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”国際系” note まとめ

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This magazine curates notes relating to stuffs between globalness and localness.
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#中国

湖畔篆刻閑話 #1「中国での書の復権」和田廣幸

ヘッダー画像:無為 2019年 道路曰遠侍前曰希秋風曰起吾志曰悲  四半世紀に及ぶ北京での生活に終止符を打ち、日本の琵琶湖畔のこの地に移って来て、早いもので既に5年が経とうとしています。 「有山有水」(yǒu shān yǒu shuǐ:山あり水あり)のこの地は、中国の首都・北京での「生き馬の目を抜く」ような日々の生活とは打って変わり、穏やかな自然にすっぽりと抱かれた、まさに陶淵明の「帰去来辞」さながらの生活といえるでしょう。  篆刻の聖地ともいえる「西泠印社」は、昨年建

【新疆ウイグル旅行記】#4ウルムチ路地裏百景

2023年12月31日、宿泊していたトルファン大飯店からの朝日を撮影。2泊したトルファンの街を離れ、ウルムチへ向かう日である。 一つ前の記事(トルファングルメ編)はこちら。 ウルムチ駅私を乗せた动车はほぼ定刻通り、ウルムチ駅に到着。駅出口には等間隔で地元警官が並び、露骨に厳戒態勢だった。駅を出ると乾燥地帯のトルファンとは打って変わって雪国であった。ウルムチ駅は郊外に建設された新駅のため、市街地まで移動のため、バス停を探した。 「生粋のウルムチ人は冷たい」というブログ記事を

【ニッポンの世界史】#25 越境する中国史:陳舜臣のユーラシア的想像力

 この評伝で紹介されているのは、1970年代の大衆歴史ブームを土壌として、日本を超える視点から、イスラムと中国を繋ぐ立場を果たした作家、陳舜臣(1924〜2008)です。  この陳舜臣という人が、「ニッポンの世界史」の再定義に、どのようなかかわりをもったか、今回はこれをみていくことにしましょう。 中国史の案内人  陳の魅力をひとことでいえば、まるで見てきたかのように中国の歴史を解き明かし、現代世界とのつながりを意識させるところにあります。    本籍は台湾にありましたが

クーデターから1000日のミャンマー(その4:最終回)

その村の噂を聞いたのは、新型コロナウイルスが発生する前年の2019年だった。村には幅30メートルにも満たない川が流れており、その川を渡るとそこはタイである。シュエコッコと名付けられたこの村はカレン州に位置し、中国の開発会社が一帯一路構想の一環として150億ドルを投じてスマートシティを建設するという。この開発会社がYouTubeで公開した映像には、未来のハイテク都市の姿が映し出されていた。 ▦ 違法ビジネスの巣窟 カレン州はタイに隣接し、国境近くの多くの地域は、ミャンマー独立

鄭成功とは、何者か? "今"と"過去"をつなぐ世界史 Vol.14

"今"と"過去"をつなぐ世界史(14) 1500〜1650年  台湾に「開山王廟」という廟がある。  鄭成功(ていせいこう)という人物が、オランダを台湾から駆逐したのを記念して、死去した1662年に創建された祠だ。  その後、1875年には清朝の大臣によって新しい祠が建てられ、1895年に台湾が下関条約によって日本の統治下に入ると、その翌年には鄭成功を祭神とする神社に改変、その名も「開山神社」と変更された。  さらに第二次世界大戦後、ほかの神社と同様、取り壊しの対象となり

週刊金曜日コラム「新龍中国」に執筆した「実体のない『台湾独立』を論じるのはやめよう」の全文公開

週刊金曜日9月29日号54-55Pに掲載された私のコラム「新龍中国」で執筆した「実体のない『台湾独立』を論じるのはやめよう」の全文を、編集部の了解のもと、こちらで公開いたします。日本には、台湾を想像だけで「確信」があるように語ってしまう知識人がけっこういるのですが、その悪しきケースの一つが「台湾独立」をめぐる論議だと思います。 (以下本文) 台湾有事論議が活発になるに従って、日本ではしばしば台湾の「独立勢力」ついて、いわゆる「リベラル」の方々を中心に、おかしな話を耳にする

趣味のモノづくり。赴任中に会いたかった神エンジニアJasonに会ってきた話。

子供が産まれ、子育てのお手伝いに追われて色々な更新が滞っているnorippyです。いやぁ子育て大変ですね。子供が全く寝ない。奥さんに似てショートスリーパーのようです。寝る時間が必要ないので、将来は勉強やら趣味に時間を費やすことでしょう。羨ましい。 実は中国駐在をすると決まった時にやりたいと思っていたことの1つにネットでしかやり取りをしたことがない、顔も知らない中国人エンジニアに会いに行くというのがありました。 久しぶりのnoteは、この中国人エンジニアJasonに会いに行っ

