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【札束で健康を買った話】

1.生活習慣病の恐怖

 現代社会はストレスが多い。ストレス解消の手っ取り早い手段は、うまいものを食って酒を飲むことだ。
 現代人は重いものを持たない。仕事はマウスやキーを動かすだけ。買い物は自家用車、重いドアやリアハッチも電動だ。
 時間は残酷だ。貧しい人も富める人も、毎年一歳ずつ年を取る。年を取れば筋肉は衰え、基礎代謝は減っていく。
 かくして、栄養のインプットは増え、消費のアウトプットは減り、結果多くの人が肥満気味となり、生活習慣病の恐怖に怯えることになる。
 本連載は、健康に赤信号が灯ってとうとうメタボ指導を受ける羽目になった私が、パーソナルトレーニングと糖質制限で健康を取り戻すまでのお話しです。

筆者の体重の推移(約81kg⇒約74kg)

2.きっかけは、憧れから~ロールモデルの重要性

 内藤忍という方をご存じだろうか? 東大経済学部卒で、MITのスローンスクールに留学した後、日本のインターネット証券の草分けであるマネックス証券の創業に加わった方です。年齢も近く、彼の著書『資産設計塾』は、私 が個人投資を始めるにあたり、大変参考になったものです。
 内藤さんを講演会でお見かけした時の姿は、長年勉強ばかりしてきた人に特有の、頭が肩より前に出た猫背気味の姿勢でした。もし彼のことを「体育会系か文化系か」と訊かれれば、即座に「文化系!」と答えるぐらい、運動とは無縁の「こっち側の人」に見えたものです。
 私はこれまで、運動は大の苦手でした。野球をすれば、トンネル。サッカーボールを蹴ろうとすれば、空振り。バスケットでは何をしたらいいかわからず、ウロウロ。走っても、跳んでも平均以下。そんな私の学生時代は、電子工作や映画や音楽で彩られ、「文化系一直線」という感じでした。
 就職してからも、付き合いで始めたゴルフはいくら習っても上手くならず、挫折。階段とエスカレーターがあれば、迷わずエスカレーターを選び、仕事はマウスより重いものは動かさないデスクワーク。在宅勤務の日には、万歩はおろか、一日に千歩も歩かない日すらよくありました。
 ところが、あるときふと内藤さんのブログを見て驚きました。そこには、見事におなかが引き締まり、鍛え抜かれた上半身の内藤さんの写真がアップされていたからです。「え? 内藤さんは、こちら側の人じゃなかったの?」と、なんだか裏切られたような気持ちがしました。
 しかし一方で「内藤さんにできるのなら、もしかすると自分にもできるかもしれない」とも感じました。私の中に、パーソナルトレーニングへの興味が生まれた瞬間でした。

3.降圧剤の恐怖〜私はこれで太るのを止めました!

 さて、仕事の憂さを「エネルギー充填120%」などと言いながら、お腹いっぱい以上に食べることで晴らしているうちに、 私のウエストは単調に増加し、とうとう1メートル近く(96cm)にまでなっていました。
 これ以上ウエストが大きくなると、ユニクロの店頭には合うズボンが売られておらず、なんだかユニクロから出入り禁止を食らったような気持ちになりそうです。
 また、
「おなか周り」が「腰回り」より大きくなると、ベルトでズボンを止めておくことが難しくなります。
 このままでは、食レポ芸人のイシちゃんや、お笑い芸人の芋洗坂係長みたいに、サスペンダーでズボンを釣ることになるのも時間の問題でした。
 いつまでも「まいうー」などと言いながらラーメンと唐揚げをビールで流し込んでいる場合ではなさそうです。
 トドメを刺したのが、血圧でした。とうとう血圧の下限が規制値に引っかかり、ウエストの85センチオーバーと合わせ、「メタボ健康指導」を受けなくてはならなくなったのです。

現在は血圧も正常範囲に戻った!


 このまま行けば、血圧を下げる薬(降圧剤)服用まっしぐらです。すでに痛風やコレステロールを下げる薬など、いくつかの生活習慣病薬は飲んでいましたが、さらに追加で処方されそうな降圧剤には「活力が減った、もの憂い、文章が書きにくい、新聞を読む気が減る」など、知的活動を生業にしている私にとって恐怖そのものの副作用があると聞いていましたので、

降圧剤を飲むことだけは、何としても避けたかった

のです。
 その時、頭に浮かんだのが、内藤さんがパーソナルトレーニングで筋肉ムキムキになった写真です。
 自慢ではありませんが、私はこれまでスポーツクラブに入会しては、3回しか通わずに退会したり、インナーマッスルを鍛える「コアトレチェア」を30万円以上出して買い、やはり3ヶ月ほどで洗濯物置き場にした黒歴史があります。
 また、「運動するから」と言って妻にねだって誕生日プレゼントとして買ってもらったダンベルは、クローゼットの奥の見えないところにコッソリ隠してあります。
 そんな私にとって、時間のあるときに「いつでも通える」スポーツクラブは、「今日でなく明日にしよう」という言い訳の温床となり「いつも通わない」スポーツクラブへと変貌してしまいます。
 また、運動器具は、いくら豊富なメニューがあっても、いつかは飽きてしまいます。
 しかし、パーソナルトレーニングは、トレーナーという「人間」と日時を決めて面会(セッション)の約束をします。

社会人であれば、人との約束は守らねばなりません。

もしかするとこれなら、続くかもしれません。30日以内なら、返金保証もあるようです。
 こうして、降圧剤の恐怖とメタボ指導のおかげで、かなり高額な買い物であるパーソナルトレーニングジムへの入会を決めることになったのです。
 

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