ライラック 《詩》
「ライラック」
嘘に閉じ込められた沢山の雀が
空を仰ぎ羽ばたこうとしている
僕は重みの無い
小さな言葉の断片が羅列された
紙切れを部屋中にばら撒く
路地裏に捨てられた腐りかけの
果物が入った箱から
まだ食べられそうなものを漁る
僕等はずっと下を向い生きて来た
世界が新聞記事に集中している時
僕と君は
腐りかけの果物を分け合い食べた
致死的な響きを帯びた風と
暁色に染まる窓辺
僕等はライラックの花を部屋に飾る
何処までも混じり気の無い瞳と唇
そして君の詩で世界が満たされる時
耐え難き痛みは消える
そう幻想文学の中で夢を見る
君と僕は詩を書いている
でもそう言う数時間の救済だけでは足りない
黄金色の夜にふたりは出逢い
手を繋ぎ歩き出す
ライラックの花を胸に抱き
雀が空を翔ぶ姿を想い描き
僕等は歩き出す
ファンタジーの中で
夢を見て死にたい