スパイダーマン音楽としての集大成
Spider-Man: No Way Home
作曲家: マイケル・ジアッキーノ
(各曲評価のみ見たい方は一番下へ)
スパイダーマン好きであれば、間違いなく大好きなサントラになるだろう。3代にわたるスパイダーマンのテーマ曲に加え、各種ヴィランのテーマもうまく取り入れており、バラバラだったスパイダーマン映画を一つにする音楽となっている。映像・ストーリーとしても成功を収める公算が大きく、筆者も“映画的”には賛成する作成手法であると考える。もっとも、“音楽的”に賛成するかは別問題である。
タイトルの通り、NWHとしてのオリジナリティは乏しいと言わざるを得ない。これまでのスパイダーマン・スコアを再編集したようなスコアになっている印象が非常に強い。似た作品を挙げるとすれば、『パイレーツ・オブ・カリビアン』の4作目のサントラである。そのほか、『ドクター・ストレンジ』のスコア・雰囲気も組み込まれている。あくまでもスパイダーマンを主人公とした映画であるため若干に過ぎない一方、独自性の弱さをやはり目立たさせてしまう感がある。ただし、いずれもプロデューサー・制作会社(特にソニー側?)の意向も強く働いた考えられ、ジアッキーノ氏は関与できない部分も多くあったのかもしれない。
(やや余談になってしまうが)トリロジーの最後を飾る映画音楽はどうしても総集編的な作品になりがちである。独自性を強く発揮したサントラと思い浮かぶのは『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還』や『スター・ウォーズ シスの復讐』などがパッと思い浮かぶぐらいである。前作・前々作が映画として成功すればするほどこれまでの世界観を重視する風潮が強まり、手堅いスコアになるのではないか。
気になったスコアを幾つか。
Track 19: Shield of Pain
1:10過ぎから3:00手前にかけて、ホーナー、エルフマン、ジアッキーノ(スコア内の登場順)と3世代にわたるスパイダーマン・テーマが集結した部分がある(ただし、ジマー版は(たぶん)登場せず)。ジアッキーノ氏がここぞと思う箇所を抜粋した形ではあるが、映画の見せ場を象徴していることだろう(エンド・クレジットでも流れることを期待したい)。
Track 6: All Spell Breaks Loose
Track 9: Strange Bedfellows
この2曲は『ドクター・ストレンジ』の雰囲気を体現している(ただし、テーマ曲などは流れず)。
Track 7: Otto Trouble
こちらは反対に、『スパイダーマン2』のエルフマンそのまま。3:30過ぎに、エルフマン版テーマ曲が流れるかと見せかけて、ジアッキーノ版テーマ曲が流れてくる。ある種のいたずら心はジアッキーノ氏らしい(エルフマンなら迷うことなく、『ジャスティス・リーグ』のように場違いなテーマ曲を使ったことだろう)。ちなみに、グリーン・ゴブリンのスコアも使われているはずだが、グリーン・ゴブリンの曲をそもそも全く思い出せない。
総合評価 (5点満点): 3.0
オススメ: Track 23 - Arachnoverture
※ 4点満点での各曲評価
1. Intro to Fake News - ★
2. World's Worst Friendly Neighbor - ★
3. Damage Control - ★★
4. Being a Spider Bites - ★★★
5. Gone in a Flash - ★★★
6. All Spell Breaks Loose - ★★
7. Trouble - ★
8. Ghost Fighter in the Sky / Beach Blanket Bro Down - ★
9. Strange Bedfellows - ★★
10. Sling vs Bling - ★★
11. Octo Gone - ★★
12. No Good Deed - ★
13. Exit Through the Lobby - ★★
14. A Doom With a View - ★★★
15. Spider Baiting - ★★
16. Liberty Parlance - ★★
17. Monster Smash - ★★
18. Arc Reactor - ★★
19. Shield of Pain - ★★
20. Goblin His Inner Demons - ★
21. Forget Me Knots - ★★★
22. Peter Parker Picked a Perilously Precarious Profession - ★★★
23. Arachnoverture ★★★
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