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酔いどれ雑記 106 Go East


また一つ年を取ったせいか、昔のことを色々思い出しますーーまぁそうでなくとも事あるごとに回想してしまうのですけれども。

子供の頃から本が好きで、特に図鑑や地理関係のものは穴が開くほど読んだという話はすでに何度もしています。小学校低学年の頃にはノートに新しく見聞きした国の名前をいっぱい書いていました。

ある日、根岸森林公園の馬に関する展示があるコーナーでハンガリーという国があることを知りました。ハンガリーってどこだろう。説明を見るとヨーロッパのどこかのようだ。さっそく帰ったらノートに書かなくちゃ。

私は何故か、子供の頃からヨーロッパにとにかく惹かれていました。それも特に東欧に。幼心に神秘的で、不思議な未知の国々だという印象を与えました。当時は東欧は地理的にだけでなく政治的にも「東」で、それがますます私の興味を引いたのだと思います。

私が中学生の頃、ベルリンの壁は崩壊し、ソ連は解体しましたが、それでも東欧への関心は持ち続けていました。ただ、中学生になってからは熱心に英語を勉強し始めていたのと、高校に入って担当になった憧れの先生がイギリスに精通していたので、英国にも(当然、ウェールズやスコットランドが含まれています)関心を持つようになっていました。それになんと言ってもパンクロックとの出会い!当時の私は今は大好きでたまらないニューヨークパンクにはあまりハマることはなく(わたくしの趣味としてはどっぷりはまっても不思議ではないのですが謎です)、いわゆる王道のイギリス発のパンクを聴いていました......って今別に音楽の話がしたいわけではない(笑)。

初めて足を踏み入れた東欧の国はチェコですが、プラハに着く前にベルリンに寄っています。もちろんかつては東だったエリアもです。

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チェコは好きなもの(特に芸術)がいっぱいあるのに、何故かそこまでの思い入れはありません。何故だかよく分からないのですが。カフカ、カレル・チャペック、ミラン・クンデラ、ドヴォルジャークにミュシャ......

チェコを出発し、ウィーンに入りました。その後15回は行くことになるオーストリアの首都です。ウィーンにはそこまで期待していなかったのですが、わたくしの好きなものがありすぎました。チェコ以上に。クリムトやシーレをはじめとした世紀末絵画、カフェ文化、保守的なのかそうでないのか分からない感じ、狭い地域に珠玉の歴史や魅力的な風景やらが宝石箱のように詰まっていて、子供の頃わたくしが想像していたヨーロッパそのものという印象を受けましたがそれは今も変わっていません。もう10年も行っていないですが.......。

古い街、歴史のある街は向こう100年経ってもそう変わらないと言っていた方がいましたがまさにその通りだと思い、東へ急げ!西欧はそれからあとでいいと思い、旅をはじめたばかりの頃には東欧ばかり行っていました。まぁ、経由で便利なのもあり、行き帰りにウィーンに数泊するということを繰り返しているうちにウィーンはわたくしの庭になりました(←かなり誇張しております)。

「東」だった国、つまり旧共産圏だった国のうち、西側寄りだった国ほど東の面影が色濃く残っていると聞いたことがあり、非常に興味を掻き立てられました。ハンガリーはーーほぼブダペストしか知りませんが、私が滞在中は暗い、いかにも冬の曇天の日続きでした。街全体が灰色のような光景も手伝ったのか、とにかくイメージした通りの東欧くささに感動を覚えました。わたくしが存在したかったのはまさにここなんだと。夜もまた素晴らしかったです。霧がとても深く、数メートル先が全然見えないという経験は初めてでした。ホテルは中心部から少し離れているところにあり、街の方へ出るときはただの灰色の道だったのに、往きはよいよい帰りは怖い、暗闇の中をずっと同じところを彷徨っているような感覚に襲われました。往きに通りがかった池が目に入ったときにはああ、助かった......と本気で思いました。懐中電灯は必須です。というか今は便利な機器がありますよね。

もう、かれこれ10数年東欧には足を踏み入れておりませんが、あれから随分と変わったのでしょうか。個人的には東欧らしさ、もっと言えばわたくしが想像するところの東欧がまだまだ残っている時期に行くことが出来てよかったと思っています。