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面接前に孤独のグルメごっこをしてはならない

知らない街、知らない場所、知らない人。面接当日は、朝目覚めたときから面接直前まで緊張しっぱなしというもの。特に直前1、2時間前は緊張のピークである。そんな時は気分を紛らわすためにも、美味しいものを食べたい。この話は、知らない街で孤独のグルメを真似た結果、大変な目にあった記録である。

4月某日、12時。私は初めて訪れた街で、Googleマップを頼りに、面接を受ける会社の建物を探していた。14時から1時間弱、面接の予定が組まれている。2時間前に下見をしたのは以下の計画のためだ。

  〜12時:下見
12時〜13時:昼食
13時〜14時:面接の予習(カフェで)
14時〜15時:面接

面接直前に会場を見つけられなくなって、慌てることのないように、まず下見。腹が減っては戦ができぬので、昼食をとり面接へ向け集中。そのあとで面接前に小一時間、想定問答集をチェックしたり、履歴書や職務経歴書の控えを見直すのである。万全の準備を持って面接に挑める、完璧な計画のつもりだった。

さて、産業スパイかのように会社の正面も裏口もウロウロとチェックしたところで、昼食の時間である。知らない街での楽しみのひとつに、飲食店との出会いがある。

「腹が減った…」

面接する会社との位置関係も考慮し、あまり遠くならない場所にしたい。Googleマップで調べても良かったが、面接の予習時間を多めに確保したいこともあり、マップ上の候補をいちいち吟味するのも面倒だった。少し歩くと、面接する会社から徒歩3分のところにある台湾料理屋さんを見つけた。よし、ここにしよう。

店に入り、注文。しばらくして店員のお姉さんが「エビと玉子の炒めもの」定食を運んできた。目を疑った。量がとてつもなく多い。主菜が二人前、ご飯も二人前ぐらいあり、おぼんの上に二つの山がこんもりと盛られている。さらに副菜とスープもある。

うっ…と思ったが、後戻りはできない。食べるしかない。私は勢いよく定食をかきこみ始めた。玉子はおそらく2個使われている。経験上、玉子が2個分使用されている玉子焼きは簡単に満腹になる。普段はうれしいエビ多めも今はキツい。チラッと厨房をみると寡黙そうな高倉健的おじいさんが慌ただしく調理中だ。コワそう…そして苦しい…。

基本、ごはんを残すことが嫌なので完食したいのだが、腹が限界を迎えていた。何よりこの後に控える面接に支障がでる。時間はどんどん過ぎていく。かなり焦った。もうダメた…。8割ほど食べ終えて、店員のお姉さんに平謝りして店を出ることにした。なお、誤解なきように記すが、味は問題なく、なかなか美味しかった。ただ量がキツかった。

時は13時。お腹パンパンでウ〜ッと唸るような状態で商店街を歩く。予定では即カフェに入り、コーヒーを飲みつつ予習するはずだったが、腹に何も入れられない。しばらく歩き、カロリーを消費することにした。外で予習しようにもちょうど良い公園が見つからなかった。なお、バッグに入れてあるノートパソコンでPDFやWord、Excelの資料を見るつもりだったため、座りたいし、スマホの画面では見辛い。20分近くうろちょろして、時間も気になってきたころ、チェーン店のカフェに入った。本当は地域密着のカフェに入りたいところだったが、また予定にない事態が起きることを恐れていた。

カフェではSサイズのコーヒーを頼み、少しずつ飲む。コーヒーのリラックス効果で緊張をほぐす。しかし、先程の大食いで満腹の状態にコーヒーが、あるスイッチを入れてしまった。トイレに篭りたくなったのである。時は1時40分。大を我慢したままの面接は絶対に避けねばならぬ。トイレは混んでいる。面接は14時。カフェから歩いて5分と考えると、13時50分には店を出たい。トイレが空くやいなや飛び込み、なんとか10分で店を出ることができた。予習の時間はほとんど取れず、ただのトイレ休憩となってしまった。

以上のことから、大事な面接の前は勝手の知った店(チェーン店)で食事を済ませ、平常心を保つよう努めることをお勧めする。未知の店では何が起こるか分からない。平時に冒険しよう。

面接前に孤独のグルメごっこをしてはならない。

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