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ドラマ『OpenAI』シーズン2到来?完結したはずの騒動に不穏な空気が漂う…

こんにちは!相変わらずジピちゃん(ChatGPT)に雑な扱いをされている、ChatGPT 飼育員の Sayah (@sayah_mediaです💁‍♀️〜💣💥🤖💬

テクノロジーの進歩は、まるで SF 映画やファンタジー映画のような世界観を、私たちに与えてくれます。

しかし、その裏側では、各企業があらゆる業界・分野のトップを目指し、次世代の最先端テクノロジーを生み出すために、枚挙にいとまがないほど、日々目まぐるしい技術競争が展開されているのが実情です。

特に、革新的な IT スタートアップの聖地でありながら、同時に先端テック企業のハブでもある、アメリカの「Silicon Valley(シリコンバレー)」では、技術革新のみならず、時に予測不可能なヒューマンドラマが繰り広げられています 🇺🇸

先月の OpenAI によるサム・アルトマン解任騒動も、その一例です。

イリヤ・スツケヴァー氏が、無事サム・アルトマン氏およびグレッグ・ブロックマン氏と和解し、両者の復職が実現するなど、一連の騒動に幕を下ろしたと思われていた OpenAI ですが、新たに「不穏な動き」が表面化してきました

表向きは解決したかに見えた緊張と混乱が、静かにくすぶり続けており、泥沼の人間ドラマ『OpenAI』続編の到来をも連想させます。果たして、この騒動はまだ終息していないのでしょうか…?

※「イリヤ・スツケヴァー氏が心変わりをした意外な理由」や、同氏の「サム・アルトマン氏やグレッグ・アルトマン氏との和解」については、コチラの記事で詳しく解説しています👇

本記事では、AI プロンプトエンジニアの私 Sayah が、その不穏な空気の原因を解き明かし、OpenAI 内部で起きている謎めいた動きの真相や、それらが示唆する当事者たちの本心、ドロドロの『OpenAI』ドラマに未だ残る余波について探ります。


🌩 暗雲が立ち込めるイリヤ・スツケヴァーの未来

今回のサム・アルトマン氏の追放劇において、同じく共同創業者の 1人であるにも関わらず、サム・アルトマン氏の解任に 1票を投じたとされている、イリヤ・スツケヴァー(Ilya Sutskever)氏

サム・アルトマン(Sam Altman)氏やグレッグ・ブロックマン(Greg Brockman)氏とは、上の投稿を筆頭に度々 SNS 上でも親密そうな様子を見せるなど、無事に和解したとされています。

しかし、いくつかの海外メディアによると、同氏の今後については、まだ暗雲が立ちこめている状態であるとのことです。

ここでは、イリヤ・スツケヴァー氏の現状や不穏な動き、今後の不透明性について解説します。

🔍 未だに不透明なイリヤ・スツケヴァーの今後

現地時間 11月29日(水)、OpenAI は公式ブログを更新し、サム・アルトマン(Sam Altman)氏が CEO として復帰することや、再編された新・取締役会のメンバーについて発表しました。

一方で、同騒動の影響を受けてか、イリヤ・スツケヴァー氏は、再編された 新・取締役会には入っていません

また、現地時間 12月8日(金)、米『Futurism(フューチャリズム)』誌は、イリヤ・スツケヴァー氏のポジションが、現在 OpenAI 内で不確かな状態であることを明かしました(Al-Sibai, 2023)。

同日、米『Business Insider(ビジネスインサイダー)』誌も、以下のように主張したうえで、現在の役割や今後について、同氏に関する公式アナウンスがないことについて言及しています(Hays, Stewart, Rafieyan, & Ghosh, 2023)

OpenAI にこれまで大きく貢献してきたイリヤ・スツケヴァー氏だが、今回の騒動の責任や代償を埋め合わせるには、それだけではまだ不十分なのかもしれない。
(筆者訳)

(Hays et al., 2023, para. 1)

📑 弁護士を雇ったイリヤの意味深な動き

さらに、イリヤ・スツケヴァー氏が「Willkie Farr & Gallagher」社のアレックス・ワインガーテン(Alex Weingarten)氏を、弁護士として雇っていることも発覚しました(Hays et al., 2023)。

