Kum M

はぐれ人類学者。 長期調査の実施に人生をささげたすっとこどっこい。 京大で修士・博士取…

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はぐれ人類学者。 長期調査の実施に人生をささげたすっとこどっこい。 京大で修士・博士取得。 フィールドから帰国しました~、がまた機会をみつけて戻る予定。

マガジン

  • 放浪文化人類学者のはじまりはじまり

    院をでてから自力であるきだしたすっとこどっこいな文化人類学者の足跡。

最近の記事

『生物の世界』ーある文化人類学教徒の聖書

わたしはイスラム教徒のフィールドワークなどしているので、しょっちゅう改宗をせまられたりすることもあるのだが、 とりま改宗の予定はない。 世界にあまたある宗教のなかで、”真の神”(イスラムではよくいわれる)がどこかにいるとも思えなかったし(それが偽物だと思っているわけでもない)、日本の宗教観というか、お地蔵さんがあればおがみ、どこの檀家でもないけど気にもせず(指導教員も亡くなってから”なんか自由っぽいの選んだった”と宗派をえらばれて逝ってたっけ)、なゆるゆる状態が身にあってい

    • ストーブのかたわらの文化人類学者の至福

      連日氷点下のその日 隣の街から3日ぶりにその街に戻ってきて、 いつ戻ってきてもいつ出ていってもなんだかその時の塩梅でいつもうけいれてくれるその家で、 いつもお世話をしてくれる女性が、夕方ストーブを焚いてくれた。 薪は高いと聞いていたのだが「いくらなの?」と聞くと日本円にしてひと月1万3000円にもなるとか。 現地の収入にしてみたらべらぼうなその金額におののきつつも その貴重な薪に彼女が油をかけ、燃え上がったその炎の暖かさには、やはり心身がときほぐされた。やわらかい暖気のな

      • たかがビザ、されどビザー文化人類学の調査ビザ

        調査ビザ(リサーチ・ビザ)を毎回とっているかといわれると、そうでもない、ときもある。 わたしの海外でのフィールドワークは、あくまで普通の人の普通の食事、普通の宗教(「普通」の定義も必要になってくるが)であることがほとんどなので、 外国人(わたし)が一般世帯に宿泊したりするのが問題のない大都市などでは、あまりとらなくても不都合がない、こともある。 ただ宗教の存在自体をみとめない国だったりすると、宗教の調査はどこでもNGである。 某国の宗教に関する研究では、日本の学会発表の場

        • 狩猟民の世界ー縦にわかれたふたつの世界

          ちょっとあるところ(まだ成果がでるかわからん)の宗教について調べていて、ちょっとかれらについて、肌身にせまる息遣いを誰か書き残してくださってないかな、と民族誌的記述のなかを掘り進んでいたら、なつかしいものがみえてきた。 わたしはいままで牧畜民(乾燥地)が好きで、いろいろ資料を読んできたのだが、なんとなくスンとなるので、あまり口をだすのをひかえている二大牧畜民がいる。某それ(うむ)とモンゴルである。 んで、みえてきた「なつかしいもの」を思って、やっぱりなぁ、やっぱり某それも

        『生物の世界』ーある文化人類学教徒の聖書

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        • 放浪文化人類学者のはじまりはじまり
          5本

        記事

          牧畜民の家畜には名前がない

          牧畜民(荒れ地で移動放牧にたずさわる人々)の家畜には「名前がない」。 といわれている。 正確には、 「名前」はないが、 当該の個体を指し示す色、模様や角の有無、その形といった語彙、 「性格があらっぽい」「すぐ迷子になる」といったふるまいの描写、 どこでもらった家畜だったといった経歴への言及、 そしてもちろんオス、メス、年齢、離乳したかしていないか…etc を区別した語彙による呼称(一時使用) がみいだされる。 ここでいう「名前」とは、 模様や角の形状や性格や経歴とは

