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クリスマス・ストーリー 2020

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今夜は温かいポタージュを

今夜は温かいポタージュを

Christmas Story Day10

メリークリスマス!

サンタクロースは無事に我が家にもやってきた。NORADの追跡記録によれば、我が家には深夜02:58に到着して、76,895,523,482番目に配達終了したらしい。

ベランダの洗濯ポールの位置をずらして、サンタクロースの着地点を確保しておいたし、念のため、玄関もきれいにしておいた。どちらからでもアクセスできるように。

ツリー

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今夜、サンタはあなたのもとに無事に飛行し続けています。

今夜、サンタはあなたのもとに無事に飛行し続けています。

Christmas Story Day9

毎年恒例、北アメリカ航空宇宙防衛司令部の12月のハイライトミッションが、サンタの追跡サービス。

1957年に始まったこの任務。
実はシアーズ百貨店がクリスマス向けの新聞広告に、サンタクロースと話せるという電話サービスを掲載しました。

ところが、なんと、電話番号のミスプリントで、あろうことか、その電話番号は北アメリカ航空宇宙防衛司令部の、大佐の赤電話、

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あなたにはもう騙されない

あなたにはもう騙されない

Christmas Story Day7

息子には黙っていたけれど、わたしはサンタクロースと電話で話した。あれは本当にサンタクロースだったのか、それともリックだったのか。

リックを元カレと言うには微妙だ。
あの頃、わたしはファッション業界のど真ん中でうろうろしていた。業界の目まぐるしさに付いて行くのがやっとだった。駆け出しのデザイナーだったリックとはあちこちで接点があった。業界人の集まるパーテ

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Believe!

Believe!

Christmas Story Day8 (← Day7の続き)

わたしを握るリックの腕からSiri の声が電子の波動となって伝わってきた。東京行キ新幹線ノ発車時刻ガ1時間後ニナリマシタ。

「一緒に来いよ」
リックがそう言ってきた。あまりにお気楽に、いつもの冗談のようだったから、真に受けなかった。

「……今度ね、東京は近いから」
と、わたしはリックの手を振りほどく。
アップルウォッチのデータ

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クリスマスとピアノと幼かったきみと

クリスマスとピアノと幼かったきみと

Christmas Story Day6

「コードについて教えて」
土曜の昼下がり、珍しく息子がわたしに訊いてきた。
「今どうしてもどうしても知りたくてたまらないの」

意外だった。
息子はママに何かを訊くなんてことはしない。
知りたくて知りたくてたまらないことは、たいがいの場合、Siriさんが答えてくれる。もしくはGoogle で検索する。

しかもコード?
そんなの、学校のプログラミングの授

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いつかきみに分かる日がくるまで、今は奇蹟について黙っておくね

いつかきみに分かる日がくるまで、今は奇蹟について黙っておくね

Christmas Story Day5

12月に入って、2回目の日曜日。
映画『34丁目の奇蹟』を息子と一緒に観た。
1994年の映画ということで、しかもさらに昔に遡った1947年の映画のリメイクだと聞いて、最初、息子は気乗りしない様子だった。

自分が生まれるずっと前の時代の話で、iPad もiPhone もGoogle もAmazon も存在していないから。

物語のヒロインはニューヨーク

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もしもし? 北極からですか?

もしもし? 北極からですか?

Christmas Story Day4

カフェを出て石畳の遊歩道を歩いているとiPhone がポケットの中で震えだした。

同時に聴き覚えのない、華やかなベルの着信音も鳴り渡る。ヨーロッパ中の教会が一斉にベルを鳴らしたらこれほど響くのかも知れないと言った勢いで、iPhone がポケットの中で鳴り響いている。

あまりの大音量に道往く人がこちらを振り返るから、わたしは慌てて遊歩道を小走りに、横断

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そうだ!ミスター・サンタクロースに予約いれなくっちゃ

そうだ!ミスター・サンタクロースに予約いれなくっちゃ

Christmas Story Day 3

去年、サンタクロースと遭遇したカフェにやってきた。店内はソーシャルディスタントのため減席しているので、外のテラス席に座った。2020年の12月。地方都市でもコロナの影響で、街中はどことなく活気がない。

少し雪が散らつく中、エキストラホットのクリスマスブレンドが熱く体に染み渡る。隣のテラス席に幼い兄弟を連れた母親が座った。5歳と6歳くらいの年子の男の子

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私がスターバックスで遭遇したサンタクロース

私がスターバックスで遭遇したサンタクロース

Christmas Story Day1

去年の12月。
小雪の散らつく交差点を足速に抜けて飛び込んだスターバックス。エントランス側とロビー側の2枚の自動扉のガラス戸に挟まれたスペースを擦り抜ける瞬間、真っ赤な衣装をまとった、ほっこり大柄なサンタクロースに出会った。

HO HO HO !
おなじみの、ちょっとしゃがれたフィンランド訛りの囁きが聞こえたような気がした瞬間。

うゎっ!
マジ、本

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サンタクロースって、本当にいるの?

サンタクロースって、本当にいるの?

Christmas Story Day2

さぁ、この質問。
きみは一度だけママに訊いてきた。10歳のクリスマス。

答えを知りたいけど、知りたくない。
知らないままでいたいから。
子供のままでいたいから。

だって大人にはサンタクロースはやってこない。
大人は誰かサンタクロース以外の人からプレゼントをもらうから。

「カノジョもカレシもいない、クリぼっちは誰にもプレゼントもらえないんだよ」

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