深読みしすぎかもしれませんが、アレックス・ワインガーテン氏といえば、訴訟実務部門の責任者を務めています。

このように、サム・アルトマン氏やグレッグ・ブロックマン氏と和解したはずのイリヤ・スツケヴァー氏ですが、再び一悶着がありそうな不穏な空気が漂っている状況です。

🙍‍♂️ イリヤ・スツケヴァーが漏らしていた懸念と不満

イリヤ・スツケヴァー氏に詳しい 3人によると、同氏は OpenAI の技術に対する危険性や、サム・アルトマン氏がそのリスクに対して十分に考慮していないことに、懸念を抱いていたとのことです(Metz, 2023)。

実際に、イリヤ・スツケヴァー氏は「GPT-4」の威力を目の当たりにした際、将来の後継モデルが人類に危害を加えるのを阻止すべく、OpenAI 内に「Super Alignment team(スーパー・アライメントチーム)」を新設しています(Metz, 2023)。

「アライメントチーム」とは、一般的に、倫理的で安全な AI の開発と使用を確保するために、人間の価値観や目標、ベネフィットに合わせて設計・監督・研究を行うチームのことです。AI が持つ可能性を最大限に活用しつつ、リスク管理を徹底し、人間の利益と一致する適切な行動を AI に促すための、重要な役割を担っています。

サム・アルトマン氏も、このような懸念には前向きである一方で、大手の競合他社よりも最先端であり続けることを重んじていたそうです(Metz, 2023)。

また、対話型 AI「ChatGPT」の大きな成功によって、OpenAI やサム・アルトマン氏は、世界的に認知されるようになりました。そのような中、イリヤ・スツケヴァー氏は、OpenAI 内において自分の役割が小さくなっていると感じ、不満を漏らしていたそうです(Metz, 2023)。

🆚 商業化の進行ペースに関する戦略の不一致

米『Bloomberg(ブルームバーグ)』誌の取材に応じた情報筋によると、イリヤ・スツケヴァー氏は「AI 技術の商業化をどれくらい迅速に進行すべきか」「社会的な被害をどのように減らすか」について、サム・アルトマン氏と意見が対立していました(Hetzner, 2023)。

つまり、サム・アルトマン氏が「AI サービスを迅速にローンチして、収益化を加速させたい」と考える一方で、イリヤ・スツケヴァー氏は、それによる「公共の安全性が損なわれる可能性」を危惧していたようです。

現地時間 11月6日(月)に OpenAI が初めて主催した開発者向けイベント「OpenAI DevDay」で、この意見の不一致はさらに表面化しました(Hetzner, 2023)。この対立は、OpenAI のミッションや将来の方向性における重要な論点を、浮き彫りにしているといえるでしょう。

また、米『Fortune(フォーチューン)』誌は、ChatGPT の革命的な成功が、サム・アルトマン氏を、厳密な研究よりも資金調達と商業化に注力させてしまったのではないかとの見解を示しています(Hetzner, 2023)

💼 サム・アルトマン復帰後、オフィスに出社せず

匿名の内部関係者によると、イリヤ・スツケヴァー氏は、サム・アルトマン氏の復帰以来、オフィスに姿を見せていないそうです(Hays et al., 2023)。

前述のとおり、今後イリヤ・スツケヴァー氏が、どのような立場でどのようなタスクを遂行するかは明確になっていません。実際に、現在多くの従業員が、同氏のタスクを引き継いでいる状態です(Hays et al., 2023)。

同様に、元従業員の 1人は「今回のイリヤの行為を受けて、サムとグレッグへの忠誠心が強いエンジニアの中には、イリヤと一緒に働くのは厳しいと感じる人たちもいるはずです」と述べたうえで、「一度崩れた信頼は取り戻せない」と付け加えました(Hays et al., 2023)。

🎉 サム・アルトマンの復帰記念パーティーも欠席

新体制が発表された、11月29日(水)付けの OpenAI の公式ブログで、サム・アルトマン氏は「イリヤに対して悪意はない」と述べたうえで、イリヤ・スツケヴァー氏の今後の在り方について、以下のように発言していました。

イリヤはもう役員を務めませんが、僕たちは彼との仕事上の関係を今後も
維持できるよう願っています。また、彼が OpenAI でどのような形で仕事を続けられるか、現在みんなで話し合っているところです。
(筆者訳)

(Altman & Taylor, 2023, para. 4)

しかし、従業員たちが即席で開いたサム・アルトマンの復帰祝いパーティーに、イリヤ・スツケヴァー氏は姿を現さなかったようです(Tan, 2023)。

これに対し、イリヤ・スツケヴァー氏の弁護士であるアレックス・ワインガーテン氏は、米『Business Insider(ビジネスインサイダー)』誌に、以下のように回答しています。

