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「魚礁」で海の環境を育てたい!瀬戸内海の漁師さんとタコの放流【小豆島の漁業レポ】

約7年の海外生活を経てコロナ禍真っ只中の2020年末に”一時帰国”の予定で帰国後、偶然のご縁が次々と繋がり、昨夏、地元東京から瀬戸内海の離島「小豆島しょうどしま」へ移住した私。

移住の大きなきっかけとなったのは、総務省の「地域おこし協力隊」という取り組み

映画「二十四の瞳」「八日目のせみ」で有名な”オリーブの島”小豆島、瀬戸内国際芸術祭で人気の豊島てしまを含む、香川県の土庄町とのしょうちょうという小さな町の自治体で、私は自身の活動と並行しながら「地域おこし協力隊」として漁業振興に携わっている。

地域おこし協力隊は、都市地域から人口減少や高齢化等の進行が著しい地域に移住して、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこし支援や、農林水産業への従事、住民支援などの「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る取り組みです。
隊員を任命するのは各地方自治体であり、活動内容や条件、待遇は、募集自治体により様々です。任期は概ね1年以上、3年以内です。

「地域おこし協力隊」とは|総務省

今回の記事では、海のこと、漁業のこと、この島の漁師さんたちの職場である瀬戸内海のことなど、都会から移住して初めて知った漁業に関するお話をシェアしていきたい。

漁業は「獲る」だけではない

漁業は、漁師さんだけでなく、それを陰で支える漁業協同組合(通称:漁協)さんや、それ以外の様々な人たちの関わりで成り立っていたこと。
漁師さんは漁がオフの時もお休みなわけでなく、船や網のメンテナンスをご自身でされていること。
今回のような魚礁の設置や海の生き物の放流など、「漁業」の仕事は多岐に渡るということ。

これらは、これまで「漁業」とは全くの無縁であった私がこの仕事に携わらせていただいて、漁師町に生まれ育った漁師さんや島の人たちからお話を伺ううちに少しずつわかってきたこと。

そんな漁業にまつわるお話のひとつひとつも、これから追々記事にしていきたい。

瀬戸内海に「魚礁ぎょしょう」を沈める!

魚礁設置を終えて大部港へ戻る漁船から撮影した島の風景
山のあちこちに満開の桜が見える
(2022年4月撮影・土庄町大部とのしょうちょうおおべ

小豆島しょうどしまの桜シーズン真っ只中の4月上旬。
土庄とのしょう中央漁協大部支所の漁師さんたちが、この町の北側で瀬戸内海の向こうに岡山県を望む大部港おおべこう沖で、魚礁20台を海底へ設置されるという情報を入手。

おしゃれなカモフラ柄のライフジャケットを
得意げに腰に携え、いざ出発!の図

「まずはカタチから!」の私も、ちゃっかりと腰にライフジャケットを携え、今回特別に漁師さんに同行取材をさせていただいた。

今回沈めた魚礁は、中央の黒いカゴ部分には、香川県さぬき市の鴨庄漁協さんの蠣殻かきがらが丁寧に詰められていた。鴨庄漁協のみなさんによって詰められた蠣殻だという。さぬき市の漁協さんから遠く離れた土庄とのしょう中央漁協へと香川県内を渡った蠣殻は、この大部港の沖で「魚礁」として活躍してもらうこととなる。

魚礁のカゴ部分の両脇につけられた丸い口の茶色い箱はタコツボに見立てて設置されたものだという。ここに住みついたタコが産卵し、その後も小さなタコたちが蠣殻の間に入って住処すみかにできるよう設計されている。うまくいけば、蠣殻には小魚たちが、そして、両脇のタコツボにはタコがちゃんと住んでくれるという。

この魚礁に生き物が住み着き産卵をすることで、それが大きな魚のエサになったり、生まれた魚やタコ自体が成長し、その数を増やし、その後の漁で獲れるだけの大きさへと成長するなど、長期的に海の環境が少しずつ変わっていけばという思いから、今回、試験的に魚礁を設置してみよう!ということに至った、とのこと。

今回沈めた魚礁は、漁師さん2人で抱えられるほどのサイズ感。
設置の手間もコストも抑えめにできるというメリットは、漁協さんや漁師さんにとってもトライしやすいところ。

