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【ライブラリ】notes

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2023年12月の記事一覧

&(アンドのマーク)は使わない

ビジネスに使えるデザインの話ビジネスにデザインの知識はけっこう使えます。苦手な人も多いから1つ知るだけでもその分アドバンテージになることもあります。noteは毎日午前7時に更新しています。 欧文のルール日本人は知らない欧文(主に英語)のルールというものがあります。これは英語の授業でも教えてくれません。それゆえか翻訳者からの原稿にも、このルールに則っていないものがすごく多くあります。 知っておくと何かとアドバンテージになるので少しずつご紹介していきます。ご紹介した欧文のルー

「実験の民主主義 トクヴィルの思想からデジタル、ファンダムへ」~不確実な時代における"プラグマティズム"と"編集"の可能性~

本の表紙を見ると、「宇野重規著」「聞き手 若林恵」と記載されている。これは罠だ。読み終わった後にそう思った。 どう考えても、若林恵は"聞き手"の定義を大きく超えている。後半はむしろ宇野重規よりも話している量が多いのだから。 しかし、ここにこそ、本書の独自性と魅力がある。 はじめに基本的な情報を確認しておくと、東京大学社会科学研究所の教授を務める宇野重規の話を、個人的にも大好きな編集者である若林恵が聞き手として行われた、計20時間にも及ぶ対話から生成されたのが本書である。 副

技術革新と成長の成果は、社会の中でどのように配分されるのか——『技術革新と不平等の1000年史』解説:稲葉振一郎

生産性が向上し、労働者は貧しくなった? 農法改良、産業革命から人工知能(AI)の進化まで。人類のイノヴェーションの功罪を緻密に分析する話題の新刊『技術革新と不平等の1000年史』(ダロン・アセモグル&サイモン・ジョンソン、鬼澤忍・塩原通緒訳、早川書房)。 本書は世界的ベストセラー『国家はなぜ衰退するのか』のアセモグルが長年の共同研究者と放つ決定的著作。圧倒的な考究により「進歩」こそが社会的不平等を増大させるという、人類史のパラドックスを解明する一冊です。 本書の解説は、

批評がなくなった広告業界が停滞するのは当然かなぁと。天野祐吉さん没後10年に思います。

雑誌「広告批評」を創刊した天野祐吉さんがなくなって10年だそうです。 広告批評は2009年に休刊しています。 天野さんが亡くなってから特に感じていますが、広告を愛し、ヤジを飛ばす人が減りました。 リーマンショックの後の世界の広告業界の変化は大きく、震災の被害にあった日本はさらにその変化から遅れてしまったように感じます。 これは単純にデジタル化への取り組みだけが遅れの原因ではありません。 マーケティングという価値創造活動における広告の役割が明快でないこと、広告がマーケティ

《美術展》私的2023年美術展ランキング

こんばんは。 Ayaです。 今年は忙しく、美術展巡りの記録もつけられていませんが、昨年つけたのでランキング記事は書こうと思います。 第10位:マティス展@東京都美術館 マティスには苦手意識がありましたが、それを打ち破ってくれた展示です。 私が好きになる作品(その画家が画風を確立する前の作品)の傾向に気づけたりできました。 第9位:キュビズム展@国立西洋美術館 ピカソやブラックなど有名な画家だけでなく、その後のキュビズムの画家たちを知ることができました。特にフランティシ

牧畜民の家畜には名前がない

牧畜民(荒れ地で移動放牧にたずさわる人々)の家畜には「名前がない」。 といわれている。 正確には、 「名前」はないが、 当該の個体を指し示す色、模様や角の有無、その形といった語彙、 「性格があらっぽい」「すぐ迷子になる」といったふるまいの描写、 どこでもらった家畜だったといった経歴への言及、 そしてもちろんオス、メス、年齢、離乳したかしていないか…etc を区別した語彙による呼称(一時使用) がみいだされる。 ここでいう「名前」とは、 模様や角の形状や性格や経歴とは

『進化思考[増補改訂版]』─増補改訂版の協力にあたって 監修者 公開

増補改訂版の協力にあたって 監修者 河田雅圭(東北大学 総長特命教授) 『進化思考』は、自然選択による生物進化のプロセスからヒントを得て、太刀川さんが考案した「創造性」を生み出す思考法の体系である。あくまで思考法であり、生物進化の解説書ではない。著書の生物進化に関する一部をとりあげて批判するのではなく、生物進化を理解し、応用しようとしている著者の誤解を解いてもらい、正しい理解の普及に努めるのが専門家の役割だと思う。今回は、進化に関してできるだけ間違いのない記載にしたいとい

