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イライラするときに理性で抑えていると後で苦労する話 〜精神論ではない解決策の提案〜

 ポストが赤いことにもイライラする。そう表現されるくらい、イライラしてどうしようもない時期がありました。寝ても覚めてもイライラしています。言葉ひとつにも腹が立ち、当時の私の眉間には、常に皺が寄っていたそうです。

 私の状態を根本から解決してくれたのは、漢方と鍼治療でした。東洋医学的には「怒り」は「肝」と関係しています。肝は独特の機能単位であって西洋医学の肝臓とは少し異なりますが、重要なのは心の問題と思い込んでいたことが、実は身体の不調だったという事実です。
 「肝」の失調はイライラを始めとする精神的な不安定さを引き起こし、また逆にイライラを溜め込むことは「肝」の働きを傷付けます。

 仰向けに寝転がって膝を伸ばします。
 みぞおちのあたりから左右の肋骨の下を軽く押して、圧迫感や抵抗、ひどいと痛みを感じるような場合には、これを「胸脇苦満」といいます。多くの場合、「肝」の失調を示唆します。

 私の場合は鍼治療に加えて「柴胡加竜骨牡蛎湯」が良く効きました。周辺症状を伴うような認知症に奏功する「抑肝散」や「抑肝散加陳皮半夏」等も、こうした理論を元にしています。

 結局、薬じゃん…
 なんだよただの宣伝かよ…

 ちょっと待ってください。
 薬や鍼治療に頼る前に、自分で出来ることもあります。

 それは、歩くことです。

 やけ食いは「脾胃」を傷つけ肥満の原因にもなります。やけ酒は「肝」を傷つけ余計にイライラを増やします。しかし歩くこと、これは何も悪くありません。

 忘れがたい経験があります。大学生だった私はいつものようにイライラしていました。深夜になってもイライラしている私を見かねた恋人は、

「いいから歩いてこい!」

と云って私を家から追い出しました。

「ええ…ここ俺の家なのに…」

と思いながら、根が真面目な私はそのまま夜道を歩き始めます。せめて携帯と財布でもあれば遊びようもあるものを、腕時計ひとつでは何も楽しくありません。自分がひどい仕打ちを受けたような気がしてきて、さらにイライラしてきます。とはいえすぐ家に帰るのも癪なので、とりあえず歩いてみます。5分、10分。
 どうしたことでしょう。だんだん冷静な気持ちになってきます。夜風が心地よいというか、頭が冷えていくというか。
 競歩のように踏み出した足取りは、家に着く頃には穏やかなハイキングのそれでした。

「イライラ…しなくなった。ありがとう。」

 適度な運動は良い睡眠にも繋がります。東洋医学的には頭寒足熱といって、頭が冷えて足元が温かいのが良い状態なんですね。

 さて、心身二元論には限界があって、実際には心と身体を切り離すことはできません。互いに密接に影響しあっています。心の問題を心だけで解決しようというのは難しい。

 正当な怒りを否定するものではありませんが、自分でも不自然にイライラする、そんなとき。
 ひょっとしたら「肝」の失調かもしれません。

 さぁ、身体のエンジンをかけて、
 歩き始めましょう。




※東洋医学ではひとりひとりの状態に応じた診断と治療を行っていきます。興味のある方も薬や鍼治療は自己流に走らず、信頼のおける医師、鍼灸師、薬剤師に相談することをお勧めいたします。

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