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【読書録】『梟の城』司馬遼太郎

作者最初の長編小説。直木賞受賞作。

一言で言ってしまえば、手に汗握るハラハラドキドキの忍者小説なのだが、忍者たちの宿命と、苦悩や葛藤が、格調互い文体で、とても鮮やかに描かれている。豊臣秀吉の時代の世相の描写も詳しく、フィクションではあるが、歴史小説としても楽しめる。

主人公の伊賀忍者、葛籠重蔵と、彼を愛する、木さると小萩の、2人のくノ一とのやり取りも絶妙。女心をとてもよく捉えている。少々官能的なシーンもある。

(以下ネタバレ注意)

ひとつ、印象に残った箇所をご紹介。伊賀と甲賀という宿命的な敵対関係にある、重蔵と小萩が、互いに愛を告白した後、小萩から、一緒に逃げて欲しい、と懇願されたときの重蔵のセリフ。

「断る。重蔵は男じゃ。男である以上、いつかは愛した女にも倦きるが、しかし仕事には倦きぬ。男とはそうしたものじゃ。薄情なことを申すようじゃが、重蔵は情けに溺れて、仕事を裏切るわけには参らぬ。」

……だそうです。男性読者のみなさま、いかが思われますか?


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