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【読書録】『頭のよさとは「説明力」だ』齋藤孝

今日ご紹介する本は、齋藤孝氏の『頭のよさとは「説明力」だ』(2019年、詩想社)。

この本は、仕事でもプライベートでも、物事を人にうまく説明できない、というコンプレックスを持っている方に、是非読んでいただきたい本だ。

まず、次のくだりに、私は大いに共感した。

 説明力を構成する要素はいくつかありますが、まず、第一に挙げることができるのが、この「時間感覚」です。
 現代社会において私たちは、常に時間がないなかで意味をやり取りしなければいけない状況にあります。このとき、この意味のやり取りが的確に効率よくできる人は、まわりからもたいへんありがたがられるのです。
 上手な説明はまわりの人たちの時間を節約し、その幸せに貢献しているのです。(p17)
 わかりやすい説明とは、ヘリコプターで目的地に直接下りるようなものです。
 まず、事の本質、ポイントから明示して、てきぱきとした話し方、簡潔な構成で、最低限の時間で完結するのが上手な説明です。(p29)

大切なのは、「時間感覚」「最低限の時間で完結する」ことだという。そして、それが、まわりの人たちを幸せにするという。

それくらい、時間というのは、誰にとっても貴重だということだ。まわりの人たちの時間を無駄にするような、冗長な、わかりにくい説明をしないように心がけることが、とても重要だということに気づかせてくれた。

そして、この本の良いところは、とても読みやすいところ。ナナメ読みでも、するすると頭に入ってきて、小1時間もあったら読み終えてしまう。

それなのに、すぐに実践できるアイデアが満載だ。これらのアイデアを、実践したり、練習したりするだけで、誰でも、説明力が格段にアップすると思う。

例えば、以下のようなアイデアが、使える!と思った。

- ポイントは3つに絞る(p40)
- 説明では現物が最強の武器になる(p54)
- 全体のなかで、どこを話しているか常に明確にする(p83)
- 説明の下準備に「目次」を活用する(p86)
- ファストとスローの相乗効果(p92)
- 「A4一枚の構成力」で説明力は向上する(p108)
- 一五秒間の究極の説明であるCMをヒントにする(p140)
- 参加型の説明が心を動かす(p175) 
- 説明に必要な「お得感」を演出する(p181)
- 緊張感を見せてはいけない(p208)
- パーソナルな部分を見せるようにする(p241)
- 上手な説明を褒め称える習慣をつける(p218)

見出しだけ見ると、ごくありきたりの内容だと思えるかもしれない。騙されたと思って、それぞれについての内容を、ぜひ読んでみていただきたい。

なぜそうなのか、という説明がクリアで腹落ちする。また、具体例なエピソードがわかりやすく示されていて、自分にもできそうな気がしてくる。

このタイトルで本を出されるだけあって、斎藤氏の説明力は抜群だ。こういう、易しく明快な説明ができるような人に、わたしもなりたいと思った。

この本が出版されたのは、コロナ以前の2019年だが、2020年にコロナ禍が始まってから、人と直接会う機会が激減し、意思疎通のハードルがさらに上がったと感じる。

特に、リモート環境でのコミュニケーションにおいて、説明が分かりにくいと、相互に本心が分かり合えなかったり、誤解が生じたりしがちだ。それにより、お互い疑心暗鬼になったり、悶々としたりしたままの状態が、長い間続いてしまうかもしれない。これは、メンタル的にもキツい。

そんななか、すっきりと簡潔に要点をコミュニケーションをできるニーズがますます高まっていると思う。

ところで、個人的な感想なのだが、最近の若い人たちを見ていると、私たちアラフィフや、その上の世代と比べて、簡潔に説明する力を持つ人が、ずいぶん多いように感じている。

私の推測だが、若い人のほうがSNSなどでの発信に慣れているからではないかと思う。

たとえば、ツイッターでは、140字の文字制限のなか、意識せずとも、短く文章をまとめる訓練ができるだろう。

また、私は最近、Voicyという音声メディアで、音声パーソナリティさんの音声放送を聞くことが多いのだが、そこで気づいた。「結論から先に言います」といって、要点をズバリと先に言ってくださるパーソナリティの方が、とても多いのだ。1チャプター10分、という限られた時間を意識すると、必然的にそうなるのかもしれない。

この本を読んで、時間感覚を意識し、簡潔に話す努力をして説明力を高めなければならないのは、私を含めたロートル世代なのかもしれない、と思った。

ご参考になれば幸いです!

※過去にご紹介した齋藤孝さんの書籍についての記事もどうぞ。どちらもおすすめです!


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