『まとめ途中。自堕落静養日記。追記中。九月八日~』
薬の副作用でずっとねむい。かといって、発疹の治まる気配はない。
よって、自堕落に静養するほかない。過ぎ去らない盛夏の中で、動けば動くほどに、ぽつりぽつりと発疹は何処からともなくやって来る。
これは愉快犯だ。目的がわからない。
文章を書きながらでも、ねむい。これだけねむければ、明後日の化学療法もいつのまにか終わってしまうだろう。胸に埋め込んだポートをどれだけ利用するのかもわからない。明後日の最後の点滴は確実に利用することにはなる。そして、家に持ち帰り、丸二日間経った後に自らで針を抜く。
その間、風呂やシャワーを使っても構わない。右鎖骨および器具全体が濡れない工夫を怠らなければ、だが。頭と顔を洗うのは容易い。下半身も可能だ。胸はタオルかリフレッシュシートで拭くだけになるだろう。
これを、数クールつづけることになる。
真夜中の雷とはめずらしい。
巨石と巨石が擦れるような虚ろな音だ。天の岩戸から天照大神がひょいと顔をのぞかせているのだろうか。日の女神をおびき出すような派手な宴の様子はなかったが。夜中中、音が空に染み入るように鳴っている。
或いは、天の楽園から一掴みの神々が追放されて落下する音だろうか。
故郷の星に手を伸ばし、追放される神どうしが引力に屈しながら嗚咽を漏らし飛行しているのかもしれない。
で、私は早起きしてしまった、というわけだ。覇気のない。虚ろな雷のせいで。私が起きている間は身体が、すこうしかゆい。故に、ストレス氏と共に過ごさなければならない。ねむっている間だけ、ストレス氏と離れられるのだ。
夜が、世が、明ける前に高天原を見つけてくれ。天孫降臨でもなんでもしてくれ。
抗がん剤治療が二週間の延期となった。
好中球の値が低すぎるということらしい。つまり、私の免疫力は底をうっているという状態だ。「抗がん剤が効きすぎているようですね」と、言われた。
今の私は、風邪や肺炎に罹患しやすい。けれど、抗がん剤はしっかり効いている。なんとも悩ましい。抗がん剤治療中に、好中球の値が下がる副作用はよくあるという。そして、好中球の値が下がったほうが、五年生存率が高くなるというエビデンスもあるらしい。
何度も書いているのだけれど、私は六月と九月に体調不良になる。梅雨と秋雨のせいだと思っている。故に、こうなることも頭の片隅にはあった。
好中球の値を上げる食べ物で検索をかけた。それはないらしい。バランスのよい食事を心がけるほかない。
何か、自らわかるバロメーターがあるといいのだが。取りあえず、上半身の発疹の観察から始めてみようか。
するりと抜けてゆく
私のこわばった手から
小銭やらなんやらが
がらんがらん
するりと抜けてゆく
散らばった小銭が拾えない
カードも拾えない
指と床の接地感が、あまい
あせれば、指先がじんじんする
ふう、これが副作用
ふうん、夏でこのざまか
二週間前の点滴で、これだ
いったい、ま冬の私はどうなるんだい
するりと抜けてゆくのは銭だけかい
すうはあ、一息つこう
すうはあ、ゆっくり拾おう
思えば、歩きながら財布をいじる私が大胆不敵なのだ
だからするりと抜けてゆく
忘れてはいけない
私は自堕落静養人間なのだ
こわばった手を承認しよう
いついかなるときもこわばった手をかわいがろう
これも私だ
無数の赤い軍隊蟻が私の肌の上に波紋をつくり、侵略するように発疹が拡がる。そして、其処に駐留する。毎日だ。消える発疹は僅かで、赤色のままであったり、黒く染みになったりもする。
その痒みも、波紋の拡がりと道連れと共に侵略するように細かい蟻塚を量産する。その痒みは、気づかないうちに肌から無くなる。が、幾度かの噴火を繰り返す。
私は、秋を待っている。私は、夏の陰に窮屈な身体を押し込みながらひたすらねむっている。
怠惰で変わり映えのない日日が続く。
それはとても機械的で、私の時間からなまなましさを欠損させている。どこかでなにかをあきらめる長所が、厚顔をさらす。
屁がよく出る。かなり、よい屁だ。その証拠に十中八九が屁で、屁に乗じて実は漏らしていた、という類いの屁はしばらく放っていない。
尻離れもよい。私にまとわりついてまわるという屁でもない。おとなしく、プラズマクラスターに吸い込まれていく。
ものわかりもよい。扱いにくいところもあるが、カラッとした性格の屁だ。私は湿っぽい屁にはうんざりしていた。腹下りの副作用に悩まされていた、あの忌々しい屁の際にはこうはいかなかった。もう、微に入り細に入り屁を放っていたあの日の私ではない。大胆でいいのだ。
