みみずくは黄昏に飛びたつ

みみずく

この本は出版されてすぐに読んだ1冊。

ちょっと村上春樹小説の総ざらい?みたいなことがしたくて、ねじまき鳥と併読、読み直してみた。

改めて感じたのは、春樹さんは自身の過去の小説を読み直さないし、インタビュアー(川上未映子さん)から質問されても、よく覚えていない、忘れた、そんなこときかれてもわからない、みたいな回答がかなり多いということ。

そのとき主人公はどう思っていたのか、あれはどういう意図で書いたのか、等の質問に対して「それはわからない」と。

川上さん同様、僕も「ほんまかいな?」とつっこみたくなるところは多々あったのだけれど(笑)

僕は読書にしても映画にしても鈍感な方だし、謎ときとかよくわからないし苦手なんだけれど、春樹さんの小説はディテールがすごく残ったり、主人公が無為でからっとしていたり、社会にデタッチしてるからあぁ僕もこんな感じでいいんや何を力いれてるんだろうと思えたり、とはいっても熱い何かをもっていたり…そういうのが好きなのですね。

「分析することよりただ受け入れる。受け入れるには体力がいる」とおっしゃっている。

それと途中で「若い読者のための短編小説案内」について触れているところがあるんだけど、あれは批評ではなく「文章術」とのこと。これはすごく納得。

春樹さんの一貫した姿勢が垣間見える。

で、やっぱり根底には「システム」に対する悪の意識があり、それは自身の個人主義からもきている…と。これもすごく共感するところだなぁ。

あーだこーだSNSやら何やらで争いがたえないけれど、イデアやメタファーみたいな連中にはなかなか言い返せないわけで、これからも力強い物語を書いていただきたいです。

ところで『ねじまき鳥クロニクル』に関する挿話が一番多かった気がする。象徴的な長篇小説なんだろうなぁ。あと『ダンス・ダンス・ダンス』の挿話もそこそこあった。

あと川上未映子さんの村上春樹に関する引き出しが多すぎて、こりゃそうとう準備したのかファンなのか…徹底されていてすげぇ!となった。なかなかここまで食らいついていくのは大変そうだ…。

というわけで村上春樹小説は僕の人生の中ではいったん卒業。という感じになりそうです。


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