          牧畜民の家畜には名前がない

          わたしのインド映画遍歴

          ここ最近日本でインド映画が人気である。 「RRR」や「バーフバリ」やら。 残念ながらこの2者でいえばわたしは「バーフバリ」の前編しかみていない。無料配信になったらみようかな~、とかいうさもしいことを考えていたためである。 でも「バーフバリ」をみたとき考えたのは、えええこれがいい映画なんならシャー・ルク・カーンの「アショーカ」(いわずと知れた、釈迦入滅後に仏教を保護したインドの王さま、のお話です)だってすごいよかったじゃんということだった。そこではたと気づいた。 「アショー

          わたしのインド映画遍歴

          推し短歌:指導教員(文化人類学)

          博論をウォッカ片手に指導する( 水かと思った) ここは学校かつ昼間 博論を指導したあと私電する 「パパだけどママいる?」 他の教授がなにをいうのかを聞いている 公聴会での教授に教授でももつ謙虚と恐れをみる 就職の斡旋はしなかったうちの教授 「そういえばきみ(わたしの先輩)、来年からなにするの?」 民謡からこの世界(文化人類学)に入ったという 教授のうたう三橋美智也 「〇〇(私の名前)はすごいのに変なところで遠慮する」 あなたの遺したことばをかついで今日も世界を右往左

          推し短歌:指導教員(文化人類学)

          自費?公費?ー文化人類学的調査の最底辺を行け!

          はて。 こんなこと書いていいのかな。 みなさま、調査は自費ですか公費ですか。 「優秀な研究者は助成金ガッポガッポなので公費に決まってる」 という認識がおありになるのであれば、わたしはちょっと穴にはいりたいのでまわれ右!(ハイハイ👏)してくだされ! わたしは修士のころから大変に助成金の申請が下手で、あまり助成金のご縁にあずかったことがない。ので、行きたいときに貯金(学振の名残、あるいはアルバイト)を切り崩して行き、バックパッカー仕込みの最底辺行(貧乏旅行)で行くことが

          自費?公費?ー文化人類学的調査の最底辺を行け!

          海外にでたウイグル族は

          ウイグルというとそっちの情報が多い(察して)。 ていうか日本にいてると本当にそっちの話題しか転がってこない。 けれども、実際にウイグル族と一緒に長い時間をすごしてきたわたしには、その前に考えるべきこともあるのではないかと思われたこともあったため、中国という環境でかれらがどうすごしていたか、それをわたしがどうみていたのかを少し書いてみたい。 わたしもかれらと中国とのかかわりについてはいろいろ見聞きした。 民族語教育と漢語教育とがえらべるが、民族語教育(ウイグル語で授業をうけ

          海外にでたウイグル族は

          「それはふつうです」ーわたしの文化人類学的フィールドワーク

          博士課程の中国新疆カシュガルでのフィールドワークが終わりに近づいていたころ、現地の女性がわたしを助手席に乗せ、 「もうすぐ帰っちゃうんだねぇ。どう?日本に帰って発表できそうなことが何かわかったの?」 と聞いてきてくれたことがあった。 わたしは、世帯の訪問者数や訪問者を迎えたときの家族の様子、家族の他者の家への訪問の仕方、その男女差、家での人々の空間の使い方等のデータの結果、 ウイグル族の家は「女性の社会空間」で、そこは「男性の社会空間」とを分ける場所なのだとわかったよ

          「それはふつうです」ーわたしの文化人類学的フィールドワーク

          イスラムの人間の身体にたいする考えかたをきいたーエジプトでの文化人類学的フィールドワークから

          エジプトでアラビア語の先生に 「イスラム教徒は、その外界だけでなく、自分自身の身体の内側をも神とみなしていると考えていいか」(そういう仮説が観察から導きだされた) ときいたときに、先生から3つのYou tubeをみせていただいた。 どれも著名なイスラム学者による臓器移植に対する回答(イスラム法学的判断)である。 イスラム学者(アーリム、複数形はウラマー)は、『コーラン』や預言者の言行録等の文献を参照して、問題に対するイスラム的な回答を探すひとびとである。 2つがサウ

