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【読書録】『自分の時間を取り戻そう』ちきりん

少し前の記事で、「ちきりん」さんの『マーケット感覚を身につけよう』をご紹介した。その記事が好評で、クラッカーをいただいたので、調子に乗って、彼女の別の著書をご紹介しようと思う。

タイトルは『自分の時間を取り戻そう』。副題は、『ゆとりも成功も手に入れられる たったひとつの考え方』。この副題のとおり、個人が直面する超多忙な生活の脱出方法について教えてくれる本。2016年。

この、誰にとっても身近なテーマを、4人の架空の人物の生活振りに当てはめて、具体例として語っているのが素晴らしく分かりやすい。これらの登場人物はどこにでもいそうで、リアルすぎて怖いくらいである。4人とも、忙しく、毎日、いわば首のまわらない生活を送っていたが、この本の説くところを実践して、自分の時間を取り戻し、有意義な人生を送れるようになる。ぜひ、本書で、この4人が人生を好転させていく過程を疑似体験していただければと思う。

忙しすぎるという問題の本質と、社会の高生産性シフトの両方の視点から見て、重要なのは、生産性の向上である、というのが本書の結論。以下、強く心に残ったところをまとめてみた。

「忙しすぎる」人たちの問題点

①長時間働くことによって問題を解決しようとしている。
②すべてのことを「やるべきこと」と考え、全部やろうとしている。なにもかも完璧にやろうとしている。
③不安感が強すぎて、NOといえなくなっている。
④「とにかく頑張る」という思考停止モードに入ってしまっている。

社会の高生産性シフト

●「生産性が上がる」とは、あらゆる資源の活用度合が高まること、あらゆる資源が、今までより有効に使われ始めること。

●社会の高生産性化は不可避(Uber, AirBnBの例)。新しい技術やビジネスを目にしたら、生産性という判断軸で評価することがとても重要。

●福祉制度としてではなく、生産性の低い人を労働市場から排除するためのベーシックインカム論が出てきている。社会を高生産化させていくしくみに関わる人だけが働き、それ以外の人の仕事は消えていく。

インプットを理解する・希少資源に敏感になる

●お金だけではなく、時間も「見える化」し、自分の時間を簡単に売らない。
●お金は、節約ではなく、有効な使い方を考え、価値ある支出を増やすこと。
●お金と時間以外にも、集中力や、思考体力などの希少資源がある。

アウトプットを理解する・欲しいモノを明確にする

●自分の欲しいモノを正確に理解する。そうでなければ、生産性が高くなるどころか、希少な資源を無駄にしてしまいかねない。

●生産性が高い生活とは、「時間やお金などの人生の希少資源を最大限有効に活用し、自分が欲しいモノを手にいれる生活」。

●人は誰でも自分がやってきたことを正当化したがる。すでに投入してしまった資源に拘泥し続けると、今持っている資源まで無駄になってしまう。私たちが大事にすべきは、過去ではなく未来(不妊治療や資格試験をやめられなくなる例。)。

●ついつい「周りの人がみんなやっていること」や「やるのが当然だと(世間で)思われていること」を、自分が手にいれたいモノだと勘違いしがち。でもゴールを間違えたら、人生の時間もお金も無駄になってしまう。

生産性の高め方①働く時間を減らす

●生産性を上げるには、インプットを減らせばよい。「投入する時間を制限する」ことが、生産性を上げるための鍵。労働時間を減らすことが大事なのは、それによって初めて真剣に生産性を上げようという気になれるから。

具体的な方法として、
①1日の総労働時間を制限する。
②業務ごとの投入時間を決める。
③忙しくなる前に休暇の予定をたてる。
④余裕時間をたくさん確保しておく。
⑤仕事以外のこともスケジュール表に書き込む。

●ビジネスでの成功者の多くが、若い頃の一時期、ものすごく忙しい働き方を経験しているから、忙しくて苦しい思いをせよというのは間違い。彼らは忙しい生活の中で、生産性の高い働き方を身につけたのだ。

