ワールズ・エンド(世界の果て)

書影

訳者あとがきの一文を借りれば
「ここに収められた九つの物語は全て原則的に <異国にいる人々> の話である。彼らは様々な事情で母国を離れ、そのことによってひきおこされる様々なかたちのねじれ・歪みを体験することになる」

フィクションであれノンフィクションであれ、いわゆる紀行文としての趣を感じつつも、どうやら9篇を読み終えたとき、なにかしらの「一体感」を感じることになった。

特に良かった短篇は
・ワールズ・エンド(世界の果て)
・文壇遊泳術
・コルシカ島の冒険
・緑したたる島

特に最後の「緑したたる島」は、はっとさせられるシーンがいくつもあったし、ひとつ思い出したのは沢木耕太郎氏が大学を出て就職した銀行を1日でやめたという話。(本筋と直接関係はないけれど)
氏の「深夜特急」を思い出したし(そもそも僕がこの本を読もうと思ったのは、とある読書カフェで深夜特急の話を持ち出したときに勧められたからでもある)、村上龍氏の「空港にて」や、村上春樹氏の「雨天炎天」なんかも思い出した。

この「緑したたる島」が僕としては大ヒット。デュヴァルのふらつき具合と振れ幅と、それでいてここぞで掴んで離さないダイナミズムをぜひ感じていただきたい。

ポール・セローの本作が僕を「ここではないどこかへ」移動させた。

そしてまたこうも思う。

「良質の物語に触れ続けるなら、さらに僕はどこかに移動し続ける」

*****

音もなく歩き去り、そのままずっと歩きつづければいいのだ。

※個人的にはマーク・ストランドの「犬の人生」という短篇集とセットで読んでいただけるとなお最高かと思います。

【著書紹介文】
雨のロンドン、酷暑のプエルト・リコ……世界のどんづまりで戸惑う人々--アーヴィング、カーヴァーとならび村上春樹が惚れ込んだ、アメリカ文学界の異才の痛快にして尋常ならざる短篇集。

(書影と著書紹介文は https://www.chuko.co.jp より拝借いたしました)

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