『屁の帰還』だ。
今更なのですが『ストレンジャーシングス』を一気見してしまった。
その後、胸糞悪い、トランプ候補のペット喰い発言を知った。
アメリカのスクールカーストをたっぷり見せられた後だけに、この作品のシーズン4で登場するバスケットボール部のキャプテンを思いうかべてしまった。
トランプ候補に関わらず、アメリカ大統領になる者のほとんどは、スクールカーストのトップグループから輩出されているのだろう。それが、アメリカ作品ではよく解る。そして、この後スクールカーストの最下層のグループから数多くの起業家が現れて、アメリカ社会がねじれて逆転してゆく萌芽が、『ストレンジャーシングス』で見てとれる。
アメリカ作品のドラマ、映画のスクールカーストの描き方は見事だ。一目でわかるような俳優を配置している。やや、ストレオタイプ的過ぎるのかも知れないが、現代の実社会でのゲイツやザッカーバーグやハリウッドのオタク監督の幼少期を想像する上での、充分過ぎる種にはなる。
アメリカのスクールカーストを学ぶ作品はいくらでも思いうかぶのに、日本の作品となると、なかなか思い当たらない。日本の作品では、無理矢理スクールカーストの上位グループの俳優を下位グループ役を演じさせている。そんな演技ができるのは、ほんの一握りの天才だけだろうに。例えば『ギルバートグレイプ』のジョニーデップのようにだ。
本邦の作品としては、『桐島、部活やめるってよ』『ふぞろいの林檎たち』あたりの作品は見事だった。変わり種としては『ビーバップハイスクール』も、スクールカースト作品として見れなくもない。私は北関東の育ちなので、あながちあの世界観が間違っていない事を知っている。八十年代の日本では、スクールカーストの上位者は日本風のヤンキーだった。勉強が出来る者でも、部活のエースでも、生徒会長でもなかった。変形制服を着用した者たちの集団だ。
因みに、ストレンジャーシングスとビーバップハイスクールの時代は、ほぼ一緒なのだ。日本からの転入生としてヒロシとトオルが作品に存在してもおかしくはないのだ。相当に、変だが。時代性はあっている。
『ベスト・キッド』が世界中で大流行していた。しかし、本家本元の日本では、ヤンキー文化が花開いていた。
そこから、想像を飛躍させて時代を上って、坂東武者達の姿形や振る舞いが解るような気がする。今も昔も、そんなに性質は変わっていないだろう。
勝利の証拠にボンタンを刈って持ち帰るか。首や耳をそぎ落として持ち帰るかの違いだけだ。おお怖。
昨日、書いた事の続きのような文章になる。
『ストレンジャーシングス』を、シーズン4まで一気見している最中は、それ以外の情報をシャットアウトしていた。
目覚めて起きたら、トランプ候補が暴言を吐いて、兵庫県知事が目に涙をうかべていた。なんだこれは。
私は、しつこく何度も書いている。「涙は怖い」と。プーチン大統領の涙も、兵庫県知事の涙も本物だからだ。涙とアルコールは人を酔わす。そして、自らの都合のよいほうに真実を曲解する。
だから、島田紳助より、明石家さんま派であり、長渕剛より、桑田佳祐派なのだ。島田紳助と長渕剛と松本人志がつくる国よりも、明石家さんまと桑田佳祐と東野幸治がつくる国のほうが、私には住みやすいだろう。
後者の三氏は涙の怖さを知っている。そして、後者の三氏は見事に前向きな嘘をつく事ができる。肝胆相照らして、理性的な嘘をつける。
司馬遼太郎は、自らが生まれ育った近畿地方に期待をかけていた。近畿地方に政権があれば、あの酷い戦争はなかったのではないか、と。なぜなら、近畿地方は算盤ができる。損得で判断ができる。商業の大切さを知っているからと。そんな事を書いていた。
まさか、近畿地方がこれほど右傾化するとは、司馬遼太郎も予想出来なかった事だろう。
と、群馬県民の私は思う。が、群馬県知事は山本一太であり、大阪府知事や兵庫県知事と、そう変わらない。
ま、日本が大統領制の国でなくてよかった。日本が大統領制の国だったらと思うと、ぞっとする。
今頃、橋下徹や小池百合子が大統領になっていたはずだから。
amazonechoスピーカー二台のステレオ再生の調子がわるい。
シャッフル再生をはじめて、4曲目くらいで一度停止する。しばらくすると自動的に再生を開始する。けれど、それは次の曲だったり、スピーカー一台だけの再生だったりする。