生産性の高め方②全部やる必要はない

●「すべてできて当たり前」という洗脳、「ひとりで全部やれ」という思想から解放されよう。外注や分業やIT化など、生産性を上げるための極めて有効な手段を活用する。

●無駄な時間を減らすための具体的な方法として、
①「すべてをやる必要はない!」と自分に断言する。
②まず「やめる」(年賀状や名刺管理をやめる、アイロンは手放す、など)。
③「最後まで頑張る場所」は厳選する(学習曲線が8割のデキに到達してペースダウンし、学びの生産性が低くなってきたら、頑張るべき分野なのか考える)。
④時間の家計簿をつける

この本を読んでの雑感

私は、まさに、上記の「忙しすぎる人たちの問題点」に書かれている、「①長時間働くことによって問題を解決しようとしている」「②すべてのことを『やるべきこと』と考え、全部やろうとしている」典型的な例であったと思う。特に、外資系企業に入社する前は、仕事でも、プライベートでも、非生産的なことを、何の疑問も持たず、長時間かけて繰り返していた。

私が社会人になったのは、今から20年以上前のことだ。私の社会人のスタートは、日系の職場で、当時50代の日本人男性上司をはじめ、いわゆる、おじさんの多い環境に飛び込んだ。そして、そこは、長時間労働が美徳、という雰囲気に支配された世界だった。

終電を逃してタクシーで帰宅することも珍しくなく、土日も、どちらか1日は出勤していた。今思えば、ブラック企業だったと思うが、仕事を覚えて早く成長するためには、そのようにがむしゃらに働くことこそが必要だと思っていた。周りにも、そんな働き方の同僚が多かった。若かったし、体力も気力もあり、仕事に燃えていたし、上司も同僚も良い人たちばかりだったので、長時間働いても、それほど苦に感じることはなかった。

しかし、プライベートの時間は殆どなく、趣味もなく、深夜残業に備えた夜食の爆食いでブクブクと太ってしまった。忙しさがピークの時、割れるような頭痛がして、救急車で病院に運ばれたこともある(結局大事はなかったが)。それでも、その狭い世界での働き方に、疑問を持ったことはなかった。

しかし、その後、ご縁があって、とある外資系企業に転職した。

私の生活は一変した。

みんな、夕方5時とか、6時に帰宅するのだ。逆に、少しでも残業しようものなら、早く帰れとオフィスを追い出される。まだ日の沈まぬうちに会社を出ても、何をしてよいかわからず、戸惑った。まるで、1日が2回、あるような気がした。外国本社の同僚なんて、金曜日の現地時間午後3時にもなると、早々に帰宅していて、連絡が取れない。

そこで、「ああ、これが普通の人の生活なのか」と、理解した。自分が、いかに、人生を無駄な仕事に費やしてきたかを悟った。

(注:外資系企業にも、ブラック企業はありますし、部署や上司によって働き方が大きく異なることもあります。)

それから、私は、効率化を追求して、いかに無駄な時間を減らすかということに目を向け始めた。会社でも、プライベートでも。そして、この本を読んだとき、すべてが腑に落ちた。私が漠然と疑問に思っていたこと、やりたいと思っていたことを、きわめて明確に言語化してくれた。

少し前から流行っている「断捨離」にも通じるところがあると思う。断捨離は、不要なものを捨てて、部屋をすっきり美しくする、というだけではなく、不要なものにかかわる時間を解放するということで、生産性の向上、効率化につながり、本当に大事なことに時間を使えるようにするステップとして重要なのだと思う(お勧めの断捨離本のリストはこちらです。どの本もとても参考になりますよ!)。

そうして、私が断捨離をして「やめたこと」は沢山ある。時短家事にも興味がある(たとえば、時短和朝食など。)。これらを書くと長くなるので、また追って別の記事でまとめてみたい。

短い人生、あまりにも時間がなさすぎる、これでいいのか…、と、悩んでいるみなさんには、本書を自信を持ってお薦めしたい。

ご参考になれば幸いです!

※よろしければ、こちら(↓)もぜひ読んでみてください。


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