編集部員が選ぶ、年末年始におすすめしたい本。

こんにちは。本日(2023年12月22日)はいつもゲラに埋もれた世界の編集部ですが編集部員一同で大掃除をしました。こころなしかいつもより爽やかな空気が漂っているような……? イースト・プレスは神保町のとあるビルの7階と8階にあるのですが社員の中で密かに「9階」(階段の踊り場なんですけれどね……)と呼ばれている、お昼休みなどに外の空気を吸うスペースがあるのです。そんな9階で編集部の入社3年目のナカノと入社1年目のカナザワが年末年始におすすめしたい本を紹介しあっていたので皆さ

第3回 「リアル派」から「オンライン派」へ⁉ 意識が変わった本づくり

「メタバース」の本を「メタバース」空間で作る こんにちは。前回の投稿からお久しぶりとなりました。 その間に数冊の書籍編集を担当し、本づくりを行なっていましたが、今回はそんな、「本づくり」のお話です。 『メタバースで僕たちのコミュニケーションはこんなふうに変わる』(https://amzn.asia/d/8iMOREq )の「本づくり」は、他の本とはひと味違う、まさにメタバース空間を体感する面白い時間でした。 ここから3回ほどは、そんな面白い体験が盛りだくさんだった、

ニッポンの世界史【第4回】東洋史の「再発見」 : 宮崎市定・古代文明・トインビー

宮崎市定 「ヨーロッパは後進国だ!」  戦前の日本における東洋史は、中国史のウエイトが多くの割合を占めていました。  しかし、いわゆる京都学派の宮崎市定のように、アジアが世界史に果たした役割を重視し、アジアを射程にいれた世界史を描こうとする試みも、すでに戦前からありました。  たとえば、文部省の要請により宮崎も編纂委員として関わった『大東亜史』(未完)の冒頭部分をもとに戦後刊行された『アジア史概説』は、東洋史の学習指導要領(試案)でも参考図書に挙げられています。  オリエント

「空飛ぶ鯨」を解体する

はじめまして。哲学科で美学・芸術学を学んでいるAZCIIと申します(リンクからTwitter(現X)に飛べます)。 この文章は、UT-virtualが駒場祭にて頒布した部誌に私が寄稿した論考を、designing plus nine のアドベントカレンダー2日目の記事として使い回し公開したものです。note初投稿のため勝手がよく分かっておらず、加筆修正等もあるかもしれませんが、ご承知おきください。 序 ヘッドセットを装着する。瞑っていた目を開くと、広大な仮想世界が眼前に拡

ニッポンの世界史【第3回】世界史の「氾濫」

「教科世界史」は、なぜ暗記地獄化したか?  前回みたように、「科目」としての世界史は、戦後まもなくの混乱期に、学問的に深い議論が交わされることなく誕生したものでした。  そもそも学問としての世界史自体、未確立だったこともありますが、その輪郭が不確かであったからこそ、文部省の教科書調査官や歴史学者、教員、予備校講師、それに作家に至るまで、さまざまな人々の手が加わり変化し続ける余地ができた面というもあるでしょう(注1)。  とくに戦後まもなくは、教員がみずから世界史という科目

【第2回】ニッポンの世界史:日本人にとって世界史とはなにか?

「世界史」という科目は、どのようにして生まれたのか?  前回、1949年に「世界史」という科目がつくられたと述べました。  どのような経緯で「世界史」という科目が置かれたのでしょうか?  今回はちょっとお堅い内容にはなりますが、「科目世界史」がどんなふうに誕生したのか、その秘話をきちんと確認しておかねばなりません。  まずは戦後まもなくの状況を確認しておくことからはじめましょう。 戦後の新科目「社会科」  1945(昭和20)年9月2日、1945(昭和20)年9月2日、東

【はじめに】ニッポンの世界史:日本人にとって世界史とはなにか?

2010年代の世界史ブーム—疫病・戦争・生成AI  まもなく22世紀を迎える2100年の人々が21世紀初頭の世界をふりかえったとしよう。そこではどのような出来事がとりあげられるだろう?  「まもなく終わる21世紀」の幕開けにふさわしい出来事として選ばれるのは、いったい何になるのだろうか?  疫病の流行、大国による戦争、それとも生成AIに代表されるイノベーションか。あるいは気候変動、難民危機、持続可能な開発目標、新興国の台頭、あるいは権威主義やポピュリズムの拡大か—。  こう