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2022年サントラ伝道師アワード - その2

その2では記憶に残るスコアを称えるベスト・スコア賞を見ていきたい。サントラ・ベスト10と被る作品もあるが、ランキング外の作品も含まれる。筆者の音楽体験から言えば、後年も聞き続けるのはベスト10のみにランクインする作品ではなく、同賞にランクインされる作品である。ストレートに言えば、同賞にランクインしたスコアだけ聞けば2022年を語っていけるだろう。いずれも★4の最高評価を得ているスコアのみであるために順不同となっている一方、基本的には1作品最大2曲までランクインする形式となって

    • 2022年サントラ伝道師アワード - その1

      米国でのリリース日を基準に、昨年は過去最多となる550作品ほど聞いた。例年に倣い、歌を除くサントラ(厳密にいうところの“スコア”)を純粋に“映画音楽”(含むTV、ストリーミング、ゲーム作品)として評価した。なお、本編とはフィットしていて当然(していなければ監督や制作側の問題)という認識のため、本編との兼ね合いは考慮しない(物理的にも500本以上の映画を鑑賞する余裕がない上、サントラにまで考えを巡らすには複数回鑑賞する必要が出てしまう)。 レビューする上でどうしても音楽の個人

      • オビ=ワン・ケノービ 【サントラレビュー#12】

        総評: クリエイティブ上の違い 総合評価: ★★★ 作曲家: ナタリー・ホルト、ウィリアム・ロス、ジョン・ウィリアムズ ※本編視聴前時点でのレビューになります。 作曲家は“クリエイティブ上の違い”を理由にプロジェクトから解任されることがときどきある。作曲家の有名度合いに関係なく、最近で言えば『ブラック・ウィドー』のアレクサンドル・デスプラや『ジャスティス・リーグ』(ジョス・ウェドン版)のトム・ホーケンバーグなどが解任事例として記憶に新しい。結論から言えば、本作のナタリー・

        • ソー: ラブ&サンダー【サントラレビュー#11】

          総評: 原点回帰とプロレス音楽 総合評価: ★★★☆ 作曲家: マイケル・ジアッキーノ & ナミ・メルマド(日本語表記不明) ※本編視聴後時点でのレビューになります。 MCUでは初となる単独シリーズ4作目となるソー。MCUでは当たり前のようにコロコロと変わるが、作曲家も4人目となる。これまでのシリーズを振り返ると、最初の2作はアスガルド王国の王子という位置付けが明確な映画だっただけに、音楽も「正統派」なオーケストラを前面に出していた。バイキングをモチーフにした北欧神話が題

        2022年サントラ伝道師アワード - その2

          サントラレビュー: バズライトイヤー

          総評: 駆り立てる宇宙への冒険 総合評価: ★★★★ 作曲家: マイケル・ジアッキーノ ※本編視聴前時点でのレビューになります。 正直なところ、大きな期待を抱いて聴き始めたわけではない。たしかに、ジアッキーノは『インサイド・ヘッド』などピクサー作品における傑作も数々生み出している。他方、『トイ・ストーリー』シリーズ自体はそこまで音楽性豊かな作品とは言い難い。もちろん、本作はあくまでもスピンオフであり、本家とは必ずしも一緒ではないが、個人的な期待感を高めることはなかった。

          サントラレビュー: バズライトイヤー

          サントラレビュー: ジュラシック・ワールド/新たなる支配者

          総評: シリーズの紡ぎ手とは 総合評価: ★★★ 作曲家: マイケル・ジアッキーノ ※本編視聴前時点でのレビューになります。 『新たなる支配者』のレビューとは言え、同シリーズならびに前シリーズを総括したレビューとなってしまうことにご留意頂きたいとともに、ご了承願いたい。『ジュラシック・ワールド』の前シリーズである『ジュラシック・パーク』の作曲家は (敢えて指摘するまでもないだろうが) ジョン・ウィリアムズである。同シリーズのテーマ曲はウィリアムズ作品の中でも『スター・ウォ

          サントラレビュー: ジュラシック・ワールド/新たなる支配者

          サントラレビュー: トップガン マーヴェリック

          総評: 30年の熟成が成す味わい 総合評価: ★★★★★ 作曲家: ハンス・ジマー ※本編視聴後時点でのレビューになります。 本編視聴前に聴いた段階でサントラから感じていたことは、爽快感ではなく哀愁だった。予告でも「絶滅危惧種だ」と指摘されているように、昨今はドローンを活用した航空戦術真っ盛りである。『ミッション・インポッシブル』シリーズとは異なり、時代に合わせて作品を作り続けなかっただけに、前作のような“若いノリ”前面でも当然ない。旧作の良さをしっかりと受け継ぎつつ、3

