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スポーツを通じて社会の構造的不平等を知る。

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こんにちは。いつもコラムをご覧いただきありがとうございます。野口です。

スポーツで国際協力?

よく、スポーツで国際協力ってイメージがわかないのですが、どういうことですか?と尋ねられます。

ボールやユニホーム(時には食料や生活必需品)を寄付する。
著名なアスリートにメッセージを発信してもらう。
試合で募金を募る。

こういった協力もあるでしょう。でも、今回は、そうじゃないアプローチを1つ紹介します。ちなみに、「寄付」は簡単にできるからこそ、慎重になる必要があることは良く知られている事実です。映画、「ポバティ―・インク あなたの寄付の不都合な真実」は、気軽にした寄付の行く末や現地での影響を考えるきっかになるのでお勧めします。

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私はスポーツは、「社会の構造的不平等を考えるきっかけを与えてくれるもの」だと感じています。上手くプログラムをデザインすることで、異なる立場の人たちとフラットに対話し、草の根レベルで社会について考えるきっかけを与えてくれます。

サッカーで国際交流をしながらジェンダーの課題を語る

2015年にドイツのベルリンで行われた国際女子サッカーフェスティバルに参加しました(主催者はDiscover football)。応募した理由はコンセプトに惹かれたからです。

世界中から集まる女子サッカー仲間とミックスチームを作って試合をしながら、世界のジェンダー課題を議論しませんか?

簡単にイベントの概要を説明すると、世界中(28カ国)の女子サッカーに関わる、選手、指導者、審判、スタッフ約100名がドイツのベルリンに集まり、国をごちゃまぜにしながらチームを編成し、フットサルよりも少し広めのピッチでリーグ戦を行いながら、隣に設置された特設ステージで1日中(晩まで)「ジェンダーとサッカー」について語るパネルディスカッションが展開するというイベントです。(大会の詳細は、以前、別の媒体で書かせていただいているので、もしご興味あればご覧ください。)

もちろん、試合は試合で楽しかったのですが、参加者が登壇者となり各国の女子サッカーの現状とジェンダー課題を語ったり、フランスの貧困家庭の黒人女性とスポーツを題材にした映画上映会をしたり、2015年カナダ女子W杯の人工芝開催に声を上げる、各国の女子サッカー代表選手のメッセージを運動上に掲示したり、7日間、ジェンダーに関する議論の渦の中で参加者と過ごすことで、他愛のない会話から、深い話にもなりました。

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「ケニアの女性コーチは、貧困のため、年の離れたおじいさんと結婚させられそうになったそう」、「家族を助けるためにタイで始めた出稼ぎで酷い暴力に会いカンボジアの国境まで走って逃げた話をカンボジアの女性コーチがしてくれた」、「インドにいるチベット民族のサッカーチームを指導するチベット人コーチは、チベット民族は、中国で迫害を受けるがインドでは差別にあっていると話してくれた」、「コソボの女性コーチはセルビア-コソボ戦争の難民キャンプの様子を教えてくれた」、「イラクのコーチはアメリカがバクダードを襲撃した時にバクダードにいたそうだ」

今まで、ニュースの中でしか聞いたことがなかった、現実かどうかも実感がない、一生自分とは無縁だろう。と、どこか高を括っていた現実を、目の前の同世代のサッカー仲間の実体験として聞き、「遠くの世界の話」が、急に身近なことになりました。そして、彼女たちと私の違いを考えてみても、違いなんて何もない。たまたま偶然、私が日本に生まれ、たまたま不自由なく生きてこられただけでした。

これは、ただスポーツで交流しているだけでは、生まれなかったことだと思います。いかに、スポーツの場をデザインするか。そのイベントの目的をどこにおいて、何をしかけるか重要だと思います。

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「あなたも、私も何も変わらない」ことを知ることからのスタート

「あなたも、私も何も変わらない。」という感覚になれるかどうかが、社会を構造的に捉えることができるかどうかのポイントになります。「かわいそうだから。困っているから。助けてあげなきゃ。」という慈悲的な気持ちでの支援は、「支援をする側」と「支援を受ける側」の二元論を強調し、両者の分断を助長させてしまいます。「私もいつかあなたの立場になるかもしれない」もまた、「支援をする側」と「支援を受ける側」の役割が交換されているだけで、二元論は変わりません。そうではなくて、分かれていると思っている社会はつながっている社会である。という事実を体験的に理解していく必要があると思います。

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