イリヤが昨夜のパーティーにいなかったという事実から、何かを深読みすべきではありません。 イリヤは OpenAI にとって最もベストな状態を望んでおり、それは「サムを CEO に戻すこと」だとハッキリと言及しています。
(筆者訳)

(Tan, 2023, para. 10)

米『Business Insider(ビジネスインサイダー)』誌によると、現地時間 11月23日(木)の時点で、サム・アルトマン氏とイリヤ・スツケヴァー氏に詳しい関係者は、「可能性は低いが、サムが会社にとっても最善だと考えた場合は、2人が仲直りし、イリヤが復帰する可能性もあるだろう」と述べています(Hays, 2023)。

一方で、どうやらグレッグ・ブロックマン氏は、サム・アルトマン氏ほど「寛大ではない」ようです(Hays, 2023)。

サム・アルトマン氏とグレッグ・ブロックマン氏、そしてイリヤ・スツケヴァー氏の 3人をよく知るマイクロソフト(Microsoft)社の関係者は、「この 3人、特にイリヤとグレッグ 2人が、以前のように上手くやっていけるとは思えない」と語っています(Hays et al., 2023)。

また、OpenAI のオフィスがある Silicon Valley(シリコンバレー)では、共同創業メンバー同士が敵対することは、タブーであり冒涜的な行為だとされています

グレッグ・ブロックマン氏は、今回のイリヤの行為に対し「酷い裏切りだ」と感じているようで、同関係者は「もしグレッグが、イリヤの復帰に対して何かしらメリットがあると感じれば、彼も同意するだろう」との見解を示しました(Hays, 2023, para. 9)。

🗑️ イリヤ・スツケヴァーが一瞬で削除した謎の投稿

現地時間 12月5日(火)夜にイリヤ・スツケヴァー氏は、自身の X で以下の文章を投稿し、翌日には投稿を削除しています

この1ヶ月で学んだ教訓の1つは「the beatings will continue until morale improves」というフレーズが、思った以上に現実に当てはまるということです。
(筆者訳)

(Sutskever, 2023)

「The beatings will continue until morale improves」は、直訳すると「士気が高まるまで罰/鞭打ちは続く」という意味で、直接的には「罰を与えれば士気が高まる」という考えを表します。

しかし、このフレーズは、実際には「過度な罰や支配が逆効果であること」や、「部下や子どもたちへの過度なコントロールが機能しないこと」を皮肉っており、英語圏の meme(ミーム)などで風刺的に使われることが多い表現です。

通常は、上記のとおり、「厳しい処置や過度な管理は逆に状況を悪化させる」という文脈で使用されるため、文字通りに「罰を与えれば士気が高まる」という文脈で使用する人はほとんどいません。

🌪 OpenAIの混乱がまだ終わっていないことを示唆か

イリヤ・スツケヴァー氏が、このタイミングでこのフレーズを引用したということは、ポジティブに考えれば、彼が同騒動における「自分自身の行動に対する自己反省の意」を表している可能性があります。

しかし、同氏が翌日に投稿を削除したことを考慮すると、ネガティブに見れば「OpenAI の現状に対する彼の見解や不満」を投影している可能性もあるでしょう。

実際に、複数の海外メディアが「これはスツケヴァーが、OpenAI の混乱が未だに続いていることを暗にほのめかしている証拠である」との見解を示しています。

🗣 サム・アルトマンのイリヤ・スツケヴァーに対する本音

現地時間 12月8日(金)、米『Futurism(フューチャリズム)』誌は、サム・アルトマン氏のイリヤ・スツケヴァー氏に対する当時の本音について、以下のように報じています(Al-Sibai, 2023)。

サム・アルトマン氏は、イリヤ・スツケヴァー氏がブルータス流のやり方(Brutus-style)で裏切られた(shanked)ことに対し、傷つき、怒りを感じたことを認めています。
(筆者訳)

✅ この文脈における「shanked」とは、背後からの卑劣な攻撃や暴力、裏切りを指すスラング表現です。特に、刑務所での隠し持った即席の武器「Shank(シャンク)」を使った攻撃を意味します。一般的に、裏切りの深刻さや突然性を強調するために使われるのが特徴です。

(Al-Sibai, 2023, para. 7)