と書いている途中から、一曲目から停止している。且つ、右スピーカーからしか音楽が流れていないので、amazonmusic、alexaアプリをアンインストールしたり、設定を変えたり、スマホの省電力モードを解除したり、Wi-Fiルータの電源タップを抜いたり差したり、あらゆる事をしている。
オーディオ機器とCDと書籍は処分してしまった。もう、後戻りは出来ないのだ。私は、テクノロジーに寄り添って暮らしていくしかないのだ。その証拠に、未だに新札に触れていない。
取り敢えず、明日全部同時に電源を落とそう。アプリも、もう一度アンインストールしよう。
私の運転免許証の写真の顔は、毎回ぱんぱんに膨らんでいる。
それは、ま夏の暑さに負けまいと、ビール腹になり、アイスをたらふく食べてパピコ顔になるからだ。水分過多になり、糖分過多でもあるからだ。頬は厚くふくらみ、その顔の輪郭の縁取りはおぼつかない。
今年は免許更新の年でもある。アルコールを断っているので、痩せて迎えられるはずが、思い通りにいかなかった。癌だからといって、瘦せこけるわけでもないようで、私のいまの体重は近年ではいちばん重い。今年はパピコにはまってしまった。すべての味のパピコに及第点をあげられる。
この夏は暑かった。夏バテ防止のためにも、身体の発疹の拡がりを防ぐためにも、一刻でも早く身体を冷やしたいときがある。パピコは寝転がりながらでも食べられる。自堕落な私にぴったりなのだ。
そして、この秋もパピコ顔で撮影にのぞむ。
猫者が啼いている。
我が家の庭ではない。私の喉奥から、猫者の啼き声がするのだ。
私は喉奥に、子猫を飼っている。そう、と言っていい。息をするたび、ゴロゴロと啼いている。
免疫力の低下からのエアコンの冷気を直に浴び過ぎたせいだろう。喉奥がざらついている。でも、エアコンの力を借りなければ発疹を沈めることができない。痛し痒しだ。この、『猫啼き喉』に発熱と咳が伴えばエアコンのスイッチを切る決断ができるのだが、その兆候はない。私はいたって平熱なのだ。
癌からの免疫力低下からの肺炎からの死は、よく聞く話だ。一応、葛根湯で様子をみている。来週の血液検査の結果次第では、抗がん剤の点滴が待っている。その際に相談してみよう。マイコプラズマ肺炎が流行っているそうだから。
抗がん剤の点滴を身体に入れてから、もうすぐ三週間だ。
手足の先のしびれと上半身の発疹は相変わらず私と共にある。
この副作用からは容易には逃げられそうにない。一回の点滴でいつまで癌細胞を攻撃してくれているのだろうか。副作用=攻撃、とは、単純には考えられないけれど。
さて、週明けの火曜日の血液検査で私の体調は上向きになっているのだろうか。実感としては、横ばいか下向き傾向にあると思っている。調べてみると、血液検査で反映される好中球の値は二~三週間前の状態を表すらしい。
そう考えると、今よりは体調は良かった。これで上向いていないなら、当分の間は抗がん剤の点滴は受けられないだろう。息を吐くたびに、喉奥からすきま風、あるいは猫啼音が聞こえる。
「ひゅうにゃあ、ひゅうにゃあ、ひゅうひゅうにゃあ」、私には、こんなふうに聞こえる。
はじめは、私から発している音だとは気づかなかった。ほんの微かな響きだった。それが、だんだんと大きくなってきた。しかし、副作用を選べる事ができるなら、今回の抗がん剤治療の副作用は耐え得る事ができている。腹と頭の調子はいいかんじなのだ。
昨晩、来ました。
偏頭痛が、です。で、耳の上から左右のこめかみ辺りをマッサージしていました。そうしたら、もうひとつ、来ました。脱毛です。マッサージをしていたら、そのヶ所だけ髪がすっかり抜け落ちていました。
私は、笑ってしまいました。私にとっては、笑い事です。ブルーハーツのドラムっぽくなりました。これは、モヒカン刈りでしょうか。モヒカン抜けでしょうか。
それはそれは、あっという間の出来事でした。
ほんの、三十分位でこうなりました。顔の発疹も凄すぎて、これ以上の画像はお見苦しくなるばかりで見せられませんが。
このタイミングで運転免許証の更新もあります。どうせなら、スキンヘッドまで待とうかと思っています。
只今、九月二十二日。午前七時。
朝起床したら、少し肌寒い。長袖のシャツに久しぶりに袖を通した。
秋か、秋が来るのか。信じていいのか。
私は、髪を6㎜で刈った。突然抜け落ちた両サイドの違和感をできるだけ誤魔化そうとしている。一気にスキンヘッドも考えた。けれど、剃刀を頭にあてるのは、ちょっぴり怖いではないか。それで、しばらくは6㎜の短坊主で妥協する事にしたのだ。正直なところ、はやく、ぜんぶ抜け落ちてほしい。
