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【毎日note451日目】辛くて素晴らしい読書/『推し、燃ゆ』感想

本日、「本屋大賞」が発表されましたね!・:*+.(( °ω° ))/.:+

読書が好きな私は、結果が気になって、ずっと本屋大賞の公式Twitterを追っていました。

本屋大賞の作品は、バンバン映像化されるし、本屋の皆さんが選ぶだけあって、本当に温かくて面白い、人の心にまっすぐ届く作品が多いなと思います。

本屋大賞受賞作の町田そのこさんの『52ヘルツのクジラたち』も超気になるし、何ならノミネート作品全て面白そうです😊😊


そこで暇人な私は(ぼそっ)、今回、遅れながらではございますが、ノミネートされた10作品、全て買って読んで、感想を書いてみたいと思います!

(※どっちも読んでる方はいないと思いますが、アメブロの読書ブログと時々内容が重なることをお許しください💦💦)


本日はまず、1作目。


😀😀😀

私は最近、何かと無駄に葛藤しており、日常生活が辛いので。(※通常運転ともいう)


読書は好んで「楽しい」「ハッピーエンド」で幕を閉じる本を読むことにしているのですが…。

いやあ。やっちゃいました…。


久しぶりに読むたびにどんどん辛くなり、追い詰められるような心の叫びが描かれている本を読んでしまいました。

辛くて素晴らしい読書体験です。

読んだのは、先日、芥川賞も受賞された、宇佐見りんさんの『推し、燃ゆ』(河出書房新社)です。

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「推しが燃えた。ファンを殴ったらしい。」



ーーという衝撃的でリアルを感じる一文で始まる本作は、男女混合アイドルグループ・「まざま座」のメンバー・上野真幸をストイックに推し続ける、高校生・あかりの心の叫びが描かれている物語です。


あかりは、4歳の時に12歳の彼が演じていたピーターパンに虜になり、高校生になってから、再び彼を熱烈に推し始めます。



本作は、あかりの「推し」活動が熱心に描かれているかと思いきや…。

彼女の「生きづらさ」の方にスポットが当てられていました。


あかりは恐らく、本の中では直接的な言葉は出てこないのですが、発達障害だと思います。

絶望的に片付けが出来ないのはもちろん、推しのライブに行ったままの状態のリュックサックで学校に来たり、教科書を友達に借りたまま返すのを忘れたり…。


バイト先でもミスを連発して、「推し」友達以外の周囲との関係も非常に悪く、挙句の果てには、家族にも病気を正しく理解されず、厄介もの扱いされていたので、とても生きづらかったのではと思います。

そんな彼女は、「推しを推す」ことによって、ようやく心身の重さから逃れられ、自身の存在を感じられ、あきらめて手放してきた何かを叫び、解放することができたのでした。

😀😀😀

アイドルとの関わりはファンそれぞれ十人十色のようで、推しのすべての行動を信奉する人、善し悪しがわからないとファンとは言えないと批評する人、推しを恋愛的に好きで作品には興味がない人…と色んなパターンがあるようです。


あかりは、推しの作品も、人も、まるごと正しく解釈することに命を懸けていました。


ラジオ、テレビ、あらゆる推しの発言を聞き取り、書きつけたものは20冊を超えるファイルに綴られ、CDやDVDや写真集は3つずつ買い、放送された番組は録画して何度も見返す…。

あかりは、それらを記録としてブログに公開していたのですが、ブログでの彼女の文章は、落ち着いていて、とても洗練されており、ファンも多かった。



半分フィクションの世界は皆が優しくて、アイドルの彼との関係も、携帯やテレビ画面、ステージや客席…というように、一定の隔たりがあるからこそ、関係性が壊れず、安らぎを与えてくれるんだ…といったあかりの主張にはなるほど…! と唸ってしまいました。


😀😀😀

私は、アイドルや芸能人といった方に、情熱を注ぎ込んだことが今まで一度もなくて。

何かを「推す」人の心理がイマイチわからないことが多かったんです。


読書は大好きでお金をドバドバ注ぎ込んでいるけど、それはあくまで「自分が楽しむ」ため。

時には、自分の苦しみを解放してもらうためでもありました。

アイドルや芸能人といった、特定の誰かに入れ込んでも、その人と繋がれるわけでもないのに、虚しくならないのか…? と愚問を抱いておりました。(本当にごめんなさい)


でもそうじゃないんですよね。

あかりは、推しの恋愛も気にしてなかったし、関係性を結びたいわけでもありませんでした。


ただひたすら彼を推すことが「生きる」ために必要で、推しを推すために、慣れない居酒屋で無理して働き、周囲との関係性が悪化して、やせ細って、学校生活すらままならなくなっても、推しに囲まれていないと不安で、呼吸をすることすら難しかった。

楽しさもあっただろうけど、「推す」生活は、苦しさや葛藤も多かったのではと思います。

😀😀😀

体力やお金や時間、自分の持つものを切り捨て、推すことに打ち込んだ末に、自分自身を浄化された気でいたけど、推しは、ファンを殴り、炎上し、ファンはどんどん減っていき、人気も目に見えて下降してゆくーーー。


そんな壮絶で辛い時期の、あかりの心の叫びや生き様が125ページほど一気に描かれるわけですが…!


もうなんというか彼女の必死で壮絶で不器用で、「生」にギリギリのところでしがみついてる生き方が苦しくて眩しくて、胸が何度もギュッとなりました。

もう少し周りの理解があれば、もっと生きやすい道もあったのでは…とも思うのですが、家族も家族で色々問題を抱えているんですよね。


でもラストを読んで、あかりはそんなに弱い子でもないとも感じました。


「推しは命にかかわるからね」という言葉の意味がほんの少しわかったような。そして心のよすがとなるものの大切さや距離の取り方も考えさせられた、とても印象深い一冊となりました。


さゆ


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