上記で使われている「Brutus-style」という表現は、「ブルータス、お前もか」の格言で知られる古代ローマの政務官、マルクス・ブルトゥス(Marcus Brutus)が、親友で独裁官のユリウス・カエサル(Gaius Caesar)を裏切り、暗殺した出来事に由来しています。

✅ 有名なフレーズ「ブルータス、お前もか(Et tū, Brūte?)」は、カエサルがブルータスの加担を知った際に、強く落胆したのちに「カエサルを非難した言葉」とされる言い伝えが起源の格言です。

「ブルータス」とは、「ブルトゥス」の英語読みで、こちらの方が一般的に知られています。

つまり、ブルータスを比喩的に用いたことは、信頼していた腹心からの深い裏切りや背信行為を暗示しているといえるのではないでしょうか。

✍️ ドロドロの人間ドラマ『OpenAI』シーズン2の幕開け?

今回、韓流ドラマ並みにドロドロとした、リアルな人間ドラマを世間に見せつけることとなった OpenAI

サム・アルトマン氏やグレッグ・ブロックマン氏との和解が報じられているにも関わらず、イリヤ・スツケヴァー氏の今後には、未だ暗雲が立ち込めています

一方で、現在 OpenAI のオフィスの壁には、依然としてイリヤ・スツケヴァー氏が描いたアート作品が飾られているそうです(Hays et al., 2023)。

米国企業では、基本的に退職や解任が決まると、セキュリティなどの観点からか、該当人物の法人メールアドレスや社内ツールのアカウントが、直ちに削除される傾向があります。しかし、現状 Slack などの社内ツールにも、同氏のアカウントは残されているとのことです(Hays et al., 2023)。

さらに、イリヤ・スツケヴァー氏自身は、OpenAI に適した役割を担うことへの意欲を示しており、OpenAI でも同氏に与える新たな役割についての話し合いが行われているとも報じられています(Hays et al., 2023)。

彼らの絆の強さや傷の深さなど、本心は本人たちにしか分かりません。一度失った信頼を取り戻すことは決して容易じゃないため、本当の意味での「解決」には、まだまだ時間がかかるでしょう

しかし、全員が納得できる形でまた一緒に働ける日が訪れるよう、引き続き動向を見守っていきたいです。今回のミスコミュニケーションが、いつか 3人にとって笑い話になる日が訪れることを願って…🌈✨

📚 References

Al-Sibai, N. (2023, December 8). OpenAI cofounder Who pushed out Sam Altman is in a confusing limbo. Futurism. https://futurism.com/the-byte/ilya-sutskever-openai-limbo

Altman, S., & Taylor, B. (2023, November 29). Sam Altman returns as CEO, OpenAI has a new initial board. OpenAI. https://openai.com/blog/sam-altman-returns-as-ceo-openai-has-a-new-initial-board

Hays, K. (2023, November 23). Ilya Sutskever did not attend OpenAI’s party celebrating Sam Altman’s return as CEO. Business Insider. https://www.businessinsider.com/ilya-sutskever-not-at-openai-party-celebrating-sam-altman-ceo-2023-11

Hays, K., Stewart, A., Rafieyan, D., & Ghosh, S. (2023, December 8). OpenAI cofounder Ilya Sutskever has become invisible at the company, with his future uncertain, insiders say. Business Insider. https://www.businessinsider.com/openai-cofounder-ilya-sutskever-invisible-future-uncertain-2023-12

Hetzner, C., & Ivanova, I. (2023, November 20). Ilya Sutskever, the OpenAI cofounder who helped oust CEO Sam Altman, says he “deeply regrets” his role and threatens to quit unless board resigns. Fortune. https://fortune.com/2023/11/20/ilya-sutskever-openai-cofounder-deeply-regrets-resign/

Metz, C. (2023, November 18). The fear and tension that led to Sam Altman’s ouster at OpenAI. The New York Times. https://www.nytimes.com/2023/11/18/technology/open-ai-sam-altman-what-happened.html

Sutskever, I. [@ilyasut]. (2023, December 5). I learned many lessons this past month. One such lesson is that... [Post]. X. URL not available

Tan, K. W. K. (2023, November 30). Sam Altman says he harbors “zero ill will” towards former OpenAI board member Ilya Sutskever. Business Insider. https://www.businessinsider.com/sam-altman-has-zero-ill-will-toward-ilya-sutskever-2023-11

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