どうだろう。馴染んでいるのではないでしょうか。
私にとって、髪が抜けるのはどうでもいい。けれど、そのうち眉毛も抜ける。眉毛が抜け落ちたときは、どうすればいいのだろうか。
平日の昼間に、スキンヘッドで眉毛無しの男は世間から見ると異様の威容であるはずだ。
Netflix、『極悪女王』を見た。
サンクチュアリといい極悪女王といい、良作だと思う。Netflixと、格闘ものの相性も良い。ただ、事実だから仕方ないのだが、両者共に家庭に問題を抱えている。そこからの逃避としての受け皿の『格闘技』という図式には、いずれ飽きがくるだろう。
タッパがあって、ムキムキの男性俳優は結構存在するので、男子プロレスでもう一作くらい作ればお腹いっぱいかも知れない。アントニオ猪木かタイガーマスク、では古すぎるだろうか。極真空手でもいいかも知れない。どうせなら、東出昌大と鈴木亮平を闘わせたい。なにか、ないだろうか。
極悪女王の話に戻ると、レフリーの阿部四郎役の音尾琢真は見事だった。
女子プロレスラー役の俳優は全員頑張っていた。
極悪女王はレスラーと団体が実名なのも良かった。「もう、時効」だと、みんな思っているのだろう。四十年前の話だ。
Netflixの可能性はどんどん広がるばかりだ。
戦中、戦後の闇を取り扱ってもいいだろう。地上波と日本映画では大々的には出来なかった事でもある。ヤクザの抗争ものは飽いているので、それ以外でお願いしたい。政治、戦争、芸能、宗教、歴史。原作本はたくさんある。
『将軍』は、ディズニープラスに契約していないので見られない。NHKさん、買ってもらえないだろうか。シーズン1を見てすらいない私が、シーズン2を予想してみよう。「秀頼は秀吉の子なのか」、あたりで創作するのではないか。創作は自由だ。しかも、みんな、昔から怪しいと思っている。西軍が一枚岩になれなかった一因のひとつなのではないか、とか。「光秀は生きていた」は、ないだろう。
私は歴史にそれほど詳しくはない。色々調べてみたら、細川ガラシャの血筋は細川家ではなくて、今上天皇家に繋がっているのを、今更知った。これ、興味深いから世界中に広めたほうがいい。
無事、抗がん剤治療を受ける事ができた。
朝八時~十六時半まで病院にいた。血液検査、血液検査の結果の説明、抗がん剤点滴の順で進む。二週間前は、血液検査の結果が芳しくなくて、抗がん剤治療を二週間スキップした。
前回の血液検査からこのように改善した。
①9/10 ②9/24 ③基準値
アルブミン①3.4②3.7③4.1~5.1
CRP①0.23②0.16③0.14(上限値)
白血球①24②63③33~86
好中球①8.0②46.1③38.0~74.0
担当医が気にしていたのはこのあたりの数値だと思う。
細かな説明は素人の私は控えよう。概ね改善傾向が見られた。このような数値があれば、抗がん剤治療が受けられるようだ。
且つ、今回から抗がん剤の濃度が80%になった。100%では、私の身体には強すぎるようだ。
これから、四十六時間前後の抗がん剤点滴を自宅で行う。針を刺して抗がん剤点滴を取り付けるまでは病院で看護師が行う。その後の針抜きは自分でする。医療廃棄物は二週間後に病院に持って行って廃棄してもらう。
抗がん剤ポシェット。これを肩にかけてしばらく過ごす。
ポシェットの中にはプラスチック製の容器。更に、その中のゴム風船の中に抗がん剤が入っている。この風船が萎みきったら自宅での抗がん剤点滴は終了となる。これは、肌の温度を感知して抗がん剤の流量が増減する仕組みになっている。だから、夏と冬、平熱によって点滴時間が前後する事になる。
余談ですが、夏にパピコを馬鹿食いしたせいで、体重が5㎏増えて血糖値も上がっていた。糖尿病の事などは何も言われていないとはいえ、食べすぎには気をつけよう。
これが。
こうなった。
ほぼ、四十八時間が経過している。丸い風船が細長くなった。しぼんだ風船の横に筋が入り凸凹してきたら完了。自ら針を抜く。もう抜いてもいいくらいだと思うけれど。念のため、もうすこし様子をみる。
胸についた温度センサーを外し、管をロックしたら、右鎖骨下に埋め込んだポートから針を抜く。このとき、テープで固定されているので慎重にぴりぴり剝がさなくてはならない。指先がしびれているので余計難しい。
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