地元大部の漁師さん達の手で海に投げ込まれた魚礁

こうして20台の魚礁は、10台を2回に分けて1台ずつ、地元大部の漁師さん達の手で大部港沖の海に投げ込まれた。

おおよその目標ポイントをつけながら、できるだけ均等な距離感で沈められるように、少しずつ場所を移動しながら沈めていく。
しかし、設置当日も設置後も潮の流れがあるので、その場所は少しずつ動く可能性があるという。
この工程を繰り返すこと約1時間半。魚礁の設置作業は完了。

設置直後の魚礁

ダイバーさんに託したGoProで撮影いただいた設置直後の魚礁

魚礁の設置が完了すると、その設置状況を確認するため、ダイバーさんが瀬戸内海の海底へ。

「せっかくだからぜひとも海底の様子を見てみたい!」
そんなお願いを胸にダイバーさんにGoProを託しお願いしたところ、海底に沈めた魚礁を撮影してくださった。

魚礁のすぐそばには海鼠なまこが何匹も!

撮影いただいたGoPro映像を確認すると、魚礁のすぐ近くには海鼠なまこが生息している様子が!
ということは、魚礁に生き物たちが住んでくれる可能性が大いにありそう!

数週間後、水中ドローンで魚礁を調査!

香川県農政水産部水産課さんの水中ドローン
フォルムからして、めちゃめちゃいい仕事してくれそう!

魚礁設置から数週間後。

香川県農政水産部水産課さんの魚礁の調査(その後、タコが住みついてくれたかどうか、などを水中ドローンで撮影!)に同行させていただき、再び大部港へ。

水中ドローンを少しずつ沈めて
海底の魚礁を探していく
水中ドローンの操作は見ているよりも難易度高め
香川県農政水産部水産課 宮奥さんと水中ドローンに全てを託す

そんな手に汗握る水中ドローン調査でなんと!
魚礁のタコツボに見事、タコを発見!

せっかくなので、ここまでの魚礁の設置から水中ドローンでのタコ発見!までを動画でどうぞ!

🎬動画🎬 「魚礁」で海の環境を育てたい!(前編)|よしださゆりの漁業レポ

タコの放流に密着!そして自らタコを放流!

またまた腰にライフジャケットを携えて
初めて触るタコにやる気がひたすら右肩上がりな人!の図

さらに数週間後の5月中旬。
同じく大部港おおべこう沖でタコを放流するというので、急遽、同行取材をさせていただくことに。

大型トラックは荷台が水槽のようになっている
水槽には九州からはるばる小豆島へお引越しされてきたタコたちが!

大型トラックに乗せられているのは今回の放流用に香川県水産振興協会さんにご用意いただいたタコ、その数、約240kg分(もはや何匹だったのか全くカウントしていなかったが、とにかくたくさん!)。
トラックの荷台の水槽から、丁寧に漁船へと移していく。

トラックの水槽からタコをすくって漁船へ
漁船の水槽に移されたタコたち

袋に入れられたタコと発泡スチロールの秘密

タコは1匹ずつ網の袋に入れられている
袋の中の四角くて白いのは、発泡スチロール

この記事をもう少し読み進めていただくと、後編の動画を埋め込んでいるのだが、その映像をご覧いただくときっと気付いていただけるのが、放流するタコが1匹ずつ網状の袋に入れられており、また、その袋の中には個々に小さくカットされた発泡スチロールが入れられている、ということ。

この網の袋と発泡スチロールの謎について、香川県漁業協同組合連合会へ問い合わせたところ、下記の仕様になっている理由について回答をいただいた。

・タコが絡み合って放流しづらくなるのを防ぐためと、互いに食べてしまわないように、1匹ずつ袋に入れられている
 →放流の際に、自身の足を食べてしまっているタコが何匹か発見されていた


・タコが重さで水槽の下に沈んでしまったり、吸盤で底にくっついてしまうと、放流する際にピックアップしづらいため、タコを浮かせるために発泡スチロールを入れている

いざ、タコ放流へ!

手際よくタコを放流していく漁師さんたち
袋をほどいてタコを放流!
放流箇所が固まりすぎないよう
船を移動させながら放流していく

地元漁師さんたちはとっても手際がよく、大量のタコを次々と放流していく。袋からすんなり出てくれるタコもいれば、漁師さんに頭と足の間を捕まれ海へと放流されるタコもいる。

放流されるのは、はるばる九州の海からやって来た、おそらくこれから産卵を迎えるであろうタコさんたち。
先日の魚礁に住みついて産卵して、そこでタコや生き物たちがうまく育ってくれることを祈りながら、漁師さんご指導のもと、私もタコの放流に挑戦!

