見出し画像

【ビジネスマン必読書『君主論』全文を統計解析してみました】第7回:出現頻度から読解のカギとなる人物を考察

世界的古典のウンチクを語れる知性派オトナになりたい人の為のデータ分析と題して、マキャベリの名著『君主論』の全文を解析していくこのシリーズ、前回までの試行錯誤の末、

ついにイタリア語原版から登場人物を出現頻度で一覧抽出するところまでたどりつきました。

今回は、そのリストを見ながら、いろいろ考察をしていきましょう。

出現頻度1位は予想通りのあの人、ただし2位以下が興味深い

前回の結果を今一度、振り返ってみましょう。

1位は私には予想通りでした。著者のマキャベリが心酔していた中世イタリアの英雄、チェーザレ・ボルジアです!

英断と気概に富んだ英雄として、『君主論』の中では大絶賛されています。

肖像画を見ても瞭然なイケメンぶりのせいか、日本でも少女漫画や宝塚で人気ですね。最近では、惣領冬美さんの歴史漫画『チェーザレ』という大作が、まさにこの人物を主人公にすえています。

そして出現頻度2位は、そのチェーザレ・ボルジアのお父さんにあたる、教皇アレクサンドル6世です!

『君主論』の中ではこちらもきわめて高い評価を受けています。このボルジア家の親子二人で、『君主論』全体の人名登場頻度の20%を占有しちゃっています。

問題となるのは3位と4位!

続いて、出現頻度第三位を見てみましょう。こちらは、フランス国王ルイ12世となります。

ウィキペディアの記事を見ても基本的には酷評されている君主。

マキャベリの筆致もこの人を描く時はやや辛辣な気配を帯びます。

チェーザレ・ボルジア(とそのお父さん)はよくて、ルイ12世はよくない、というのがマキャベリの基本的なスタンスとなっています。このあたりの機微は後にさらに掘り下げてみたいと思います。

そして4位には、教皇ユリウス2世が入ります

私個人の見解ではありますが、出現頻度が4位のこの「ユリウス2世」こそ『君主論』の隠れた主役なのではないかと思うほど、マキャベリはこの人物にしばしば言及しています。

それもマキャベリ自身はこの人物のことをあまり好きではないのか、「できるだけ触れたくない」様子を匂わせつつ、「この時代を代表する傑物として評価せざるを得ない」という迷いをどこか感じさせます。

「マキャベリはさんざんチェーザレ・ボルジアをヨイショしているのだが、そのチェーザレを滅亡させたユリウス2世を結果としてしぶしぶ評価している」ような度合いがあります。

三国志に詳しい人なら、「曹操を評価したい作者が、どうしても嫌いなはずの司馬懿もセットで評価せざるをえない」状況にある、という比喩で、わかっていただけますでしょうか。

共起性ネットワーク分析をかけても、この四人こそが『君主論』全体の結束点である!

KH Coderに戻り、『君主論』に登場する人物名を共起性ネットワーク分析にかけてみると、以下のような図が得られました。

このネットワーク図は、以下のように読み取れます。

・チェーザレボルジア(白い円)は独立した存在として、君主論全体を支えている
・アレッサンドロ6世は、チェーザレボルジアの父として近接しつつも、「アガトクレス」のような古代ギリシャや古代ローマの「悪の英雄」の系譜に連なる傑物として評価されている
・ルイ12世とユリウス2世は、そのボルジア父子に対するライバルグループの頭目として存在感を持っている
(ただしこの図では見えないことですが、マキャベリの評価としてはユリウス2世オシ、ルイ12世についてはしばしば言及する割にそんなに高く見ていない)

次回以降で、これら4人を「『君主論』読解のためのキーパーソン」とみなし、より詳細に考察していきますね。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
note.user.nickname || note.user.urlname

もっともっとよい記事を書けるよう、日々、読書と外国語習得にますます精進中

¡Gracias de nuevo!
1
とにかく本が好き!そして世界の様々な言語が好き!世界各国から集めた本を「なるべく原文の言語で」読む日々を送っています。特にスペイン語圏との「オバケ・妖怪・幻想文学の話」交換に邁進中。日本の伝統オバケを輸出し海外の伝統オバケを輸入したい。
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。