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ディズニーランド 《詩》

「ディズニーランド」

想像を超える暴力によって 

何の前触れも無く
理不尽に踏みにじられる

頑なに沈黙を守る神

無表情で冷徹な死線が横たわる


彼女の手は柔らかく温かい

僕の手のひらに静かに置かれた指先

ふっくらとした
花の蕾の様な感触だった

其の指先から確かに伝わる意志がある

彼女の中で何かが外に出たがっている

とても大切な何かだ

彼女には其れを
上手く出す事が出来ない

力と手段を失っている 

しかし其の意志は

傷を負う事無く彼女の中に
生きている 存在している

僕は其れを感じ取る 

其れが此処にある事を

静かに訴えかけている 

彼女は僕の手をいつまでも握っていた

ウエスタン リバー鉄道 

カリブの海賊

ジャングル クルーズ 

ビッグサンダー マウンテン

エレクトリカル パレード

あの日 僕等の前を
パレードが通り過ぎて行った

鮮やかな原色の光と音楽 綺麗だね

ふたりは微笑みながら 
ずっと其れを見ていた

世界中はピース マークで溢れている

また来ようね 彼女はそう言った 

僕はもちろんだよ 約束するよ
そう言って指切りをした


君の部屋に花を飾る 

出来るだけ生命力に
満ち溢れた鮮やかな色彩の花を

僕は黄色とオレンジの花を選んだ

病室には似合わない色かもしれない

君と僕はあの日と同じ光を求めている

今は見えないとしても

孤独が集まって来る音に怯える

ぼんやりと僕等の姿が霞んで行く

最後に残る約束と僅かな純粋な細胞

寡黙な神にさえ
祈りを捧げ続ける 僕が居る 

いったい いつまで黙ってる

口をついて出た言葉が空に留まり
やがて沈んで行く


僕は君を車椅子に乗せて外に出た

胸の中でつっかえていた想い

途切れ途切れだけど伝えた
そっと優しく 

何もかも上手く行くよ

あの日と同じ光は手に入らなくても

僕が出来るだけの光を集めるから

彼女は僕の手のひらに手を重ねる

君を連れて行くよ 此の風になって

パレードがやって来る前に
ディズニーランドへ


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