掴み慣れないよしだに、さぞご立腹だったであろうタコさん
この直後に墨を吹いて海へ還ってゆきましたとさ

そんなタコ放流こそ、写真と文章では伝わりづらいので動画に!
「タコって危険を察知すると、ホントに墨吹き出すんだ!」なんてことが映像でお分かりいただける。
タコ墨を浴びた私の図、もしっかりおさえている。(笑)

🎬動画🎬 「魚礁」で海の環境を育てたい!(後編)|よしださゆりの漁業レポ

ちなみに余談だが、タコは繁殖は生涯で1度きりにして最後のイベントだということも、今回の記事を書くにあたり初めて知った。
切ない・・・切なすぎる・・・。
今後、タコを食す時の私は、そのありがたみをしみじみと感じながらいただくのであろう。(涙)

漁礁ぎょしょう」から「魚礁ぎょしょう」へ

魚礁を沈める作業
手前の船に魚礁を積み、もう1隻には設置確認をされるダイバーさんを乗せ
2隻の船で沖に向かった

今回取材させていただいた魚礁ぎょしょう
実は最近までは漁礁ぎょしょう」という表記が主だったという。

人と生き物たちがどのように共存をしていくのかが問われるようになり、海の生き物たちを「漁る(とる)」だけでなく、海を育てていくというような時代の流れを経て、次第に「漁礁」から「魚礁」という表現へと変化していったそうだ。

美しい瀬戸内海と海の生き物たち

土庄町とのしょうちょうから望む瀬戸内海
海の向こうに見えるのは、瀬戸内の島々と岡山県
(2022年4月撮影)

現場で大部の漁師さん達や、設置に立ち合われた魚礁製造企業さんからお話を伺ったところ、近年の澄みきった瀬戸内海はとてもキレイすぎて、魚や海の生き物にとってはあまり良いコンディションではないとのこと。

もちろん、温暖化やその他様々な理由も絡み合っているであろうことが想像できる。だから、何が原因だと一言で言えるものではないはず。

濁りもなく海底まで見えてしまう海は栄養分が乏しく、それは魚や海の生き物たちのエサになるものが非常に少ないという現れでもあるそうだ。

「海が澄んでいて美しいことは、海の生き物にとっても良いことなのかといえば、どうやらそういう訳でもないらしい」

「海の栄養分としては山のミネラルも必要、だから雨も川も、そしてダムが開いて山の水が海へ流れてくるということも大事」
しかし漁業の種類によって異なるため、みな同じタイミングで山の水を流してほしい訳ではないというところも難しいポイント。

これらは、この町で漁業振興担当として漁師さんや水産関係のみなさまからお話を伺う中で私が得られた大きな学び。
みなさんと直接お会いできなければ、もしかしたら一生知ることができなかったかもしれない。

漁業のことは超初心者な私。
けれど、だからこその発見や、初心者だからこそみなさんとシェアできることがきっとあるはず。
そう信じている。

これからも「よしださゆりの漁業レポ」と題して、土庄町とのしょうちょう地域おこし協力隊インスタグラムFacebookページで発信しながら、SNSではまとめきれなかったことをこうしてnoteで記事にして、みなさんとシェアしていきたい。

【公式】土庄町とのしょうちょう地域おこし協力隊
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 - Facebookページ

■ 撮影協力(敬称略)
水中撮影協力(GoPro): 海洋建設株式会社
水中ドローン映像提供: 香川県農政水産部水産課

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■ Special Thanks(敬称略・出演順)
土庄中央漁業協同組合 大部支所 漁師のみなさん

海洋建設株式会社 水産環境研究所
森下 剛匠つよし
 - Webサイト

香川県農政水産部水産課
 - 香川県 Webサイト
 - 香川おさかな大使 Instagram
 - 香川おさかな大使 Twitter
 - うどん県のおさかなチャンネル YouTube

香川県土庄町とのしょうちょう農林水産課
 - 土庄町とのしょうちょう Webサイト

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最後まで読んでくださってありがとうございます。

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・YouTubeではお話できなかったことや、企画、撮影の裏側
・これまで住んでいた台湾、オーストラリア、トルコなど海外で気づいたこと
・東京出身の私が移住した小豆島しょうどしまのこと
・個人の活動と並行して携わらせていただいている地域おこし協力隊のこと
・30代の私が直面している親の老後や介護のこと


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Posted by SAYULOG on Saturday, April 9, 2022

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