがあるわけですが、日本人の名前は亡くなってから載せるのが決まり。なぜなら、生きている間にはその人が変化する可能性があるからという理由だそうで。みどりは「そっか…。変わるってことなんだ。生きるって」と。このひと言は馬締をはじめ、みんなの心に残る言葉になりました。

ちなみに現代語などの「国語項目」の語釈については編集部、固有名詞などの専門性の高い「百科項目」については、実に300名以上の人たちに執筆依頼をするそうです。

今回「水木しげる」の語釈の執筆依頼をした秋野教授からの原稿があまりにも長すぎて、とても辞書に掲載できるものではないというのが第3話のストーリーの中心でした。

みどりも毎日言葉と向き合っているから″語釈の勘″があるはずだという馬締。二人で秋野教授の執筆原稿を端的に「整える」作業を始めました。「何を知りたいですか?知ることができて嬉しい情報はどれでしょう?」そんな風に原稿から言葉を拾う作業をして、辞書に掲載する程度のコンパクトな長さに整えてみました。

その原稿を読んだ秋野教授は激おこ!たまたま編集部にみどりしかいなかった日にその事件が起こり、みどりは途方に暮れました。出張の馬締はスマホを持っていなくて連絡は取れないし…。みどりが謝罪に行ったけれど秋野教授の怒りは収まらず。

そんな時救世主・宣伝部の向井理演じる西岡が登場!彼こそが馬締のいうところの”もう一人の辞書編集部員”。みどりと西岡が話をするうちに、秋野教授にとって「水木しげる」は「不幸な少年時代を水木しげるに救われた」というほど思い入れの強すぎる存在だということが分かりました。

そして編集部に残してあった馬締から香具矢への便せん15枚のラブレターを西岡が見せてくれました。漢詩も入った難解なラブレターだけれど、香具矢への想い溢れるそのラブレターに「読むと元気が出ますね」とみどり。

「きっしー『こころ』って読んだ?
全文読んで、あの遺書ってさ。すげぇ懐いてくれた若いやつに自分の全部を伝えようとして書いた手紙なんだよね。ぶっちゃけ俺、泣いちゃったよ。秋野先生もそうでしょ。自分の大好きな水木先生の全部を伝えたいって思ったら、そりゃ足りるわけないよ。辞書のちっちゃなスペースなんて」

ドラマ『舟を編む~私、辞書つくります~』第3話より

今は辞書編集部員ではない自分がでしゃばるのは…と思っていた西岡がもう一度一緒に秋野教授の元へ行こうと。

秋野教授は「水木しげる」への思いの丈をみどりと西岡にぶつけました。その後の秋野教授と西岡のやり取りは、みどりと馬締が秋野教授の執筆原稿を短く整えようとした時に、馬締がみどりに言った言葉とまったく同じでした。

「辞書がいったいどういう存在なのか?」をこれほど見事に表現した言葉はないというもので、私は鳥肌が立ちました。

「だったら辞書はなんのために?」
「入り口です。辞書は入り口にすぎません。ですが先生、入り口がなければ入れない世界があるんです。先生、想像して見ていただけませんか。あなたと同じ思いを抱えた少年がある日どこかで”水木しげる”という言葉を耳にしたとします。その少年は誰かにその言葉の意味を聞くことも、ネットで調べることもできない。彼にできるのは辞書を引くこと」
「先生、彼に入り口をください。たった数行。それでもその入り口は確かに世界に繋がっているんです。その入り口にふさわしい言葉は、”水木しげる”…と」
「…漫画家である。代表作は『ゲゲゲの鬼太郎』」

ドラマ『舟を編む~私、辞書つくります~』第3話より

恐らく秋野教授はみどりと馬締が整えた語釈にOKを出すのではないでしょうか。「辞書編集に私情や忖度は持ち込むべきではありません。でも辞書を引くのは人間です。誰がどんな状況で何を求めて辞書を引くのか。それは常に意識しなくてはと思っています」と言った馬締の言葉も西岡の言葉と重なりました。

みどりが「どうして西岡さんが″西行″なんですか?」と馬締に聞くと、西岡と馬締が昔同じように”西行”という語釈を二人で考えた時のやり取りを見せてくれました。

そこには「遍歴する人。流れ者」と。これは西岡が考えた語釈で、辞書に掲載したそうです。”遍歴”という言葉をさらに辞書で引くみどり。「諸国を回って歩くこと。いろいろな経験をすること」この言葉を見て納得するみどり。

辞書の紙作りを任されそうになったみどりが「私にはまだ早い」と一度は断ったものの、自ら「紙、担当させてください。したいです」と。これは「生ることは変化すること」と意味付け、”西行”のように「いろいろな経験をすること」を望むようになったみどりの気持ちの表れだったんでしょうね。

毎回ワクワクが止まらないドラマ『舟を編む~私、辞書つくります~』。私も”言葉の国”に行ってみたくなりました(笑)!

長い文章最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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