          イスラムの人間の身体にたいする考えかたをきいたーエジプトでの文化人類学的フィールドワークから

          指導教員のはなしー未真相不知

          いろんな先生方のことを実名でもお話させていただいてきたのにもかかわらず、指導教員を「指導教員」とだけしつづけてきたのにはちょっとだけわけがある。 指導教員は真相のわかりにくい事件の中核になり、その結果わたしは博士論文提出の前に指導教員を失った。 ことはその1年前くらいに予兆をみせてきた。 会議室に院生たちがあつめられ、なぞめいた告知がなされた。 脳細胞をフル回転させて聞いたのだがなにがなんだかさっぱりわからなかった。ともかくわたしが不出来だとかいう指摘とかじゃなくてよ

          指導教員のはなしー未真相不知

          イスラム世界は女性抑圧の世界かー個人的所感

          イスラムは女性が布をかぶらされて社会的にその存在を消されているから、 女性抑圧の宗教なんだ! っていうのが一般の方々にとっての理解なのだろうかと思うことが多々。 ちなみにわたしは現場にいて、これは女性がかわいそうだ!と思ったことが………ない(↓DVはさすがにかわいそうだったが、そのくらい)。 学校に行かさせられなかったりするだろう!(マララ・ユースフザイ氏のこととか)といわれそうだが、中国の新疆にいたころは、そのころ入手した資料によれば、ウイグル族の大学進学率は、女性

          イスラム世界は女性抑圧の世界かー個人的所感

          女性たちの秘密ごはんーパキスタン牧畜民世帯のフィールドワークから

          パキスタンの牧畜民の世帯では、日に5回~6回のお茶(とパン)の時間があった。 朝起きて茶を飲み(人によっては家畜の搾乳後に)、それからそれぞれの作業にでかけ(放牧など)、中休みをしてまた茶を飲み、昼に茶を飲み、午後にはあたりを歩いて家畜の様子をみては茶を飲み、寝る前に茶、または食事をとった。 ある日、男性たちがそろって遠くの畑や仕事にでかけ(畑仕事の人はお弁当持参)、朝と昼のあいだ、女性だけが家にいる時間があった(31人の拡大家族共住世帯なので、それでも10数人)。 そのと

          女性たちの秘密ごはんーパキスタン牧畜民世帯のフィールドワークから

          「住みたい場所」についてーヴァンパイア・ホーム訪問記

          「住みたい場所」というお題を聞いたときに、考えた。 マンションも戸建てもそれなりに利点と欠点がある。 庭の手入れをしなくちゃいけなくなると、松は困るな(近所にやたら多い「見越しの松」w手入れが大変)、 防犯は戸建ての場合は人感センサーかな 小窓に鉄格子のオプションはマストやな(散歩しながらみている)、 マンションでも不審者や居住者とのトラブルや防犯対策はいるでしょう、とか 都会も田舎もよしわるし(スーパーはどこだ)、 やっぱり産直野菜が手にはいるところがいいな、 しかしずー

          「住みたい場所」についてーヴァンパイア・ホーム訪問記

          洗濯石鹸は固形派ですか?ー学部時代の友人のはなし

          大学の学部生のころに、友人がいた。 わたしがほうぼうで「大学生のあいだは海外にバックパッカー旅行にいきたい」と挨拶をしていたら、「わたしもいきたい」ときてくれたやつだった。 大学、大概は図書館で会うと「お茶のみいこう」といわれ(いい)、大学食堂で無料でのめる茶をかこんで「いま何読んでんの?」からはじまる話をあきることなくしていた。 そいつはいつも私が思うことの斜めうえをいくやつで、いつする話でもわたしの感覚ではありえない話を聞くことができた。相手にとってはどうだったのだろ

          洗濯石鹸は固形派ですか?ー学部時代の友人のはなし