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【読書録】『「書く」習慣で脳は本気になる』茂木健一郎

今日ご紹介するのは、脳科学者として有名な茂木健一郎氏のご著書、『「書く」習慣で脳は本気になる』(2019年、廣済堂新書)。

脳科学の知見をベースに、夢や目標を達成するために、「書くこと」の効用を説く本だ。タイトルのとおり、書く習慣をつけることで、脳が本気になる、その結果、理想の人生を手に入れられる、というのだ。

ここに、この本で学んだことの要約と、読後の感想を記しておく。

要約

まずは、脳の性質について。

脳は怠け者。もともと、「楽をしよう、楽をしよう」という性質を持っている。(p4)

人間の夢や欲望を実現させるためには、怠け者の脳を本気にさせることが必要になってくる。(p5)

そして、脳が本気になれない原因について。

脳が本気になれない原因は3つ。①コンプレックスを抱えている、②単調さが続く、③強制や命令を受けている。

本気スイッチを入れるには、①コンプレックスを逆手にとって言葉として表現する、②目標をつくる、③強制や命令などの圧力を、自分がつくった楽しむべき課題に変換する。

脳は遊びを求めている。

ベストパフォーマンスは、脳の「フロー状態」(完全に集中して最高のパフォーマンスを出しながらも、どこかリラックスしている状態)から生まれる。(以上第1章、20-35p)

次に、書くこと、記録することの意味について。メタ認知。無意識を意識化することになる。

記録することは「メタ認知」(=自分をあたかも外から観察しているかのように認識する能力)を働かせること。(p43)

無意識を意識化する有効な方法は、無意識を言語化すること。つまり文字にして書くこと。(p67)

そして、脳科学者である著者が、脳科学について触れているくだりが多いことが、本書の特徴だ。

世の中が、「偶有性」(確実なことと不確実なことが混ざり合っていること)に満ちており、脳が、確実性と不確実性のバランスを取りたがることについて、繰り返し述べられている。

この世の中は、偶有性(確実なことと不確実なことが混ざり合っていること)に満ちている。(p19)

人間の脳は予想できるものと、できないものの割合を一対一くらいにバランスを保とうとする。そのバランスの取れた状態が脳にとっては一番楽しい。(p60)

脳は確実性と不確実性のバランスの取れた状態を好む。(p61)

人間の脳は、確実なものと不確実なもののポートフォリオ(組み合わせ)のバランスを取ろうとする。そのときに、確実なものが多ければ、それだけ不確実なものを積み増せることになる。(p68)

確実性を積み増すためには、脳の外に、記憶を溜め込む場所を作ればよい。そのためには、記録すること、書くことが有用。

脳の中に確実なものを持つには、脳単独で処理せず、脳の外に「固定点」を持つこと。脳以外に記憶を溜め込める場所を持つこと。(p70)

脳の記憶システムの限界を超えるためには、記録しかない。記録することだけが本気モードを継続させることに役立つ。書いて脳の外に不動点を築くことで、脳は新たな確実性を手にいれる。そのうえでさらに不確実性を積み増せるようになる。(p71) 

書いたものは脳にとってのキャピタル(資本)になる。(p72)

いまや、インターネット上でブログを書くということはその人の社会的な評価に直結する。文字を書くことは、自分が書いたものが自分にとってのキャピタルになる。書くこと、表現することが、自分の資産になる時代だ。(p76)

書けば、なぜ夢や目標がかなうのか。

脳は過去・現在・未来を識別できないから、未来の夢も現実に実現したこととして認識する。そうなると、脳から報酬物質であるドーパミンが放出されて、脳が本気を出す。本気を出した脳は実現のためのアクションを次々と思いつき、それを一つ一つこなしていくことで、さらにドーパミンが出て、いつの間にか夢が実現していく。(p85)

脳の自然な状態は、ひじょうに柔らかい。脳の中のイメージだけで夢や目標をもっていても、すぐに忘れてしまう。

硬さと柔らかさのバランスが取れたハイブリッドなシステムをつくる必要があるが、脳単独ではそれができない。だからこそ、かなえたい夢や目標を書いておく。

書いたものを見るたびに、脳の記憶を司るところに夢や目標がインプットされ、強固な記憶として残っていく。本気になった脳の前頭葉が、側頭葉から夢を達成するためのさまざまな情報を引き出してくれる。(p86)

では、夢や目標を、どう書けばよいのか。

人間は、自分が考えていることをすべて把握しているわけではない。自分が何を本当は考えているかは、書いてみて始めてわかること。無意識の泉に沈んでいる思いが、書くという作業を通して浮かび上がってくる。(p91)

書くという行動は、自分の「無意識にアクセスする」こと。無意識の中では、「書く準備」がちゃんとできている。(p92)

自分の願いをかなえたいのであれば、まず頭の中で「自分の願いは何なのか」を整理してから紙に書くのではなく、何も考えていない状態から白紙に向かって吐き出してみる。整理されていなくても体系化されていなくてもいいから、そのときに思いついたことから次々と書き記していくほうが、自分の夢を見つけていく近道になる。(p96)

整理されていない状態のまま、とにかく書いてみればよいようだ。「一人ブレスト」をすることや、「早すぎる自伝」を書くというアイデアが紹介されている。わかりやすく説明されており、誰にでも実践できそうだ。

感想

怠け者の脳。遊びが好きな脳。確実性と不確実性のバランスを取りたい脳…。

こういう脳の性質を学べたことは、新鮮だった。なんだか、自分の体の一部である脳が、とても人間くさくて、かわいらしい、別の生き物に思えてきた。新鮮だった。

脳を本気にさせる方法については、目から鱗だった。脳のノリが今一つ良くないな、と思ったときに、遊び心を出して脳を楽しませ、目標を設定して、ゴールを目指すわくわく感を演出するなど、いろいろとできそうだ。

そして、本書のテーマである、書くことが脳にもたらす良い影響については、学ぶところが多かった。脳の確実性を増すために、書いて記録をして、脳の外に固定点、不動点をつくること。そうすることで、不確実性を取り入れることができる、というのも合点がいった。

イメージとしては、PCと外付けHDDの関係に似ていると思った。脳がPCだとすると、外付けHDDが書いたものや記録したものを溜めておく記録媒体だ。

気づいたらPC内にごっそり溜まっていた、ごちゃごちゃしたファイルを整理して、HDDに送って保存する。そうすると、PCはとてもすっきりするし、動作が一気に軽快になる。そして、HDDに送った情報は、確実に保存され、いつでも必要なときに呼び出して確認することができる。

私には、日記をつける習慣があり、長らく、文字で自分の思いをまとめることを続けてきた。それらはまさに、「メタ認知」「無意識の意識化」という作業だったのだろう。

※私の日記のつけ方や、日記の効用について考えたことについては、以下のnoteの記事にまとめました。

さらに、ブログを綴ることが、自分の資本になる、というくだりも嬉しかった。私は、去年から毎週noteでの記事アップを継続してきて、気が付くと記事が400を超えていた。自分の書いた記事がこれからの財産になると思うと、とても楽しみだ。

今後も、ブログ(note)も紙の日記も、今までどおり、続けていこうと思う。そして、これからは、それに加えて、「一人ブレスト」で、好きなことやワクワクすることを書いてみることや、「早すぎる自伝」を書いてみることにもトライしてみたいと思った。

ご参考になれば幸いです!


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