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anarchism - 上階の少女 - 《小説》

「anarchism」 - 上階の少女 -

袋ラーメンしか無いけどいい 

これしか無いんだ


卵も野菜も無いけど

白ご飯の残りが少しあるから
汁にご飯入れて食べようよ


少女は
泣き腫らした目で無理矢理笑った


市営住宅の上の階に住んでいる
小学生の女の子だ

お腹空いてだんだろう

そう言った僕に小さく頷いた


その少女は母親の
借金の取り立てから逃げる為に

いつも居留守を使う 


先週の金曜日は借金の取立てから

逃げる為に
母親と近くのドブ川の側溝の下に

身を隠して震えながら朝を迎えた


もう嫌だよ誠君 こんなの嫌だ

此処から逃げ出したい 

今直ぐに そう言った

僕はあえて話を逸らす様に

もう少ししたら
バイト代が入るんだよ

そうしたらレストランに行こうよ

フランス料理おごるよ! 

パスタとかカレーとか
ふざけた感じでそう話した


少女は少し考え込んで 誠君…


パスタはイタリア 
カレーはインドじゃない?


そうだっけ 

俺 日本人だから良くわからないや 

とにかく腹一杯食わせてやるからよ 

そう言った僕に


少女は
屈託のない笑顔で笑ってくれた

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