          サントラレビュー: トップガン マーヴェリック

          サントラレビュー: The Survivor

          総評: 人間の暴力性と贖罪 総合評価: ★★★ 作曲家: ハンス・ジマー ※本編視聴前時点でのレビューとなります。 予告編を見たところ、大まかなストーリーはアウシュヴィッツを生き延びたボクサーの物語、と言ったところ。日本では基本的に試聴できないHBO作品ということもあり、ハンス・ジマー作品といえどもほとんど知られていないのではないか。 監督はバリー・レビンソンであり、ジマーとは『レインマン』を筆頭に幾度とタッグを組んだことがある。同作でジマーは大きく飛躍しただけに、多忙

          サントラレビュー: The Survivor

          サントラレビュー: 鎌倉殿の13人

          大河ドラマに新風を吹き込む無名の星 総合評価 (5点満点): 4.6 作曲家: エバン・コール ※ 本編未視聴でのレビューになります。 ここ数年、外国人作曲家が大河ドラマを手掛けるようになっている。本作のエバン・コールは映画音楽(と関連ジャンル)では無名に近い存在ではあるものの、非凡な才能を存分に発揮した。日本で活動する作曲家ではあるものの、海外では業界の厚さ(とそれに伴う厳しい競争)ゆえに力が発揮する機会がない無名作曲家が多くいるのかもしれない。もしくは、「大河ドラマ」

          サントラレビュー: 鎌倉殿の13人

          サントラレビュー: ザ・バットマン

          総評: ゴシックホラーの一貫した世界観 総合評価: 3.6 作曲家: マイケル・ジアッキーノ これまでのバットマンシリーズにおけるサントラのエッセンスを受け継ぎつつ、本作は新たな世界観を見事に構築している。エルフマン作では金管楽器をメインとしたヒーローらしさ(とアメコミらしさ)、ジマー作ではパーカッションを中心としたリアルな肉体派らしさが強かったが、本作ではピアノが中心となっている。『バットマンvスーパーマン』でジマー/ホールケンボルグも多少なりとも使っていたが、あくまでも

          サントラレビュー: ザ・バットマン

          映画音楽創作の極み

          映画: DUNE 作曲家: ハンス・ジマー 総合評価: 2.5 レビューが前後してしまうが、作曲の面で『ドント・ルック・アップ』の対極に位置すると考えられるのが本作である。音楽だけで評価することが実に難しい作品でもある。『ドント・ルック・アップ』では恐らく(と言っても映画音楽の作曲では当たり前でもあるが)完成したシーンごとにスコアが制作されたのに対し、『DUNE』ではむしろ原作・脚本のコンセプト(すなわち完成した映像に依存しない)に基づいた各種テーマ/モチーフ作りからジマー

          映画音楽創作の極み

          「感動的な経験」の音楽的な昇華

          映画: Redeeming Love 作曲家: ブライアン・タイラー/ブレトン・ヴィヴィアン 総合評価: 4.7 (各曲評価のみ見たい方は一番下へ) まだ2月初旬なので結論を急ぎ過ぎと思われるかもしれないが、本作は少なくとも2022年ベスト10にランクインするスコアであると自信を持って言える。ブライアン・タイラーと聞けばマーベルファンであれば「アイアンマン3」や「ソー: ダーク・ワールド」、車好きであれば「ワイスピ・シリーズ」、そのほか最近では「ランボー: ラスト・ブラッド

          「感動的な経験」の音楽的な昇華

          多彩な才能か、器用貧乏か

          Don’t Look Up 作曲家: ニコラス・ブリテル (Nicholas Britell) オーソドックスなオーケストラ・スコアからジャズ、コンテンポラリー、CMソングまで、実にさまざまなスタイルの楽曲(楽器も含めて)で構成されており、ニコラス・ブリテルの才能の豊かさを十二分に感じさせる。映画としてもシリアスなドラマからコメディまでさまざまな要素を含んでいるだけに、ブリテル自身「(今までで)もっとも難しいサントラだった」とコメントしている。 滅亡リスクに直面した世界観

          多彩な才能か、器用貧乏か

          スパイダーマン音楽としての集大成

          Spider-Man: No Way Home 作曲家: マイケル・ジアッキーノ (各曲評価のみ見たい方は一番下へ) スパイダーマン好きであれば、間違いなく大好きなサントラになるだろう。3代にわたるスパイダーマンのテーマ曲に加え、各種ヴィランのテーマもうまく取り入れており、バラバラだったスパイダーマン映画を一つにする音楽となっている。映像・ストーリーとしても成功を収める公算が大きく、筆者も“映画的”には賛成する作成手法であると考える。もっとも、“音楽的”に賛成するかは別問題で

          スパイダーマン音楽としての集大成