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癌に対する新しい見解と治療


癌は、身体にとって厄介な同居人のようなものだ、とアテナ・アクティピスはその著書『The Cheating Cell』(ダマす細胞)で語っている。部屋を散らかしたまま掃除せず、仲間を連れてきては好き勝手に部屋を荒らしていく。挙げ句の果ては、家主の他の部屋まで仲間と一緒に移動し、侵略していく。

癌の原動力として、生物の進化を思い浮かべる人は少ないだろう。けれども進化と癌は密接に関連している。なぜなら、生命を生み出した歴史的プロセスが、癌をも生み出したからだ。

著者のアキティピスは、進化がいかにして癌の遍在化への道を開いたか、そしてなぜ癌が多細胞生物である限り存在し続けるのかを説明している。

『The Cheating Cell』は、この驚くべき関係を掘り下げ、がんの進化の起源を理解することで、研究者がより効果的で革命的な治療法を考え出すことができることを示している。

さらにこの本は、癌を地球上の生命の歴史という大きな流れの中に位置づけている。実際、単細胞が協力して多細胞体を構築する際に、一部の細胞が単細胞に戻ることなく、他の細胞を騙すことなく、どのようにして多細胞体を構築するのか。

単細胞生物から多細胞生物になった時期を数十億年前にさかのぼっていくと、このような協力的な細胞集団の中で、不正な細胞が生まれ、資源を過剰に使用し、複製が制御不能になり、がんが発生したことがわかる。

この進化論的なアプローチは、癌に対して単純な「根絶」ではなく、長期的な「管理」または「共生」を目的とした治療法として、新しく有望な選択肢を提供してくれる。

海綿動物、サボテン、犬、象など、様々な種に目を向けると、腫瘍を抑制する新しいメカニズムや、多細胞生物ががんを抑制するために進化してきた多くの方法が発見されている。

癌は私たちの生物学的な過去、現在、未来の一部であり、進化に抗して勝つことはできないことを受け入れることで、治療はより賢く、より戦略的で、より人間らしいものになるのだ。

人間や動物だけでなく、植物、菌類、藻類など、すべての多細胞生物にとって、癌は存在する。つまり癌は、すべての生命が持つものに過ぎず、多くの生物は癌で死ぬことなく生き延びることができると理解できると、心強くなる。

著者のアキティピスは、このような生物レベルの癌に対する理解から、細胞が体内で変異し、競争し、進化するという細胞(および遺伝子)レベルまで、わかりやすく説明している。

この理解は、癌治療において何が間違っていたのか、どうすればもっと良くなるのか、癌を致死的な病気からコントロールできる病気へと変えるための重要な示唆を与えてくれる。






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