北京──34年目の初夏

 北京、天安門広場。中国の歴史の栄枯盛衰を見守ってきたこの広場は34年前の6月4日、中国史にとって一番のタブーとなる殺戮の舞台になった。  発端は胡耀邦総書記の急死に伴う名誉回復運動だった。名誉回復運動は多くの学生運動家に火を付け、学生内部での対立を産み出しながら、中国の民主化を求める大きな潮流へと変容していく(この辺りは安田峰俊氏の『八九六四』に詳しい)。  中国の中央指導部はこの運動を、天安門広場とその周辺に対する人民解放軍の投入という形で幕引きを図った。中国はこれを

【いまどきの世界史教科書?】増えた用語 消えた用語

3月も残りわずかとなりましたが、新年度の授業準備をあれこれとしています。 あたらしい教科書が届くと、前の版との違いをなんとなく確認するのが習わし。とくに今回は新しく設定された「世界史探究」という科目があるため、わけがちがいます。気合を入れて異同をチェックしてみると、これが結構変わっている。 たとえば、 といった具合です。 今回は索引をベースにし、山川出版社の『詳説世界史B』の最新の版と『詳説世界史探究』を比べ、消えた用語と増えた用語を確認しました。 デジタルで全文検

バンコクからの旅日記 (42) 中国|成都|チベット人街を歩く

2018年10月の中国四川省成都。成都といえばチベット行きの中継地。 武候祠の近くにはチベット人街があります。 私の好きなエッセイスト、渡辺一枝さん(椎名誠氏夫人)のチベット関連の著書を愛読していたので成都に来たらここに行ってみたかったのです。 武候祠大通りを横断し、反対側にいくと三国志の世界から全く異なる雰囲気となる。 チベット独特の民芸品、装飾品を売るお店がずらっと並んでいます。渋い色目の中国古街には見られない黄色やオレンジ色がいっぱい。 成都からチベットへ向かう人

朝花夕拾。人民文学出版社が経営する北京のカフェの文豪カフェラテを飲みたい

新しくできた面白いカフェを見つけました。今日は中国の歴史ある国有出版社の人民文学出版社が運営しているカフェの「朝花夕拾」を紹介します。 店のフルネームは「朝花夕拾文創咖啡供销社」。朝花夕拾というのは魯迅の有名なエッセイ集で人民文学出版者が発行した本です。文創というのは簡単にいえば独自デザインのグッズがたくさん置いてあるお店となります。また、供销社は購買販売協同組合という意味で、言い方自体は改革開放前の時代を感じられます。 ↑住所も人民文学出版社と一致しています。 ↑店自

ダンジョンみたいな上海のローカル市場に潜り込む

ローカル市場が好きだ。付き合ってください。告白したくなるぐらい好きで、胸は常にときめいている。ローカル市場の雑多で荒々しく不衛生で薄暗い点をまるっと含めて大好きだ。悪口しか言っていないが、むしろそれが醍醐味で愛おしい。 生鮮品や加工食品など、庶民の台所的な役割りをもつ市場を、中国語で「菜市场」または「菜场」と呼ぶ。「菜」は食材や料理などを指し「市场」は日本語の市場と同じ、この二つが合わさり「食料品市場」の意味となる。 日本のテレビで見る上海は大都会のイメージが強いが、住宅

端午の節句の過ごし方と粽子の食べ方でもこんなに地域差がある中国文化の面白さ

今週の金曜日は旧暦の5月5日で端午の節句となり、週末と合わせて三連休でした。というわけで、今日のグルメは店情報ではなく最近の端午の節句の食事トレンドを紹介したいと思います。 まずは中国の端午についての雑談情報を少し。 端午の節句は数千年前の天象崇拝から発祥され、星の位置から見て龍が空に飛んでいる縁起のいい日だという説があります。また、戦国時代の有名な詩人である屈原がこの日に川に飛び降りて自殺したから彼を記念するためにある日でもあります。それから長年の歴史を経て、今の中国で

留学や海外移住を検討する中国人が増えているように感じてるお話し

中国から脱出したいというお話しをよく聞くようになりました。 もしかすると、今までも海外へ移住したいという気持ちがあったのかもしれません。今までは、いつか海外で暮らしたいなぐらいの気持ちだけだったのが、費用を調べてみようとか、ビザのことを確認したりとか、日本語教師であるわたしに方法を尋ねたりします。留学や移住への憧れは、強い気持ちに変化しているようです。 たいていの人は、子どもの将来を考えて海外への移住を考えます。 今の中国の教育方針は自分の子どもに合わないと感じていたり