見出し画像

フォトクラスの授業 … 他の写真教室とは違う3つのこと

自己表現を通して自信をつけていく「表現プログラム」。
①自分を知る、②自信をつける、③自分を表現する、の3つの要素に同時並行的に取り組む、本校の特色ある授業の一つです。

その中でも年々進化を遂げているのがフォトクラス。
その名の通り「写真」を通して自己表現に取り組むクラスです。
こう聞くと当たり前に思えるかもしれませんが、さて、写真を通した自己表現とはどういうことなのでしょうか。今回はその秘密についてお話したいと思います。



1.自分の内面にある感情に向き合う

冒頭に書いた通り、表現プログラムの第1歩は「自分を知る」ことですので、これを写真を通して行うところから始まります。

「自分を知る」と言っても、意図的に自分と向き合った経験のある高校生は決して多くありません。自己肯定感の低い生徒だと、なおさらその傾向が強い可能性があります。

自分を知るというのは、自分の感情を知ることです。
でも、普段の生活の中で感じたこと――感動した、悲しかった、綺麗だった、違和感を覚えた――などの感情は、日々の生活の中でどんどん流れ去ってしまいます。
なので、自分が物事にどういう感情を抱くのかは、意外と認識できていなかったりします。思春期の高校生ならなおさらです。

しかし、写真は自分の感情に気づくきっかけになりえます。

「あ、いいな」と直感的に感じてシャッターを押した。
そこで生徒に考えさせます。なぜあなたはその被写体に惹かれたの?と。
すると生徒は、自分に対して問いを持った状態でその被写体を見つめ直します。
角度を変えたり、明るさを変えたり、タイミングを変えたり、構図を変えたり。
そのうちに自分の感情に気づき始めます。
――自分は寂しかったのかもしれない。自分は不安だったみたいだ。
そして、その感情をテーマにして次の写真を撮ってみるように伝えます。
こうして生み出された写真には、生徒一人ひとりの感情、個性、センスが如実に表れてきます。

画像1

ですので、写真に対する講師のコメントや評価は、「キレイだね」「良く撮れてるね」「かわいいね」といった、誰にでも使える言葉にはなりません。
褒めることはもちろんですが、個性を大切にして、「あなたはここを伸ばすといいよ」「あなたはこういう方向性でもっと撮るといいね」というように、一人ひとりの将来につながるフィードバックが行われます。
写真を通して個々の生徒の潜在能力を引き出すプロセスです。

また、個々の生徒への講評はクラス全員の前で行いますので、生徒たちは人の講評を聞いているうちに「みんな違うんだ」「みんな違っていいんだ」ということに気づきます。人と比べる必要がないことを学び、自己肯定感を高めていくことができます。

このようなポテンシャルオープニング(潜在能力を引き出すこと)のプロセスこそ、表現プログラムのフォトクラスが一番大切にしていることであり、普通の写真教室にはない独自のアプローチになっています。


2.上達を実感して自信をつける

二つ目の「自信をつける」について。
自分の内面と向き合って自己肯定感を高めるのと同時に、技術的なスキルアップも図っていきます。
テクニックを身につけると、生徒は素直に上達を実感でき、自信をつけることができるからです。

光の使い方(自然光・人工光)、陰影のつけ方、ライティング、フラッシュ、スローシャッター、広角撮影、色の使い方、ポージング、寄り・引きなど、多彩な撮影技術に触れていきます。
さらに、レタッチ(画像加工)を学ぶと、生徒たちの可能性は一気に無限に広がります。

こうしたスキルによって、自分の感情をより明確に表現できるようになった生徒はたくさんいます。
自分が何に興味を持っていたかに気づき、普段の表情から変わってきた生徒。
自分の中の「陰」の要素を吐き出すことができた生徒。
独自の色彩感覚で自分の個性をブランディングするに至った生徒。

ただ、生徒がスキルを活かすために大切なのは、「自由を与えること」なんです。
テーマは与えるけど、それ以上は縛らない。
例えば「家から学校までの間で、何でもいいから何か探してみよう」というテーマの中で、生徒は自由に探し、感じ、表現します。
シンプルに自分の感情に向き合って、ありのままの気持ちで被写体にレンズを向ける。
こうすることによって、生徒がスキルを使いこなし、才能開花につながることを、私たちは毎年まのあたりにしています。

画像2

3.写真を通して相手に伝える

三つ目は「自分を表現する」こと。
当然、自分が伝えたいことが相手に伝わることが重要です。

伝わるためにはさらに色々な工夫が必要です。
例えば、言葉と組み合わせること。写真にタイトルやステートメントをつけることです。
タイトルが付くと、写真は突然に違った輝きを放ったりするものです。
そしてその写真と言葉の化学反応に触発された生徒は、「やっぱり撮り直したい!」と再び撮影に飛び出して行ったりします。

また、組み写真やコラージュにも取り組んでいます。
複数の写真が組み合わさると、一つの感情を厚みを出して表現できたり、あるいはそこにストーリーを紡ぎ出すことができたりします。
生徒によっては、こうした組み合わせの領域で才能を発揮する人もいて、本当に一人ひとりが違うんだということを実感させられます。

画像3

ZINE(ジーン:手作りの写真集冊子)の制作では、写真のレイアウトだけではなく、ブックデザインやトーンマナーについても学びながら取り組みます。
どの生徒もクリエイティブ・アートワークは大好きで、意外な才能が続々と生まれてきます。


* * * * *


自分の内面と向き合い、
感性を開いて、感情を使って、
デザイン力を駆使して表現する。

ビジュアルコミュニケーションの存在感がますます大きくなる時代に、写真を使って自分を表現する技術を磨き、将来の希望につなげる。潜在能力が引き出され、自己肯定感が高まる。

これが本校の表現プログラムのフォトクラスのコンセプトです!

(H Sakamoto)

■講師プロフィール
雨森 希紀(あめもり まき)
大手外資系投資銀行でプロジェクトマネージャー、ビジネスアナリストを経て2014年独立、写真家へ転身。コーチング資格(米国CTI認定プロフェッショナル・コーアクティブコーチ)の保有者でもあり、被写体との信頼関係をベースに撮影に臨む 独自のフォトセッションを展開。その他広告写真含み多くの被写体を撮影。ウェブサイトやパンフレットなどブランド&プロモーションコンテンツのデザイン制作のアートディレクターとしても活動中。アーティストとしては、写真作品他、グラフィックアート作品を制作。国内外のコンペにて受賞歴多数。スペインとイタリアのギャラリーに所属しながらデジタル&アナログ作品制作を展開、国際アートフェアや海外ギャラリーのグループ展参加。
教育ジャンルでは、都内私立高校のエントランスアート&記念品制作担当。また7年間地元の英語教室にて小中生へ英語を指導している。成女高等学校、表現プログラムのフォトクラスを担当。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?